146.
やっと見つけた外への穴が絶壁とか泣けてくる。
しかも他には出口が無い。
ザイルもロープも今は無い。
これは、進退窮まったか。
一旦戻るという選択肢はもうない。
食料が尽きるからだ。
「これは、降りられないんじゃないか。どうすればいいんだ」
うーん、今それを考え中。
生き残ったタフなルミノックスの時計で大体の方角を割り出す。
今日は曇りで太陽が霞んで見える。
かろうじて見えてて良かった。
南西は右手か。
結構森は続くらしい。
この位置から地面まで目測34mの距離がある。
と言う事は、今見えてる範囲が1450~1500k㎡で見通し距離がおよそ22km。
森を抜けるのには、まだまだ時間がかかるか。
と言う事は、途中食料の確保がいる。
この間みたいに上手く、何かを仕留められればいいが。
後、食用植物だな。
って、教科書無い。
うわ~、これは痛いな。
初見で見分けろとか、結構難易度高いし。
一応覚えたのもあるけど、毒薬の作り方とかで。
覚えたのが毒草ってのも、まずいな。
そうだ、今は下に降りる方法を考えなくては。
下を見ると、岩肌が剥き出しの垂直絶壁絶体絶命。
リプファーグにとってはだが。
途中休憩できそうな窪みも無いしなぁ。
左手にあるあの岩の出っ張りの向こう側には、何かあるかもしれないが……
ん?
左手下方から水の音が聞こえる事に気づいた。
洞窟の中から反響して聞こえて来たのかと思ったが、どうやらどこかから地下水が外へと流れ出ている音らしい。
穴から体を乗り出して左側をよく見る。
岩の出っ張りで見えなかった向こう側から、水が流れ落ちているのが見えた。
確認してみるか。
背負っていた荷物をリプファーグに預ける。
「何を」
体をさらに乗り出し、ボルダリングを開始する。
「おい!?何を考えているんだ!戻れ」
でもなぁ、戻れないんじゃ進むしかないわけで、その為には色々確認しないといけない。
「あー、大丈夫です。慣れてますので、どうか安心して下さい。私が戻るまで安全な場所に居て下さい」
「安心って何を、おい行くな」
結構岩に凹凸があるので、足場には苦労しない。
先程見えた岩の出っ張り部分に、すぐにたどり着く事が出来た。
そこから下を見下ろす。
32mか。
壁面から水が滝のように流れていて、下に滝壺が出来てるようだ。
水深は、結構あるな。
飛び込むか?
リプファーグが岩下りを続けるよりはましか?
こちら側には亀裂は見当たらないから、この水の出口から洞窟へと戻っても再度出口を探さないといけない。
洞窟内には食用と思われる生物がいなかったので、幸運に恵まれ出口があったとしてもその時には餓死寸前だろう。
これは、飛び込んだ方がいいな。
ここに滝壺があったのはついている。
さて、ではリプファーグにここまで来てもらわないといけないわけだが。
取り敢えず、戻るか。
「無事だったか。岩壁に張り付いてそのまま進み始めたときは、ひやひやしたが、無事だったのならいい」
「あれは、人ができる動きではない。だとか、なんとか言っているところ悪いのですが、それを今からやっていただきます」
「……え?」
リプファーグが固まった。
「やっていただきます」
「え?」
二度聞き返されても、やっていただきます。
餓死か飛び降りかしか残ってませんから、ええ。