28.
この国の軍に入るには貴族であれ一般民であれ、特例を除いて年に3回行われる公募に応募しなくてはならない。
一般民は、書類審査で通った者が筆記テストを行いそれに受かれば、実技テストの受験資格が得られる。
実技に合格すれば面談が行われ、最終的に残った者が仮入隊となる。
で、仮入隊後は簡易訓練を1カ月こなし、最終試験に残った者が適正のある部隊へと振り分けられる。
そして、晴れて一般兵とるわけだ。
貴族は、書類審査と筆記テストと面談が免除となるが、実技テストは一般民と共に行う。
合格すれば、簡易訓練コースを一般民と共に1月こなし、その後士官学校で座学や何やらを3年間学び士官コースへと進む。
ちなみに一般民が士官コースへ進むには、2年間の一般兵コースでの実務経験と、4年間の座学履修が必要となる。
と、隊長が説明してくれた。
今回の公募を逃すと4か月先となるらしい。
間に合ってよかった。
書類審査受かるといいなぁ、などと思っていたら隊長が、書類審査と筆記テストを免除してくれた。
しかも、私の偽名で戸籍の改ざんもしてくれたらしい。
見つかったらまずくないか?と聞いてみたら、問題ないとの事だ。
実技は絶対に受けなきゃならないらしく、免除はできないとの事だ。
いやいや、十分だから。
それ以上は甘えられません。
自分で何とかします。
逆に、至れり尽くせりすぎて怖い。
ええ。
それより、偽名と戸籍の改ざんが出来るんだったら、軍に入らなくてもよかったのでは?
と、変な事に気づいてしまった。
ま、まぁ気にせず、テストの事を考えよう。
20日後に実技テストがあるとの事で、隊長に内容を聞いてみた。
試験では三つのチェックが行われるとの事で、主に基礎体力・健康状態・剣の扱いなどを2日に渡って見るんだそうな。
というか、それしか見ないそうだ。
簡単な説明ありがとうございます。
で、その20日後までに、読み書きはある程度マスターしとけと隊長に言われた。
それはそうだろうなぁと思う。
一般公募で筆記試験があるのに、その合格者が文字書けない読めないとかありえないわな。
普通に。
という事で只今、ナリアッテ・時々隊長・キース・後通りすがりの皆さんをとっ捕まえて猛特訓してもらっている。
で、日記も付け始めて、皆に添削してもらったりして中々楽しい。
朝のジョギングも"I Wanna Be A Drill Instructor"にのせて覚えた単語のスペルで歌いながらヴォイドと走っていると、隊の人から変な目で見られたけど、気にしたら負けだ。
で、朝の日課が終わって、朝食終わったら、実技テストに向けてトレーニング。
テストは、1対1で隊の人と対戦し実力を見るそうなのでちょっとハイペースで体力づくり。
受かる為には、体をつくっておかないと厳しいだろうし。
ここにきてから、運動といえばジョギングだけだったから、体がなまっているのが自分でよく判る。
部屋でストレッチ的な事はやっているが、本格的にはやっていなかったから、なまるなまる。
20日後までに体を元に戻さないとなぁ。
という事で、太極拳をする。
部屋でもできるが、どうせなら外の方がいい。
基礎からやっていると、ヴォイドがきょとんとした顔でこっちを見ていた。
ヴォイドには、私が何をしているかさっぱり判らなかったみたいだ。
当たり前だが……
説明が面倒なので、取り敢えずストレッチと言っておいた。
後で聞いたら、なぜ突然踊り出したのか判らなかったそうだ。
踊りじゃねぇ。
ゆっくりやった方が体に負荷がかかるので、どれだけはたから見ると変人っぽく映っても、気にせずゆっくりと型を進めていく。
こうして、ジョギング、太極拳、文字の読み書きをひたすら繰り返して幾数日。
つまり、テスト当日の今日。
テスト会場には結構な人が集まり、私の隣に当たり前のように立っている男が1人。
「・・・・・」
えーと、なんでいるの?