表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
自称現実主義者の異世界トリップ  作者: GUOREN
自称現実主義者の最終試験
170/228

170.

がっちりホールドされ、抜け出せない。

身動きすればするほど、締め付けられる。

肺の中の残りの空気が、吐息のように出ていった。

さらにこめられる力に、骨がきしみそうになる。

「そ……それは……」

声を絞り出そうとして、かすれた声が出る。

怪我をした場所が急に悲鳴を上げ、抵抗していた手の力が抜けた。

さらに抱きしめられ、呼吸が苦しくなる。

「確か……に私は、女……」

「……お前は女性の身で騎士団に入団して」

耳元でささやく声がくすぐったい。

「何事もなく過ごせるとでも思っているのか?」

「は……あ……」

思わず体が反応した途端溜息のような空気が漏れた。

教官の力がまた加わる。

痛いところをつかれている。

ある程度の防衛はおそらくできる。

だけど、この状況で言っても説得力はない。

この男を説得できなければ、入団はできない。

この状況を回避出来なければ、反対派に回るだろう。

「そう……は……おも……わない。ですが!自力でな……ん……とか……しよ……ぅ……と」

呼吸が続かず、喘ぎ喘ぎ話す。

苦しい。

酸素が足りない。

「現に俺からも抜け出せずにいる」

頭をなでられる。

馬鹿にされた、悔しい。

「集団で来られた時はどうするんだ?これだけですむと思うのか?」

思わず片眉が上がる。

なめるな。

大人しくしていれば。

よし、これでいこう。

抜け出す方法を思いついたので、早速実行に移す。

顔をユイクル教官に向け、目をみつめた。

大方これだけで相手はひるむか動けなくなる。

私の顔が苦手な人ほど効果絶大。

メガネなしの時ほど威力は大きい。

私の顔特性万歳。

そう言えば、こちらへ来てから1度もメガネかけていないわ。

あのメガネどうしたんだっけ。

読み通り、教官が腕の力をゆるめた。

よし、今のうちに抜け出そうって、え!?

「……お前っ」

引き剥がされた。

びっくりした顔をし、口に手をやる教官。

驚いたのはこっちだって。

脱出は成功したが、まさか向こうからとは予想外。

「……お前は誘っているのか?俺を」

口元に手があり言葉がこもっていて何を言ったか判らない。

私と目を合わすのも嫌なのか、そのままの状態で横を向かれてしまった。

耳まで赤いのでかなりご立腹のようだ。

はぁ、久々に怒るタイプを見たわ。

たまに私の顔を見ると、目まで真っ赤にして怒る人がいるけど、これやられると結構傷つく。

顔は選べないのに。

チラッとユイクル教官を見ると、目があったがすぐに何かを堪えるように目を瞑ってしまった。

うわっ、相当怒らせた。

よし、去ろう。

「ああああの!誰がどう見ても男にしか見えない顔であったとしても、私は女でそれ以上でも以下でもありません!あれ?何言ってんだろ。逆だ。な、なるべくばれないようにしますし、迷惑もかけないつもりです!騎士団入団は本気で考えています。汚れ仕事でも何でも、やろうと思えばできます。経験もあります!ユイクル教官が、次回の審議にどのような回答をされるのか私には図りかねますが、それが私にとってよい答えとなる事を期待します。では、ユイクル教官の質問がそれだけなら、この場を失礼させていただきます!」

敬礼をして、出て行く。

「あ、おい、何を言って……待て!」

いや、待たない。

怒られるって判ってて止まる理由がない。

自分の顔が原因なら尚更だ。

さらば。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ