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自称現実主義者の異世界トリップ  作者: GUOREN
自称現実主義者、従騎士になる
197/228

197.

同期会へ行った後、風呂に入りシンヴァーク様の部屋に戻った。

これ以降特にする仕事もないので、明日の朝起こす時間と必要事項の有無を確認してから自室へと下がらせてもらう事にした。

「それではシンヴァーク様、私はこれで」

きびすを返そうとしたところで、ドアのノックがなる。

なんだろう?

「はい、どちら様でしょう」

ドアを開けず誰何する。

「夜分失礼いたします。レイ様は、おられますでしょうか?」

私?

何だろう。

ドアを開けてみる。

「ああ、お久しぶりです。ルイ様ではなく、今はレイ様ですね」

よく見ると、陛下の飲み会の時にずっと給仕をしていた人だ。

なぜここへ?

手には何枚もの布を持っている。

まさか、隊服?

陛下の専属侍従がわざわざ届けに?

「従騎士のお姿もお似合いですよ。ですが、出来うるならばもう一度ルイ様のお姿を見てみたいですね」

「ははは、機会があれば」

思わず空笑いが出る。

後ろにシンヴァーク様がいるので、琉生の話は出来ればやめてほしい。

どきどきする。

「レイ、誰だ」

侍従の人と立ち話をしていたら、シンヴァーク様が問いただしてきた。

「シンヴァーク様、失礼いたしました」

居住まいを正し振り返る。

「こちらは」

「私は侍従をしております、ウェルフと申します。お見知りおきを」

紹介しようとした私の声を遮り、完璧な礼をもって自己紹介をするウェルフさん。

なんというか執事の典型だ。

かっこいい。

見習おう。

「その襟元の印は、まさか陛下の!?」

シンヴァーク様がウェルフさんの襟元を見て驚いている。

よく見ると何か印みたいな物が小さく刺繍されている。

陛下と関係のある印なのかもしれない。

「ええ現在、弱輩ながらも陛下付きを仰せつかっております。それより、今回はこちらの隊服をレイ様に届けに参りました。どうかお納め下さい」

ウェルフさんから隊服を渡される。

「あの、てっきり伝言かなにかが届くと思っていたのですが……なぜ陛下の……?」

「ああ、レイ様。どうかウェルフとお呼びください。後、伝言より直接手渡しのほうが早いと思いまして」

「う、あ。愚問でした。お忘れ下さい」

恥ずかしい。

ウェルフさんにくすくす笑われる。

「今回こちらをお届けするにあたり、実は私ども城仕えの者たちの間で一悶着がございまして」

一悶着?

厄介ごとを頼んでしまったようで申し訳ない。

これ以上城には面倒をかけないよう、極力注意せねば。

「なんと申しますか、侍従長を筆頭にその隊服をお届けするのは誰か?というような争奪戦が起こってしまったのです」

「はぁ!?」

思わずシンヴァーク様とシンクロして驚いてしまった。

なぜそこで侍従長が出てくる。

いや、そもそも争奪戦って何?

「隊服を届ける話が広範囲に広まったせいか、ル・レイ会に関わっている城仕えの者たちが衣装室へと殺到しまして」

うわー、ル・レイ会……

広範囲にわたる情報網は侮れんとか思っていたが、このようなところで弊害が。

思わず額に手をやってしまった。

「そこで、大抽選会が行われまして。兄には敵いませんがクジ運の強い私がこの役目に就くことになりました。本来ならば夕方ごろにはお届けに上がれる予定だったのですが、このような時間になってしまい申し訳ありません」

ゆうに3時間以上は経っているが、クジってそれほど時間がかかるのだろうか?

「ああ、クジはすぐに決まりました。それまでの話し合いに時間がかかったのです。それはもう泥仕合でした。危うくこの役を侍従長や他の者に奪われるところだったのですが、ナリアッテ様がクジで決めるとおっしゃいましたので、僭越ながら私が」

一体どのような話し合いが行われたのか、気になるところだがここは聞かない方向で。

やはりナリアッテが仕切っているのね。

「ああ、申し訳ありません。このような寒いところで話しこんでしまいました。見たところ湯上りのようですね」

え?

横に流していた私の髪にそっと触れるウェルフさん。

タオルだけでは髪が乾ききらないのでまだ湿っている。

この季節乾かすのに時間がかかる。

ドライヤーないし。

よし、髪切ろう。

そろそろ伸ばしっぱなしが耐えられなくなってきた。

この国に来てから一度も切ってないし。

「体に障るとよくありません。どうか暖かいお召し物にお着替えになって、お体を温めてお休み下さい」

完璧な姿勢で言ってのける様は、とてもかっこよかった。

流石陛下付きの侍従。

「お気遣いありがとうございます。ウェルフ様もどうかご自愛下さい」

笑顔で答えた。

この人のような完璧な礼は出来ないけど、私なりに。

「は、はい。で、では、私はこれにて。シンヴァーク様、お騒がせいたしまして大変申し訳ございませんでした。それでは、失礼をいたします」

最後に胸に手を当て軽く礼をしつつ、私の手の甲にさりげなくキスを落として去っていった。

あまりのことに、おやすみなさいと言おうとした状態で固まってしまった。

しばらくして解凍されると後ろからただならぬ雰囲気が。

恐る恐る振り返ると、今日一番の眉間のしわが目に入った。

怖い。

見るんじゃなかった。

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