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自称現実主義者の異世界トリップ  作者: GUOREN
自称現実主義者、従騎士になる
182/228

182.

副団長室に向かい、中に入ると肝心の本人はおらず代わりにアリーオさんがいた。

「お久しぶりですね。その服を着ているという事は、従騎士になられたんですね」

相変わらずやわらかい笑顔でらっしゃる。

「アリーオ様、ご無沙汰しております。無事に従騎士となれました。といっても、慣れないので半人前もいいところなのですが」

「そうですか。今は色々と、大変だと思います。そうだ、こちらへ移る気はないですか?」

「こちら?」

「ええ、騎士団補佐として。いいお話だと思うんですけど。あなたにとって。そう悪い話でも」

「おい、アリーオ。人手が足りないというのは知っているが、うちの騎士を誘惑するのはやめてくれ」

あ、副団長。

隣の部屋から出てきた。

騎士団補佐って人手足りてないんだ。

「お前はもういい。去れ」

「はは、了解。それでは副団長、先ほどの件通達しておきます」

「頼んだ」

アリーオさんが、敬礼しこちらを見た。

「レイ、ルイって呼んだほうがいい?今の話、考えておいてくださいね」

立ち去り際に静かに耳打ちしてこの部屋を出て行く。

本気っぽい?

「本気にするなよ?」

副団長の言葉に苦笑で返す。

「で?話って?もしかしてアンヴォイドの事か?」

「……いえ。その事を聞いても答えてくれるとも思わないので。まずは急ぎの案件から」

私がそういうと驚いた顔をする副団長。

確かに色々問いただしたいが、今はよそう。

「急ぎの案件?」

「はい、実は少し困った事が起こって」

「聞こう」

「ありがとうございます」

礼をする。

顔を上げると、副団長がなぜか複雑そうな顔をしていた。

そう言えばこの間も敬礼をすると、同じような表情してたな。

なんでだろう。

「私は今11番隊のシンヴァーク様の従騎士をしておりますが」

「知っている」

「つい先ほど少しヘマをしました。そのせいで、シンヴァーク様の明日以降の隊服の替えがなくなってしまったのです。そこで体格が似ている副団長のを借りられないかと思いまして」

「嘘が下手だな。お前がそんなヘマをするとは思えない」

「買いかぶりすぎです」

正直に話してもよかったんだけど、あまりにも些細な事すぎて詳しく話す気になれない。

「まぁ、いい。俺のでよければいくらでも持っていけ」

「よしっ」

思わずガッツポーズ。

少し多めに借りておこう。

「じゃあ4着ほど借りていい?」

「ああ。隣の部屋にあるから、適当に持っていくといい」

頼んでみるもんだな。

これで、クリアだ。

「もしかして急ぎの案件ってこのことか?」

「そうだよ?」

拍子抜けしたような顔をされた。

もっと厄介事でも持ってくるとでも思ったのだろうか?

「今日中に手配しないと明日の分が無かったから、困ってて。裸で訓練させるわけにもいかないし」

「……そうか」

副団長はあからさまにホッとしたような表情になった。

ん?

眉間に皺がよってきた。

何か逡巡しているようだ。

なんだ?

「それはいいとして、アンヴォイドのことだが……」

切り出しにくそうに言う。

そのことか。

再度言ってくるという事は、副団長なりに気にしているらしい。

「ああ、なぜヴォイドの上官から中止命令がなかったのか?とか、私が引導を渡す必要があったのか?とか疑問は数多にある。すでに用意していたヴォイドの偽名の事を考えたら、ちゃんと護衛としての彼の居場所は準備されていた。にも関わらず、わざわざ副団長自ら私に命令して任務を解かせた。その事を考えると、何か急ぎの命でもきたんじゃないか?と思って。だからこの件に関して何も聞かなかったし、言わなかった。理由を話さないという事は、私が知っていいべき事じゃないから。違う?」

私がそう言うと驚いた顔をする。

事前に従騎士としての名前を用意していたにも関わらず、急に元の任務に戻れだもんね。

何かあるとか思うでしょ、普通は。

理由のわからない命令というのは、何らかの組織に所属していればよくある事だ。

下っ端であればあるほど、知らされない。

知らされない内容が多ければ多いほど、厄介ごとの度合いは大きくなる。

下っ端が出来る事といえば、その理由を上司に聞いたという体裁を整える事だけ。

理由は後からついてくる。

それを信じる信じないは別として。

知りたければ薮をつつけばいい。

出てくるのは、蛇どころの話ではないだろうが。

「詳細は聞きません。ただヴォイドと会えないのは少し残念に思います。もし許されるのであれば、又会いたい。私は、いえ私達同期会はいつでも歓迎すると、彼に伝えてもらえますか?」

副団長を見ると、安堵の顔をしていた。

やはり詳細は聞かれたくなかったか。

まぁ、聞いたといてもろくでもない事だろう。

危機回避のために聞かないという選択もありだ。

蛇嫌いだし。

「ああ、約束しよう」

「よかった」

ホッとする。

伝言だけでも伝えてもらえれば、気が楽だ。

「あ、そうだ。もう1件お願いがあるんだけどいいかな?」

「なんだ?」

副団長の席に近づく。

やっぱりだ。

このボタン。

今日のうちにかけ方覚えよう。

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