217.
本当にお待たせしました。
再開します。
これからもよろしくお願いします。
ウィルと一緒に元担当教官の部屋へ向かおうと食堂を出ると、おもむろにウィルが何かを言い出した。
「そうしていると、本当に女性のようだな」
はは……
空笑いしか出ない。
「あ、いやすまない。女性のようだと言われて喜ぶ男はいないな」
はは……
男と言われて喜ぶ女もあまりいない……
あぁ複雑。
「そ、それよりさ、実は前から気になってた事があるんだけど……」
無理矢理過ぎたけど、話題転換。
うん、転換大事。
「今さら聞けないという感じの事なんだけど」
そう、かなり前から気になってた事だけど、何となく今まで誰にも聞けずにいた事で。
意外に誰も口にしなかったので、知り逸れていた事。
「何だ?」
「あのさ、担当教官の名前ってウィル知ってる?」
「………………いや」
「…………」
「…………」
「うん。担当教官でいいよね」
「……ああ、そうだな」
急に夜風が吹きつけてきて、思わず体をさすった。
「寒いのか?上着は一応袖を通しておいた方がいいぞ。ああ、リプファーグのものだと大きすぎるな。これを着るといい」
そう言って後ろからリプファーグのものを然り気無く奪い、自分の着ていたものを私にかけてきた。
確かに背はリプファーグの方が高いけど……
別に上着は交換しなくても良かったのでは?
などと考えていたのが悪かったのか、盛り上がった土に足をとられて転びそうになった。
「おっとぉ」
「なっ」
ウィルが後ろから腰を支えてくれたので、転ばずに済んだ。
「ありがとう」
「礼には及ばない。それより大丈夫か?やはりそのような衣装だと、歩き難いのだな。腕に捕まるといい」
おお。
すごくナチュラルに腕を出してきた。
こういうところは、貴族出身なんだなと思う。
「いいよ。悪いし」
「何、気にするな。それにこの方が暖かい」
あ、なるほど。
それが本音だね。
思わず笑みがこぼれる。
では、遠慮なく。
確かにこれは暖かい。
「じゃあ、エスコートよろしくお願いします」
さて行こうかと、一歩踏み出したもののウィルが動かない。
「あれ?行かないの?」
「あ、いや?何だ?あぁそうか。すまない。行こうか」
どうしたんだろう?
少しウィルが変だったが、気にせず教官棟へ進む事にした。
食堂から教官棟へは、それほど距離がないので無駄話をしていると直ぐに着く。
正面入り口から普通に入ると、騎士の姿がちらほら見えた。
何だか凄く見られている気がする。
や、気のせいではなくガン見です。
え、この中歩くの?
うわぁ。
ざわつく廊下を進みながら、周りを然り気無く見る。
目があった隊員には取り敢えず愛想笑いを浮かべておく。
「……レイ。あまり、その、あまり微笑まない方がいいのではないだろうか?」
「え?」
「あ、いや何でもない」
ウィル?
どことなく緊張してる?
何で?
よくわからないがそのまま教官室へと向かった。
辿りついたのでノックをする。
「入れ」
扉を開けると元担当教官の他に、意外な人物が中にいた。
「ウィロアイドか、どうし……た」
溢れてる、溢れてるからお酒。
早く誰かあれを止めて。