158.
「あー!こんな所にいたー!」
この声はジェイか?
振り返ると、いつものメンバーがそこにいた。
「アレッ、レイ!ご無事ですか!?」
皆、元気そうで何より。
すごく気が抜けた。
うん、いつも通り。
平常運転。
「お怪我はありませんか!?あいつはどこです!?本当に無事でよかった」
ヴォイドが怪我のチェックを始めた。
いやいや、服着てるから判らないでしょ。
「本当だよ。皆すごく心配したんだからな」
ジェイが珍しく真面目な顔をしている。
これは、本気で心配かけたような。
皆の雰囲気が、いつもと違うことは流石の私でも気づく。
段々と申し訳ない気になってきた。
「あー、その、皆に心配かけてしまった。こうして無事に戻って来る事ができました。皆、ただいま」
「ああ。お帰り。無事な様子が見れてほっとした」
「ウィルも。無事なようでよかった。皆も元気そうでほっとしたよ。また会えて嬉しい」
また会えて本当によかった。
正直、洞窟に落ちた時はどうなるかと思ったから。
気絶した時は、死んだとも思ったし。
「あ、なぁ、そろそろ戻らねぇ?帰ってゆっくり話そうぜ」
クィリムがそう提案してきた。
「そうそう、レイに話したい事がいっぱいあるんだ。もうヴォイドとかすご」
「ジェイ、話す内容には気を配るべきだと前にも忠告したはずだが」
ウィルがジェイにアイコンタクトをしている。
視線の先をたどるとヴォイドが、って怖いよ。
ヴォイドは何を怒ってるんだ?
「え?ウィル?あー、あはは、何でもありませんです、はい」
ヴォイドの視線に気づいたのか、ジェイが前言を取り消しにかかった。
努力は報われたようだ。
「そうだね。そろそろ戻ろうか。流石に疲れたわ。ゆっくりしたいし、それに明日は試験だろう?」
「うあー、そうだった。休日よ、さらば」
クィリムが絶望感を潜ませて呟いている。
「あー、談笑中悪いんだが」
声をしたほうを向くと、教官がリプファーグを伴って、いや、担いで立っていた。
いやいや穀物袋じゃないんだから、その持ち方はおかしいだろう。
「お前ら暇だったら、こいつを部屋まで持って行ってくれ。って、レイお前まだいたのか」
後よろしくと言って出てきた手前、少し気まずい。
無意識に頬を掻いてしまった。
それにしても、完全にリプファーグは荷物扱いだな。
「俺は眠い。もう寝るから、こいつを頼むわ。お前らもさっさと帰って寝ろよ、じゃあな」
言うだけ言って、リプファーグをかなり乱暴に下ろす。
今、痛そうな音がなったんだが大丈夫だっただろうか?
かなり酔っているらしく、起きる気配がない。
さて、一旦帰るとしますか。
リプファーグを運ぶ為に近づく。
「あ、俺がやりますよ」
「ヴォイドありがとう。それじゃあ、片方の腕持ってくれると助かる」
「いや、これ位なら俺1人でも十分です」
「見かけによらず、リプファーグって結構重いんだよね。寝てたらなおさら。片側は持つよ」
リプファーグの片腕を抱える。
起きる気配ないなぁ。
相当きてるらしい。
明日は絶対二日酔いだろうなぁ。
「レイ、君は帰って来たばかりで疲れているだろう。私が替わろう」
ウィルがありがたい申し出をしてくれた。
少し酔ってはいるので、あまり足に自信がない。
「悪いな、ウィル。じゃあ、任せるよ」
リプファーグの腕をウィルに明け渡す。
「ああ、任せてくれ。ヴォイド、部屋まで運ぼう」
「ああ、分かった」
そうして自室へと戻る事になった。
非常にリプファーグの扱いがかわいそうな運び方だったのが気になったが、本人気づいていないので見なかったことにしよう。
部屋に帰還後は、これまでの出来事を全て話す羽目になったのは言うまでもない。
夜明けまで。
ジェイ、クィリム恨むぞ。
試験落ちたらどうしよう。