166.
で、なぜか始まった奇妙なお茶会。
てかよくこんな寒空の下でお茶会なんて出来るな。
と思ったら、なるほど足元を暖かくする工夫がされていた。
椅子が暖い。
「あー、初めまして。レイ=タダノと申します」
レイの時の格好をしているので、偽名を名乗る。
面倒なので名前は省略。
忘れたわけではない。
それからヴォイド、何で自分は関係ないみたいに後ろにさりげなく移動するかな?
何なに?そこにある影に控えてます?
おい、こら、他の護衛と一緒にこっそり隠れてるんじゃない。
自分仕事しています的態度してますけどね、今絶対逃げただろ。
「まあまあ、もしかしてあなたがナリアッテの言っていた人物かしら?」
ナリアッテさーん?
「はっ、その人物が私かどうかは判断いたしかねますが、確かにナリアッテは自分の知り合いです」
そういえば、以前王族の誰かに教えたみたいなこと言っていたか。
「そう堅苦しくなさらないで。私、ル・レイ会の事を以前から聞き及んでいますのよ?あなたに会えるのをとっても楽しみにしておりましたの。願いが叶いましたわね」
は、ははは。
ル・レイ会の単語、久々に聞いたかもしれない。
すっかり忘れていた。
「皆様、ル・レイ会はご存知かしら?」
「まぁ、姫様、もしかしてこの方が?」
「あの、それは一体?」
よく知らない人のためにこの茶会の中心人物、推定ロイミオ王女殿下が詳しく解説していた。
うわー、本人目の前で詳細語るのはよしてくれ。
穴があったら入りたい。
皆話に夢中になっているし、このままフェイドアウトしようかな?
ものすごく今ヴォイドが羨しい。
「……ということですの。ですわよね?」
いや、話聞いてなかった。
むしろ同意を求めないで。
「はぁ」
取り敢えず生返事だが返しておく。
「まぁ、何だか楽しそうですわ」
おもちゃにされそうな気配がひしひしと。
中には野蛮なという声も聞こえたが、その感覚が恐らく普通なのだと思います。
はい。
「そう、なので私も全力で支援をするつもりでいてよ、レイ」
「はいぃ?あ、いえ、失礼いたしました。大変名誉なお言葉でございます?」
そんな恐れおおい。
むしろ全力じゃなくていいです。
厄介ごとが舞い込む気配が近づいてきたような気がする。
「まぁ、いつもナリアッテとお話しするような言葉遣いでかまいませんのよ?常々彼女の話を聞くたびに私ナリアッテがうらやましくて」
「はぁ」
「あら、いい事思いつきましたわ」
顔が引きつりそうになる。
誰でもいい、助けてくれ。
取り巻きに助けを求めたが、皆彫像のように固まっている。
援護は期待できない。
ヴォイド!今だ。いまこそ君の助けが必要だ。
「ふふふふふ。これは1度会員の皆様を集めなければ……」
うわぁ、何か言いはじめた。
「ご歓談中失礼いたします。レイ様はまだ体の傷が癒えておりませんゆえ、そろそろお暇を……」
ヴォイド、ナイス。
「まぁ、大変。それはいけないわ。このような所に長くとどめてしまって。お体大事にしてね。あなただけの物ではないのですから」
あなただけの物ではないって……
ひぃ。
「あ、ありがたきお言葉。それでは御前失礼いたします。皆様もどうかこの後もお楽しみください」
もっと周りに絡まれるかと思ったけれど皆大人しかった。
王女が暴走気味なのが気がかりだが。
怪我のこと理解しているようなので無理難題は言ってこないだろう。
多分。