140.
うーむ、とうとうバレたか。
こればかりは、怪我をして気絶をしてしまった私が悪い。
リプファーグは親切心で手当てをしてくれたんだろうし、その過程でバレてしまったのなら仕方が無いとは思う。
バレていなければ、それに越した事はないんだけど。
いや、ありえるか?
ここは暗いし、横になるとますます胸の大きさは男と変わらない。
男だと思い込んでるなら、ひょっとするとひょっとするかもしれない。
ウィルや団長みたいな例もあるわけだし、無いとも言い切れないわけだ。
だったら男と言い張っておけばそのうち再洗脳されて、なんて都合のいい話があるわけもなく、服を脱がして手当てをしたのなら、否が応でも目につくものだしバレているだろう。
となると、どうやって口止めするかという話になるわけで。
リプファーグは元々私を追い出したがっていたから、今回の事は彼にとって格好の口実になるわけだ。
で、そうなると自然な流れとして、団長か副団長に直訴しようとするだろう。
もし、副団長に話がいくなら、何とか手を打ってもらえる可能性も期待できる。
が、団長に話を持っていかれたら終わり、でもないのか?
剣を合わせたり女装した時に会ったりしてもいまだに男だと思い込んでる団長なら、話がいっても一笑に付してしまう可能性もあるな。
例え、リプファーグの言い分を信じたとしても、思い切り楽しみそうだ。
王の息子だしな、団長。
逆に困るのは、教官達に話をされる事だろう。
これは大問題だーとか言って大騒ぎされて、諮問会にかけられ軍法会議でやり玉にあげられた挙句に不名誉除隊決定。
うーん、次の転職先を貿易都市に着いたら探した方がいいのかな?
不名誉除隊とかなったら、職あるんだろうか……
いや、待てよ。
まだ本入隊終わってないから、明日から来なくていいよって普通に言われるのか。
まぁ、どちらにせよクビはクビ。
腰を据えて生活をするために、まともな職さがさなきゃ。
と次の転職先の事まで考えていたら、目の前にリプファーグの顔があった。
うおっ。
「やはり、痛むのではないか?薬を塗り直そう」
荷物の中から薬らしき入れ物を取り出す、リプファーグ。
それから、私の服に手を伸ばそうとしている。
ん?
その一連の流れに何の躊躇も無い。
え?
このままいったら、マジで私の服脱がされる?
まさか、女だって気付いてない、とか?
それはそれで、いろいろ複雑。
ではなく、気付いてないとかの以前にピンチだ。
それにしても、この躊躇の無さは何だ?
女慣れしているから、脱がすのに抵抗ないとか?
どうも、女慣れしているようには見えないけどなぁ。
気付いているのか、気付いていないのか……
どっちだ。
「い、いや。全然痛くないですから。大丈夫ですから。薬とか本当に結構ですから」
最大限の大丈夫アピールを必死にする。
いっ。
痛い……
やりすぎた。
「しかし、傷をそのままにしておくのは良くない。定期的に塗り替えた方がよいとも聞いているし」
「いやいやいやいや。本当にっ、大丈夫ですから、お構いなく!ほら、この通り、体も起こせますし」
体を起こして、更にアピール。
最悪どうしても塗るというのなら、自分でやろう。
「な、君はばかか!?傷がそれ以上ひどくなったらどうする。いいから大人しくしていろ」
両肩を押さえつけられて、倒されると同時に後頭部をひどく打ちつける。
「だっ」
ウォー、痛い。
頭が痛いぞ。
正直、傷よりこっちの方が痛い。
涙が出てきた。
リプファーグ、両腕を押さえつけないで。
頭が、後頭部が。
「君は……」
焚火に照らされた、リプファーグの顔が赤く揺らめいていた。
横を向くと、火がもうすぐ消えそうになっている。
早く燃やす物を入れないと、火種が。
「と、とにかく薬を塗る」
「え?ちょっと!?」