220.
「あの、教官、失礼ですが、名前名乗っていらっしゃいましたか?」
恐る恐る、担当教官にたずねてみる。
「あ」
うん、忘れてたんだな。
「えーと……」
「アンホークィッド=サスフィア=ジェウェレイ=ジュペフォーブだ」
「あ、いえ、自分も知ろうともせず、申し訳ありませんでした。ジュペフォーブ教官」
なぜか凹んでるな、ジュペフォーブ教官。
「家名は苦手なんだ、名前の方で頼む。長いから適当に呼んでもらっていい」
ユイクル教官が微妙な顔でジュペフォーブ教官を見ている。
それにしても適当って……
アンとかキディって呼ばれたらどうするのだろう。
まぁ、却下するのだろうけど。
「了解しました。アンホークィッド……えーとホーク教官」
「それで良い」
「それでは、ホーク教官、ユイクル教官これからご指導の程お願いいたします」
一応けじめなので挨拶をしておくと、ウィルも続けて礼をしていた。
暫く歩くと、食堂に着く。
「あー!やっと来た!」
ジェイが飛んできた。
何かあったのだろうか?
「もう、嫌だ、あの雰囲気。レイ達が帰ってきてくれて良かったよ。あ、教官」
ジェイが教官に気づいて敬礼をする。
話を聞くとどうやら、リプファーグとクィリム2人の空気が相当悪いらしい。
早めに試合をした方が良さそうだ。
「えと、ユイクル教官、ホーク教官、到着早々申し訳ないのですが、早速審判をしていただいていいでしょうか?」
2人が顔を見合わせる。
「リプファーグとクィリムが今相当険悪な雰囲気になっているみたいで」
「あぁ、解った。あ、審判はユイクル、お前な」
「何だと?」
「俺、酒飲んだし」
「おい、この話を受けたのは貴様だろうが……」
「どうせお前は暇だろ?その代わり、先程の案件受けても良いぞ?」
ホーク教官が強引に話を進めている。
ユイクル教官が、苦虫を潰したような顔を一瞬したが審判は断らなかった。
良かった。
「よろしくお願いします、ユイクル教官」
取り敢えず、満面の笑顔で再度お礼をしておいた。
ユイクル教官が酷くむせた。
「大丈夫ですか?」
一応聞いておく。
「も……問題ない」
若干涙目だ。
むせて苦しかったのだろう。
「俺、中の2人を呼んでくる」
ジェイが2人を呼びに食堂へと入って行った。
走ると危ないよ。
「結構ここ明るいな。光源とかいるかと思ったけど、必要ないかも」
ここの明るさについて述べていると、ホーク教官からツッコミをもらった。
「慣れた奴じゃないと無理だろう。試合するには暗い。確か食堂に持ち出し出来る非常用の明かりが数個あるはずだ。ウィロアイド、中から取ってこい」
「はっ」
明かり十分だと思うんだけどな。
「この暗さじゃ、その服でやるのは危ないからな」
あ、そうかドレスで訓練だった。
「んじゃ、レイはこっちの方で鍛練な」
ホーク教官が空いてる場所を指し示す。
そういえば武器持ってきてないや。
その事をホーク教官に伝える。
「そもそも、その任務に武器の所持は許可されてるのか?」
「いえ、わかりません」
「じゃあ、今日は身体の動かし方を中心にやればいいだろう。それにそのなりじゃ、武器といっても持てるのは短剣が精々だろ?」
「襲われたら相手のを奪うかも」
「奪ってみろよ」
ホーク教官がニヤリと嗤った。