156.
クルフォドゥミさんに案内してもらい、小さな部屋で待機する。
それほど待たずに、先程の騎士が入ってくる。
「確認した所、1名と聞いているのだが、なぜ2名もいるんだ?」
2名?
数え間違いか?
「現段階では確認しようがないな。まぁいい、命令通り城まで送るか」
とと、このままだと城へ連れて帰られそうだな。
その前に報告だけはしておこう。
「あの、よろしいでしょうか」
「ん?なんだ?」
「はっ。私はレイ=タダノと申しまして、こちらはリプファーグ。実はお伝えしたいことがあります」
「ああ、まだ名乗ってなかったな。俺はジュハフィーグ治安維持隊のセジャンウィヌプだ。で?」
セジャンウィヌプさんに続きを促される。
名前、長いな。
「はっ。実は先程、隊服のエンブレムが盗まれました」
続きを促されたので、そのまま話す。
「ユイオルン・ヴェフォミージャという酒場の前でのことです。店主とその地元客に話を伺ったところ、ケイオエルジュという人物の小飼が関わっているだろうと」
「そうか……分かった。その件に関しては、こちらですでに動きはじめており現在調査中である。エンブレムに関しては、帰城後担当教官に話せばもらえるだろう」
その事を聞いて、リプファーグはほっとしたようだ。
セジャンウィヌプさんの話しぶりでは、既に捜査は始まっているようだ。
ならば、これ以上何もする事はないな。
帰って隊長辺りに報告しておけば、もれはないだろう。
よし。
「ありがとうございます」
「ふむ、レイとリプファーグとかいったか。2人は騎乗できるか?」
「はっ。経験はあります」
「リプファーグ、お前は?」
「私も出来ます」
「そうか、なら問題ないな。早駆けも出来るか?」
私とリプファーグが頷く。
「そろそろ準備が出来るころだな、今より帰城する」
一旦小屋より出ると、すでに馬が用意されていた。
あれ?
一頭足りない。
「おい、足りないぞ。どういうことだ?」
「はっ。現在2頭が王都に。返却予定は明日になっております」
「ああ、そうだったな。よし。レイお前は俺と乗れ、リプファーグはそっちに乗ってくれ」
「了解しました」
それから一路王都に向け出発。
2時間あまりで、王都に着いた。
なんだかんだで夕方だ。
今日中にたどり着けるとは思っていなかったけど。
今回の訓練は非常に長く感じた。
体感的に2ヶ月くらい留守にしてた感じがする。
やはり、慣れた所は落ち着くなぁ。
それにしても、リプファーグはどうやらあまり乗馬は好きではないらしい。
始終顔がこわばっていた。
好きそうなのに意外だ。
「1度フィンオイア教官長の所へ行く」
城に到着早々、教官長の元へ行く事になった。
帰城報告か何かだろうか。
それから、セジャンウィヌプさんとリプファーグの私を見る視線が何だか精神的にきつい。
何か文句があるなら言えってば。
鬱陶しいので見返すと反らされるし。
何なんだよ。
はっきり言え。
疲れているので気がたっています。
ええ。
夕方なので、騎士団宿舎にある教官部屋へと向かう。
訓練とか、最終試験とか今どうなってるんだろう。
「ジュハフィーグ治安維持隊のセジャンウィヌプです。行方不明だった2名を連れて参りました」
「入れ」
「失礼します」
セジャンウィヌプさんの後に続き、敬礼をして中へと入る。
中に入ると、何故これほど遅くなったのか説明を求められた。
事の経緯を順を追って説明し、最後に迷惑をかけた事を謝罪しておく。
「そうか。その件については災難だったな。無事で何よりだった。疲れているだろうが、明日最終試験が行われる。明日朝定刻通り始まるので、今日は早めに休むように。セジャンウィヌプ、君は残れ。2人は帰っていい」
帰還許可が出たので、敬礼をして部屋を出た。
これで休める。