25.
私が、ここに滞在してから、毎朝1時間走って、朝食食べて、前日に教えてもらった文字を復習しつつ手持ち無沙汰であろうアンヴォイドさんに、この国のあれやこれやを教えてもらう日々が5日続いた。
この5日間、隊長やキースやファインさん、ついでに宗谷英規と会わない。
それぞれ皆忙しいんだろう。
と思いつつ、今日も日課のジョギングをしようと訓練コースに向かっていた。
すると、突然声をかけられた。
「おい、そこの。悪いが、これをアリオイエの所まで持っていってくれないか?」
と言って、目の前の男にいきなり何かを渡される。
何やら忙しそうな男だ。
アンヴォイドさんが、何か言おうと私より少し前に出た。
すると、男はアンヴォイドさんがいるのにようやく気が付いたのか、急に姿勢を正した。
「こ、これは!!失礼しました。ジャミニ近衛三官!」
と言って、敬礼。
ここの敬礼は、胸に当てる式かぁ。
そして、アンヴォイドさんはやはりエリート君かぁ。
ここで、私の事言われると何か居辛くなりそうだし、ここは黙っててもらおう。
それに、このまま勘違いさせておけば、ここの一般兵として働き口を確保出来るかもしれない。
働けなくても、コネができるかもしれない。
打算がいっぱいです、今の私。
アンヴォイドさんが口を開くより先に男に話しかける。
「あの、こちらをアリオイエ様の所へお持ちすればよろしいのですね?」
と、私が言うと、アンヴォイドさんがちょっと焦っている。
何やら反対しそうなので、目で牽制。
目の前の人物が「頼む」と言ったが、何か気付いたのだろうハッとなって慌ててアンヴォイドさんを見た。
恐らく彼は、私が何か別の用事をアンヴォイドさんから受けている最中ではないか?とでも思っているのだろう。
彼の気が変わられても困るので、立て続けに質問する。
「では、アリオイエ様が今どちらにいらっしゃるのか、教えて頂けますか?」
というと、目の前の彼に妙な顔をされた。
「申し訳ありません。私はまだ不慣れなもので」
「ああ、副団長の部屋で書類の整理をしてるはずだ。それを持っていって、ただ渡すだけでいい」
「了解しました」
と、見よう見まねの敬礼もしてみる。
すると彼は、「頼んだ」と言い、アンヴォイドさんに敬礼をして、走り去ってしまった。
アンヴォイドさんが何やらもの言いたげだが、ここは無視。
さて、早速ミッションスタートと行きましょうか。
っと言っても、単なるパシリですが。
「という事で、アンヴォイドさん、副団長の部屋はどこですか?」
と聞いたら、盛大に溜息をつかれてしまった。
「あの、どうして受けてしまわれたんです?」
「うん色々興味があったから。まずかった?」
「そういうわけではありませんが……」
何だか困惑ぎみに話すヴォイド。
「取り敢えず、副団長の部屋まで案内します」
気を取り直して、案内をしてくれるらしい。
「頼んだよ、ジェミニ近衛三官」
と、おどけて言ってみたら、
「ブ、いえヴォイドとお呼びください」
と訂正された。
「了解。ではヴォイド、そろそろ行こうか」
25話めです。
皆さま、ここまで目を通していただいてありがとうございます。
なかなか進展しない話ではありますが、末永くお付き合い下さい。
では、次話でお会いしましょう!