223.
アッパーがもろに入ってしまったのか、ホーク教官は倒れたまま動かなくなってしまった。
「教官、その、大丈夫ですか?何か冷やすものを……」
近づいて確認するが、返事がない。
これは相当効いてしまったようだ。
「そんなのは放っておけ。それより、レイ」
そんなの……
いやいや気絶してるし、放ってはおけないでしょう。
ユイクル教官が上着を被せてくる。
いや、暑いから要らない。
断ろうとしたら睨まれた。
えー、まだ何も言ってない。
「あれ程気を付けろと言った筈だかな。お前のその無頓着ぶりは命取りだ」
「どういう……」
どういう意味かユイクル教官に問おうとして顔を見ると、そらされた。
首もとを指差さしている。
ん?
俯くと、う、わ……
カパカパ。
これは色んな意味で駄目だ。
全方位的に駄目だ。
慌てて上着のボタンをとめた。
だから、このボタン……
ボタンをとめつつ、ユイクル教官をそろっと見てみる。
「み、見ました?」
「ぐっ。いや、み、見てない。見てないぞ断じて」
目が泳いでるぞ……
見たんだな……
「あー、見たんだユイクル教官」
ジェイがユイクル教官を責めている。
「何を言うか。言いがかりだ。そういうお前こそ見たのだろうが」
ジェイに指摘をされてユイクル教官が慌てているようだ。
逆にジェイが教官から指摘返しを受け、慌て始めた。
「な!?触れたし、良い匂いしたけど見てないよっ!俺!」
「なお悪いわ!」
ジェイにいつ触られたんだろう。
あ、食堂の時か。
あの時、匂いかいだんだ……
思わずジト目をしてしまった。
「あの時は、レイが悪いんだからな、俺謝らねぇぞ」
あ、うん確かに、あれはなかった。
「あー、あれは確かに私が悪かった。不快な思いさせてごめんね」
ここは素直に謝っておこう。
欲望に負けてしまったのは事実だし。
「不快じゃなかった、むしろ気持ちよか……」
「先程から何の話をしてるんだ。まるで話が見えないのだが……」
ウィルが不思議そうな顔をしている。
ジェイは表現しづらい表情だ。
「ケナン……いやウィロアイド。君、いくらなんでも鈍すぎないか!?何故あれで気づかないんだ……いや、いい、もうそのまま気づくな」
「リプファーグ、その顔はやめてくれ。最近よくその表情を色々な人にされて、結構傷つくんだ……」
あ、うん。
ウィルはそのまま大きくなるんだよ。
「あのさ、俺思うんだけど」
クィリム?
「女の子は胸の大きさじゃないよね。形がこう……」
クィリム、余計なお世話だよ。
本人目の前によく言ったな。
おい。
「うわぁ、ごめん。形や大きさ関係ないからな!?人柄だから人柄。だからお願いそんな顔しないで」
どんな顔だよ。
はあ。
いけない、思わず溜め息が。
とりあえずホーク教官を食堂の中に運ぼう。
そうしよう。
「いい、そいつは俺が運ぶ。レイ、お前は先に中に入っておけ」
どうやら、ユイクル教官が中に運んでくれるらしい。
ここは言葉に甘えよう。
中に入ったら皆には説明した方がいいのかな?
どうなんだろう?