151.
目が覚めて時計をまず見る。
今日は晴れているのか辺りが明るい。
もうそれだけでいつも起きている時間とは違うことが解る。
時計を見るとやはり朝の8時を過ぎていた。
ここまで寝過ごすのは珍しい。
体を起こすと、リプファーグと目が合う。
ここ数日の疲れが顔に出ている。
少し休んだほうがいいだろう。
食料の問題は解決してるので、多少遅くなったとしても何ら影響はないな。
よし。
「おはようございます、リプファーグ」
「あ、ああ。起きたのか。おはよう」
やはり、見張りで疲れたのか、はたまた洞窟内での疲れがどっと出てきたのか、視点が今一定まっていないように見える。
本当に大丈夫か?
「申し訳ありません。寝過ごしてしまいました。見張りをありがとうございました。えーと、朝食はまだ、ですよね?」
私の問いに首肯する。
「でしたら、今から朝食を作ります。ですが、食べられそうですか?」
「いや、大丈夫だ」
大丈夫そうには見えないくらい、疲労がたまっている顔をしているが。
「解りました。それでは、今から作りますので、食べ終わりましたら一旦寝てください。疲れた顔をしています」
「しかし、急ぐ必要があるのではないか?」
「いえ、不慣れな森の中で疲労した状態で歩き続けるのは、実にリス、じゃなかった、危険度が増します。1度仮眠をとり、少しでも疲労をとるよう努めてください。一眠りした後、出発しましょう」
連日究極の状態で過ごしたからなぁ。
このまま強行軍で行くよりかは、4・5時間寝てもらって昼から動いたほうがよさそうだ。
「ああ、解った。そうしよう」
それから朝食を適当に作り、仮眠を取ってもらうことにした。
リプファーグが寝ている間に、汚れた包帯やらの洗い物をする。
晴れているし、ちょうど日向もある。
あそこに干せば、4時間程度で乾くだろう。
傷の消毒をしたいところだが、薬は今品切れ中だ。
座学で習った薬草類が生えていないか、辺りを散策し見つけにかかる。
が、そうは問屋は下ろさなかった。
根気よく探しはしたものの、結局見つからずに諦める事にした。
代わりに食用の草が大量に生えていたので、それを持ち帰る。
これで野菜不足は解消できるだろうか?
もう、ビタミンとかいろいろ枯渇しているからね。
肌に悪いわ。
時間が来たのでリプファーグを起こし、先程確認しておいた方角に向かって進む事にした。
皆と別れてかなり経過している。
ヴォイド達はもう森を抜けているだろう。
とりあえず、貿易都市を目指そう。
リプファーグを起こし、行軍準備を整え1時頃に出発した。
ここの森にはあまり襲い掛かるような動物はいないのか、あの肉のおいしいと言われている獣しか今のところ遭遇していない。
よく寝たせいなのか、リプファーグの動きもよかったし、動物に襲われることもなく、スムーズに進みその日を無事終えることができた。
1日過ぎ、2日過ぎ、そろそろ肉にも飽きてきた頃、森の様子が少し違うことに気付いた。
何が違うといわれても困るが、なんというか雑然としていた森の中に、人の手がいろいろ入っていそうなあたりに来た。
という事は、そろそろ出口か?
「森の雰囲気が変わりましたね」
「ああ、そうだな」
疲れているのか、リプファーグはここ2・3日口数が少ない。
もし森を抜けることができれば、精神的にも楽になるはずだ。
人の手のはいったこの場所が、少しでも彼の気分をましにしてくれればいいが。
しばらく歩いたところには、道もできていた。
おあつらえ向きに西へと延びているようだ。
「この道をたどります。ちょうど西向きのようですし。うまくいけば街道へと出られるかもしれません」
「ああ、そうだな」
道をたどると、街道ではなく村についた。
村の人たちに事情を説明し交渉した結果、空き小屋での宿泊が可能になった。
貿易都市までの道を聞いておく。
ここからだと、一本道で歩いても半日もかからないそうだ。
リプファーグと打ち合わせをして、朝早くにこの村を出発し貿易都市へと向かう事になった。
次の日出発して歩き続けたが、村人たちの言う通り貿易都市まで半日しかからなかった。
行軍訓練開始からゆうに10日経っていた。