20.
濃いな~。
いや、別にいつの間にかいなくなっていた、この城のメイドさん達の事ではなく、今のメイク。
文句言ったら怒られそうなので、今回は黙っておくが、次回からメイクは絶対自分でします。
ええ。
「ルイ、とても奇麗ですわ」
と、こちらがみとれるぐらい奇麗な笑顔で言われても……
複雑だな~。
「ナリアッテ、お世辞でも嬉しいよ」
とりあえず、笑って社交辞令を返しておく。
「お「それよりナリアッテ」ませんのに……」
ん?
何かをナリアッテが言いかけていたが、私の声とかぶってよく聞こえなかった。
「ごめん、かぶった」
「いいえ、構いません。それよりどうかされましたか?」
「あ、夕食っていつぐらいなのかな?と思って」
窓を見ると、今丁度夕日が沈みそうになっている。
夕食の時間には早い気がして、聞いてみた。
「思ったよりも、御支度が早う御座いましたので、少し時間が余ってしまった様ですね。お茶を淹れて参りますので、しばらくこちらでお寛ぎください。時間がくれば迎えの者も参りますので」
そう言って、ナリアッテは部屋を出て行った。
1人残された私。
する事がないので、メイク直しがしたくなる。
いやいや、結構張り切ってやってくれたのに直すわけには、あーでも仕上がりがイマイチだし。
いやいや、ここではこのメイク法が主流なのかもしれないし、あーでもすれ違った人にこんなメイクの人いなかったし。
いやいや……
で、結局少しいじる事にした。
で、やりすぎた。
フルでメイクをし直してしまった。
常備しているメイク落としを見ていたら、自動的にメイク落としてた。
ビバ、拭くだけメイク落とし(携帯用)。
フルメイクするといっても、凄く適当な気合もへったくれもないナチュラルメイクですがね。
5分もかかりません。
はは。
ああ、本当にメイク担当の人ごめんなさい。
貴方の腕が一流なのは、認めます。
せっかくのメイクを、ほぼすっぴんにしてしまってごめんなさい。
でも、言わせてください。
黄色人種の私の顔を、白人用の肌色でメイクするのはどうかと思うのです。
ベースから違うから!
浮くから、確実に。
だから、直してしまいました。
すみません。
と、心の中で謝ってみた。
しかし、よく解った。
この国に、黄色人種はいない。
いるならば、ファンデーションの色が揃っているはずだ。
でも、ブラウンとかその他の色も揃っていたから、この国には白人以外の人種もいるのだろう。
だがしかし、黄色人種はいない。
これは非常に重要だ。
私がもし城外に出る事があれば、目立つ可能性がある。
肌が見えないように工夫しても、バレる時にはバレる。
肌が見えた途端、トラブルに巻き込まれるのはごめんだ。
しかも、独り立ちをしたと仮定して、市井で生活する場合、肌の色が障害になったりするかもしれない。
就職できないとか何とか。
これは早急に、この国の歴史なり文化なりを調べないと、私の計画が頓挫するかもしれないと思った。
そんな事を考えていたら、隊長を伴ってナリアッテが帰って来た。
「お帰り?」
と言うと、2人とも固まる。
ん?お帰りって通じなかったのかな?
ここでは変な言い回しだったのだろうか?
一歩近づいてみたら、なぜか2人とも目が泳いだ。
あ、そうか。
メイクか!
やっぱり、あの侍女さんがやったメイクでないと駄目なんだ。
このメイクだと、何か礼義的に問題があるのかもしれない。
異世界とかいう以前に、異なる文化においては礼義や慣習が違うのは当然だし、メイクの仕方にだって風習が違うに決まっている。
きっと、不適切なんだろう。
チークの色だけ直す、とかにすればよかった。
どうしよう。
又、侍女さん呼ばないと駄目かな?
そもそも時間あるのかな?
うわ。
やっちゃったよ。
「あの、ナリアッテ、メイク変えちゃったけど問題あったかな?何なら、今からメイクやり直そうか?」
といって、若干焦りながら洗面台を指さした。
「とんでもありませんわ!あの、とてもとても素敵です。先程より断然!なんて事でしょう、先程の侍女はクビに……」
と、待て待て、クビとか今不穏な事言わなかった?
そんな事で、クビとか……
てか、権限強いなナリアッテ。
「お、落ち着こう、ナリアッテ。恐らくメイクの色が揃ってないだけだよ。ほら、私の肌色こんなのだし。ね?クビにするなんて、時期尚早だよ。だめだよ。ね?隊長も何とか言ってくださいよ」
と、隊長にも振ると、
「う、うむ」
と、なんともよく判らない答えが返ってきた。
心ここにあらずな感じだ。
さっきナリアッテと何かあったのだろうか?
そっとしておこう。
「と、取り敢えず皆、お茶でも飲もうか?」
そう言って、私は皆を促した。
せっかくのお茶が冷めるのはイヤだしね?




