149.
「レイ、少しいいか?」
「もちろんです」
表情を改めて、リプファーグの次の言葉を待つ。
「君に対する私の今までの行いについて、謝罪したい。その、すまなかった」
貴族が頭下げて謝罪すると言うのは、ここの常識から言って凄いことなのではないだろうか?
それほど気にしてなかった出来事に頭を下げられると、対応というか反応に困るな。
「許すも許さないも、そもそもあまり気にはしていませんでしたから」
ただ訓練時のあのやけくそ具合は、いただけなかった。
もし謝罪を受けるとすれば、それに対してかな。
「しかし、私は今までずっと君に辛く当たり続けてきた。嫌な思いをさせた」
この数日何度か死にそうな目に遭っていたので、リプファーグの中で何か考え方が変わったのかもしれない。
よくある話だ。
だがまあ、一皮剥けたようで何より。
「確かに始めの頃はうざ……いえ、嫌な感じはしましたが、初めだけでしたし。私は気にしていません。リプファーグ貴方も気にしないで下さい」
私の言葉にリプファーグはほっとした顔をしたかと思うと、すぐに緊張した面持ちになった。
どうやら、今置かれている状況に気づいたみたいだ。
さて、どうしようか。
「その、そうか。許してもらえて良かったよ。ところで、話は変わるのだが」
リプファーグに何か考えがあるのかもしれない。
次の言葉を待つ。
「先日にレイ、君をその、もらい受けるという話をしたが、もう一度、いや、改めて申し込みたい。考え直してくれないか?」
「はい!?」
その話は白紙になっていたはずでは、ってそうじゃない。
なぜ今その話か!?
そんな事より考える事があるって。
「そうか!それは良かっ」
「肉が来ます!」
「は?肉?」
いつの間にか、近づいてきていた良質な肉……ではなく肉食獣達が、どうやらこちらに仕掛けるつもりのようだ。
先程から様子を伺っていたらしい。
洞窟に落ちる前に仕留めたものと同じ獣で、今回はハグレではなく集団でお出ましだ。
合計6。
雨が降っているとはいえ、私の血の臭いに誘われたか。
すぐにナイフを鞘から抜き、なるべく足場のいい方に移動する。
ようやく状況を把握したのか、リプファーグが自分の剣を構える。
崖を背にしたので、暫く背後は気にしなくていい。
痺れを切らしたのか、1体目がリプファーグ目掛けて飛びかかっていった。
リプファーグが上手くいなしているのが見える。
こちらの3体は、逆に全く動かない。
ふむ、どうやらチームリーダーは今目の前にいる真ん中の獣らしい。
先に殺らないとまずい。
そう上手くはいかないか。
暫くにらみ合いが続く。
隙を読んだのか二体同時に飛びかかってきた。
まず雑魚だと思われる方に蹴りを鼻面にあて隙を作り、その間にリーダーの頸動脈にナイフを突き立てる。
浅い上に外した。
残りのもう一体が、向かって来るのでナイフを抜き取りそのまま振り回し牽制する。
間を置かずリーダーに向かおうとしたが、雑魚が噛みつこうとしてきたので先に対処する。
噛みつくタイミングに合わせ、顎に拳をいれる。
雑魚が意識を飛ばしている隙に、リーダーにしたようにナイフを突き立てる。
絶命。
向かって来ていた残りの雑魚とリーダーが飛びかかってきた。
地面を転がりかわす。
焚き火の側で乾かしてあったお玉もどきでリーダーの顔面を殴り付け、雑魚の腹をナイフで刺す。
くっ、ナイフが抜けない。
ナイフは諦め、そのまま離脱を図る。
ついでに石も拾う。
風が西向きに吹き付けている。
次第に強くなってきているようだ。
リーダーが再度向かってくる。
手負いの癖に、動きは俊敏だ。
ナイフを構えて……って持ってない。
お玉を構えて、迎え撃つ。
お玉もどきに先程転がった際に拾っておいた石をセットし、リーダーに向かって全力で投石する。
風上に立っていたので、なかなか良い勢いで飛んでいく。
風に乗れば、たかが石でもかなりな勢いになる。
雑魚が引っくり返って動かなくなった。
リーダーには避けられた。
くそっ。
リーダーが投石によって倒れた仲間の様子に、慎重な動きを見せ始めた。
手持ちはお玉もどき。
石はもうない。
え?
結構ピンチ?