200.
セラ小隊長からのこの精神攻撃をどうやって躱すかを思案中、アイルさんが援護射撃をしてくれた。
おかげでこれ以上のダメージを受けずに済んだ。
これからジェイにしないように気をつけよう。
結構くる。
「そう言えばこの間の合同訓練実績の総合評価の件なのだが……」
「ああ、微妙な案件だな。この間評価委員につかまって散々愚痴を聞かされた。どうかしたのか?」
アイルさんがセラ隊長に話しかけている。
その後しばらく3人の業務連絡が続いた。
そろそろここを離れた方がいい。
「ああそうだ!」
フィルさんが突然大声で叫ぶ。
油断していたので少し驚いた。
「おい、なんだよ」
「なんだ」
アイルさんとセラ小隊長が同時に聞き返す。
「あ、いや、セラんとこの隊で今度何かの任務があるらしいぞ。そっちの隊長がうちのジョイロナ隊長に何か話してるのを聞いた」
フィルさんがセラ小隊長に任務の情報を伝えている。
何だろう。
シンヴァーク様に何か関係のある話だろうか。
小隊長に話す位だからあるんだろうな。
3人の目線がこちらに集中する。
ああ、はいはい。
長居は無用。
丁度頃合いだし、気にはなるが空気を読んで3人に暇の挨拶をしてその場を去った。
その後何事も無く朝食の準備を済ませ、シンヴァーク様を仕事場へと送りだす。
いやぁ、妨害が何もないと仕事が進む進む。
今日は余裕がありそうなので、酒蔵へと足を運んでみたい。
後この騎士団の組織運営の詳細も気になるので情報収集もしたいな。
そんな事を考えながら午前中の仕事を行っているとあっという間に時間が過ぎた。
とと、今日こそは昼食をもらわなければ。
食事抜きは辛いし。
騎士専用食堂に入ると中は閑散としていた。
辺りを見回すと従騎士の姿がちらほら。
どうやらこの時間帯は穴場らしい。
騎士たちの休憩とはうまくずれてくれたようだ。
重なった時に食いっぱぐれるのは目に見えている。
そうならない為にもシンヴァーク様のスケジュール確認は重要だな。
厨房に昼食を頼みついでに今晩のおかずに合う酒の種類も聞いておく。
この後酒蔵へ行きたいし。
で、きました本日のメイン酒蔵。
酒の種類確認を管理人さんに聞いて行う。
知らないものばかりなので、飲み方を覚えきれなかった分はその都度聞くことにした。
さて、シンヴァーク様用の本日のお酒はエアエイ94年物。
管理人さんの説明を聞くところによると、この年がエアエイの当たり年だそうで丁度熟成期なのだそうだ。
少し試飲させてくれるらしい。
管理人さんのところに厨房から事前情報があったのか、すでに94年物の試飲の準備がされていた。
ここの管理人さん出来すぎです。
やばい嬉しい。
試飲をしてみると、これがぶっ倒れるかと思うほどのうまさ。
香りといい飲み口といい。
もう表現しきれない。
時間をかけて飲ませていただきました。
このエアエイをポンと渡せる管理人さん凄すぎる。
これを飲めるシンヴァーク様が正直羨ましい。
残念ながら従騎士への配給はないそうだ。
非常に残念。
ヴィンテージらしいし、仕方がないかぁ。
あまりにがっかりしたせいか、同情されてしまった。
代わりに従騎士用の酒で管理人さん一押しの物を譲ってもらった。
ちびちびいける系でそれなりの度数があるヒクルという酒だ。
試飲できるのかなと思ったら今晩の楽しみにといってさせてくれなかった。
が、我慢できるだろうか?
で、部屋に帰ってした事というとエアエイのテイスティング。
いや、飲みたいからではない。
古いワインは早めにあけておきたいのだ。
いや、ワインじゃないんだけどさ。
地球産でもないし。
しかも原料がブドウでもないという。
さて、先程飲んだみたいに化けてくれるかな。
ソムリエじゃないから自信ないけど。
とりあえず空気に触れさせて夕食の時に花開いてもらいましょう。