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自称現実主義者の異世界トリップ  作者: GUOREN
自称現実主義者の最終試験
173/228

173.

あの後、11番隊とやらがどういった部隊なのかを根掘り葉掘り教官に聞き倒した。

どうも、所属でもめた場合クジを使うようで、運悪く引き当てたのが11番隊の人だったようだ。

教官曰く、「いつも派遣されて来る11番隊の奴ってのは、恐ろしくクジ運の強い野郎でな、いつも皆のほしがる人材をクジで掻っ攫っていく」との事。

どうやら今回彼が初めてはずれを引いたという事で、選定委員がおおいに喜んだそうだ。

すみませんねぇ、はずれで。

すごく複雑だ。

その11番隊というのは、このクジ運のいい彼のおかげで優秀だという人材を掻っ攫い、さらに使える士官もクジで勝ち取るという偉業を成し遂げ続けている隊なのだそうだ。

そんなわけで優秀な人材が自然と集まるエリート集団というのが、周りの評価だ。

使えないレッテル貼って歩いてる私、アウェー。

あぁ、憂鬱。

使えるような使えないような情報を仕入れた後、教官の部屋を出るとやはりいつものメンバーがいた。

あ、クィリム帰ってたんだ。

「終わったか?」

「あ、その顔だと合格でいいんだよな?」

頷くと、それぞれから祝いの言葉をもらった。

「おい!誰だ廊下で騒いで……レ」

ユイクル教官と目が会ったので目礼する。

考えたら教官って何で賛成票にいれたんだろう。

反対してたのに。

謎だ。

「レイ……その、結果はもう聞いたのか?」

「はい、たった今」

「そうか、色々危険だと思うのだが……やめる気はないのか?」

「ありません」

即答する。

「……そうか。ひとつだけ忠告しておく。絶対1人にはなるな。何があっても誰かとともに行動しろ。いいな」

あまりに真剣に言うから気圧され、思わず返事をした。

「心配には及びません。俺がついてますから」

ヴォイドが私の前に出て言う。

そうだ、これからヴォイドってどうなるんだろう。

「おま……そうか、知っているんだな。レイの事」

「あなたよりは」

ユイクル教官の片眉が上がる。

まただ、廊下が凍る。

ただでさえ冬で寒いのに。

「エーと、とりあえず気を付けます」

変な空気になる前に去ろう。

「あ……あぁ。周りに気を許すなよ。集団に囲まれる事態になる前に逃げることも選択しろ。後は、そうだな、あまり目立つな」

「なんか、母ちゃんみてぇ」

ジェイにぼそっと指摘され、狼狽するユイクル教官。

ふむ、珍しいものを見た。

「ともかくだ!夜も遅い、お前らは帰れ」

そう言ってユイクル教官は自室へ戻って行った。

「戻ろう」

「そうだね」

そうして宿舎にもどってきた。

よく考えたら明日でこの宿舎とはお別れだ。

明日から各自別の道を歩む事になる。

そう思うと感慨深い。

「なぁ、レイ。どこに配属になったんだ?」

ジェイはこの事が気になって仕方がなかったんだろう。

担当教官の部屋から、ずっとそわそわし通しだった。

「11番隊」

私が言うと、ウィルが珍しく反応を示した。

「11番隊とはまた」

ウィルが何か知っているようだ。

聞いてみよう。

「ああ、貴族の間では、11番と言えば選ばれた集団という認識だ。士官学校卒後の配属希望順位は、近衞の次に多い。近衞に最も近い隊とかも言われてるな。そうか、レイなら11番と言われても納得がいく。従騎士とはいえ、そこに配属とは羨ましい限りだ」

そんなにか!

やってけねぇよ。

配属変え希望しても受け入れ先皆無だし……

くじ運強い人なぜ今回だけ不調だったんだ……

「いや、実は……今回選定で、各隊で厄介者扱いされて受け入れ先がなかった挙句にくじ引きになった結果、たまたまクジ運のなかった11番隊の人が私を引いたってだけで、情けない事に実力を買われてとかいう話ではなかったんだな。それが」

「え?そうなのか?」

ウィルが驚く。

「うん、物凄くやりにくそう。ユイクル教官の言うとおり、目立たずひたすら地味に頑張るしか無いかと」

「ま、まぁでもさ、側仕えする騎士様がいい人かもしれないし、気を落とさないほうがいいよ。うん。それに俺たちもいるしさ、同期会?頻繁にすればいいと思うし。あ、ちなみに俺10番隊」

ジェイが慰めてくれる。

あ、同期会の内容詰めなきゃ。

「俺13な。ヴォイドは?」

クィリムは13番のようだ。

「私はレイと同じですね」

ヴォイドの立ち位置がわからないな。

私と同じように誰かの従騎士になるんだろうか?

近衞なのに?

ウィルは士官学校に進むんだよな。

本当に今日でばらばらだなぁ。

「で、いつやるの?」

ジェイが急いたように言う。

「明日だろう」

クィリムが即答する

「明日かよ。初日は厳しいかもな。やっぱいきなり抜け出すとか難しくね?」

ジェイの言葉はもっともだ。

「随時集まる事にすればいい。仮訓練生用食堂の、そうだないつもの奥の席って言うのはどうだろう」

ウィルが提案する。

食堂はいいかもしれない。

次に使用されるのは、3ヶ月先になるだろうし。

「来れる奴だけ来るって言う感じか」

「そうだね、スケ……予定にもよるし、各自調整って事で」

「集まる時間帯はやっぱ夜か」

「うん、それも夜中?」

ウィルの言葉に付け加える。

「え?何で夜中?」

ジェイが疑問符を貼り付けた顔で聞いてくる。

「担当騎士が寝てからになると思うから」

「あぁ。やっぱりそうか。なんかこそこそするみたいで嫌だな」

ジェイが悩み始めた。

「許可はもらった方がいいのではないか?」

ウィルのいうことも一理あるか。

まぁ、普通はそうだよね。

許可くれるかなぁ。

「自主練といったらくれるかも。そうすれば堂々と出てこれるし、もっと早く集まれるかもしれない」

私が思いついた提案に皆が乗り始めた。

「あ、じゃあさ、いっそ集まりついでに練習したりってのはどうだ?楽しいかも」

クィリムが言う。

元気だなぁ。

「疲れてなかったらな」

「じゃあ、食堂の使用許可だけでももらっておこう」

集まった時に何をするかはさておき、使用許可だけはもらっておかねば。

「使用許可?」

クィリムが疑問を示す。

「無断で使うのはよく無いでしょうが。問題になるかもしれないし」

「誰にとるの?」

「食堂管理人?」

「なぜ疑問形」

そこら辺は情報通のナリアッテに聞くのが1番だろう。

「まぁま、私に任せなさい。って事で早速動くわ。結果は夕飯の時にな」

「怪我してるんだから、俺が行くよ」

クィリムが提案してきた。

「いや、いいよ。繋ぎつけてもらうだけだし。遅かったら先食べてて」

「そうか?でも夕食は待ってるよ。最後だろ?」

「そうだな、最後だよな。わかった、待ってて」

「おうよ」

仲間の言葉を噛み締めながら、ナリアッテの元に向かった。

やっぱ情報と言えば、ナリアッテでしょう。

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