159.
飲み会後の完徹で、今日はバッドコンディションだ。
どうせ勝てたりする相手ではないので、やる気も出ない。
ユイクル教官が相手だという事が一番の原因ではあるだろうが。
それに、試験会場に着いてからというものずっとがん見されてる。
思わず視線そらしてしまった。
監視か?
「どうかされましたか?」
ヴォイドが訝しげだ。
「あ、いや、なんていうか、ユイクル教官の視線がやばくて」
こう執拗な感じ?
ここまで来ると、気のせいではないな。
「先程から、睨んできてますね」
「ああ。今日の対戦相手だからかな」
なんとなく憂鬱だ。
またお酒が飲みたくなってきた。
こっそり、担当教官の所へ行って飲んでこようか?
「なんだって!?」
あれ?
なぜ驚く。
私その事昨日に言わなかったっけ?
いささか酔いも回っていたので、言い忘れていたかもしれない。
記憶が少し曖昧だ。
「待ってください。今日は確か3対3での試合ではなかったですか!?」
「そのはずなんだけど、どうやら私が余ったらしい。人数的に」
「だったら、リプファーグのやろ……彼が相手をすればいい。帰ってきたのは同じはずだ」
ヴォイド、そろそろ私に対して敬語をやめてもいいころだと思う。
たまに口悪いのはもう知ってるし。
そこら辺りはどう思ってるんだろう。
「その件、リプファーグ自身も提案していたけど、担当教官に却下されたんだよ。どうもユイクル教官から直々に指名が来たらしい。さしで勝負しろだとさ」
「そんな!フェアじゃない!あのユイクル教官、相当場数踏んでますよ!?」
確かにある意味フェアじゃないな。
怪我だけはしないよう立ち回るのが、目標だ。
それはいつでも変わらない。
行軍訓練では失敗したけど。
あ、今朝包帯換えるのを忘れてた。
昨日風呂入った時のまんまだ。
怪我はほぼ治ってるし、頻繁に換えなくても大丈夫か。
多分。
「まぁ、どうにかするよ」
負けても下手うつわけにはいけないしな。
何しろ合格かかってる。
そこそこ頑張ろう。
やる気を錆びた奥の引き出しから、引っ張り出さないといけないな。
「……気をつけてください。ただでさえ昨日まで大変な目にあって、さらに徹夜しているのに。どうせ私が止めても、貴女はやるつもりなのでしょう?」
解ってるじゃないか。
その通りだ。
「まぁ、順番はラストらしいのでしばらく寝てるわ」
「そうですか。分りました」
「あ、皆の試合は見たいから、順番回ってきたら起こしてほしい」
「では、それまでお休みください。時間が来れば起こしますので」
程なくして、ちょうどいい壁にもたれかかり眠りに入る。
座り心地はよくないが、壁があるだけましだろう。
そう言えば、最後まで起きていたジェイとクィリムは無事だろうか。
今日はまだ見ていないな。
リプファーグも昨日かなり飲んでたけど……
潰れていなければいいが。
眠り初めてからどれ位経ったか判らないけど、すぐ近くに感じる人の気配に目が覚めた。
うー、もう少し寝たかった。