141.
「え?」
後頭部を打ちつけて目がちかちかしていた所に、容赦なく服をまくられる。
「ちょっと!?」
思わず服をフリーになった片手で押さえつけるが、怪我状態の今の力では敵わずあっさりまくられてしまった。
「……」
「……」
もう、ね。
視線がどこにあるかとか、色々判る。
判るんだけど、どう反応すればいいのか。
キャーとか言って恥じらう年齢は過ぎた。
かと言って、怒りだす程胸は大きくない。
こういう場合、世の女性達はどうしてるんだろうか。
サラシが緩みまくって完全に前が見えてる状態なので、性別を隠すもなにも丸わかりだし、さてどうしたものか。
あ、そうだ胸隠さなきゃ。
今更だけど。
まぁ、一応形式美。
「リプファーグ、その」
取り敢えず、説明はいるだろう。
どうやってすればいいのか。
参った。
「あの、リプファーグ?」
反応が無い。
おかしいな。
「あ、ああ。クスリ。そうだ薬を塗らなければ」
再起動したかと思ったら、いきなり俯せにされる。
お願いだから、声をかけて。
思わずカエルのつぶれた様な声を出してしまった。
洞窟だからかエコーつきだ。
どうやら、薬を塗り替えるために俯せにしたようだ。
濡らした布で丁寧に傷口の塗り薬を拭いてくれている。
「あっ」
そこはヤバい。
くすぐったい。
って、脇は無理!
弱点なんだって。
思わず身悶えしてしまう。
こんな年で叫ぶのも、あれなので我慢。
痛いし、くすぐったいし、頭が変になりそうだ。
「お、おい、痛むのか?」
い、痛むけど、それより脇腹がぁ。
ちょっと涙でそう。
「もう少しで終わるから、我慢してくれ」
もう我慢するのに必死です、色々。
自分の気を逸らせば耐えれるか。
羊が1匹羊が2匹って、それはなんか違う。
頭が混乱してきた。
「ひゃっ、あっ」
冷た。
今度は新しく薬を塗られている模様。
薬がかなり冷えてて、背中に塗られる度に冷たい感触がする。
も、もう早く終わって。
ひぃ、冷たい、くすぐったい、痛いの波状攻撃。
完敗です。
「もうすぐだ。もう少しだけ耐えてほしい」
と言われたものの、恐らくリプファーグは包帯を巻くのは苦手とみた。
包帯を巻きはじめてから5分以上かかっている。
さっきから寒くて震えが止まらない。
段々と気温が下がっているようだ。
「ごめん、限界。は、はやく」
マジで寒い。
歯と歯がカチカチと鳴りはじめた。
実は自分でやった方が早いんではなかろうか。
思わず、止めてしまった。
「きついか?」
首を振る。
「だ、大丈夫。あの」
体を起こす。
貧血の様なめまいが来る。
「え?」
「あの、自分でや、やります」
もう駄目、寒すぎ限界。
そこから体を起して奪い取る様に包帯をとって、自分でまいた。
ついでに寒いのでサラシもまいておく。
その後すぐに服を着て落ち着く。
リプファーグが呆気にとられたのか先程の体制のまま固まっている。
火種がとんでもない事になっているので、先程目星を付けていた木くずを取りに行こうとするとリプファーグに怒られた。
取って来てくれるらしい。
ああ、火が戻った。
只今解凍中。
少し寒さが落ち着いたころ、ぼそりと声が聞こえた。
「やはり、その、女性だったんだな」