226.
「クィリム、心配してくれてありがとう。襲われる状況とか正直考えたくもないけど、警戒は怠らないようにする。それに何より本当に自分の居場所はここなんだ。ここを追い出されば、きっと行き場を失うだろう。虫のいいお願いだとは思うけど、クィリム目をつむっていてほしい」
クィリムの心配は解る。
少しでも安心できる材料があれば伝えておきたい。
「安心材料になるかはわからないけど、実は城内に1部屋借りてるんだ。身仕度はそこで済ますことができるから、便所やお風呂問題はひとまず安心だと思う」
「え?そうなの?城に1部屋って……」
クィリムの言葉に頷く。
「それに先にも申しましたが、ルイ様には今後必ず護衛がつきます故、懸念されるような事態は起こらないと断言いたします」
ウェルフさんが援護してくれた。
思わず顔を見ると、にこりと微笑まれた。
うむ、見事な執事スマイル。
「うーん。それなら大丈夫、なのか?でも、皆が心配してることは覚えておいて」
「解った。心配かけるけど、今後ともよろしくお願いします」
クィリムにも頭を下げる。
そして改めて他のメンバーにも。
「あ、そうだ、ウィルにはさ、悪いんだけど、このまま黙っておこうか」
ジェイが提案する。
「いや、それはあまりにも不誠実な気がする」
ジェイの提案にすかさず私は反論した。
皆に知られたなら、ウィルにも知ってもらった方がいい。
「いや、その提案には賛成だ。知る人間は少ない方がいい」
リプファーグがジェイの言葉に賛成した。
「ウィルはきっと知っても、他の者に話したりはしないよ?」
騎士団に所属し続けることには反対しても、他人に話すような性格じゃない。
「あ、うん。レイの気持ちは解るんだけど、もう少し黙ったままの方がおもし……楽しいかなって」
「黙ったままにするなら、その話題は仕舞いにした方がいい。ケナンヴェマが来るぞ」
ユイクル教官の指摘通り程なくしてウィルが帰って来た。
「ウィル、医務室行ってくれてありがとう。私がいくべきだったんだろうけど」
「いや、問題ない。と言っても顎殴られて頭揺らされて気絶したように見えたから、冷やすものだけもらってきた。まだ気絶してるのか?」
「そんなに強くうったつもり無かったんだけど、まだ起きないね。それほど長く気絶しないはずなんだけど……」
「そうか。とりあえず顎冷やせばいいのか?」
「自分がやるよ。貸してもらっていい?」
「いや、俺がやっておく」
ニコリと微笑んでありがとうと伝えた。
ん……?
あれ?
動かないけどどうした?