139.
「すまない。こんな事になるとは」
後悔やらなんやらの感情がない交ぜになった声だった。
その様子からどうも、かなりへこんでいるようだ。
あれは仕方がない。
むしろ生きてて良かったよ。
お互い。
「いえ、不可抗力です。気に病む事はないと思います。それより、今の状況は?」
「君が怪我をしている」
うん、そうだね。
間違ってはいないよ?
確かにそうではあるけれども、実は天然?
天然なの?
「えーと、落ちてから、どれだけ経った?」
「判らないが、恐らく1日は経ってる」
結構長い間気絶していたんだな。
あ、火が消えかけてる。
そう言えば、ウィルは火を起こすのにえらく苦労をしていた。
リプファーグも、一人で起こすのは大変だったのだろうか。
四苦八苦している姿を想像してしまい、少し可笑しくなってきた。
「もしかして、寒いのか?」
リプファーグが何か勘違いをしているようだ。
「いえぇー?!」
違うと否定しようとしたら、突然の浮遊感を感じて微妙な声をあげてしまった。
「痛むのか!?」
違うって。
確かに痛みはするが、慣れているので問題ない。
それより、いきなり抱きあげるからびっくりしたんだってば。
頼むから、声をかけて。
「いえ、大丈夫です」
「そうか」
先程の場所より焚火の近くに下ろされる。
温かい。
どうやら、かなり体が冷え切っていたようだ。
自覚した途端、急に寒さを感じる。
落ちた時に水にも浸かっていたので、体温がそうとう奪われていたみたいだ。
もうすぐ消えそうな火、もう少し大きくならないかなと見ていたら、毛布をかけてくれた。
意外と気が利く?
「少し、聞きたいことがある」
何だろう?
焚火を挟んだ向こう側に座りながら質問をしてくるリプファーグに、先を促す。
「君は、お……いや、何故あの時私を助けた?」
それは単なる職業病だ。
完全に。
言わないけど。
「私は、色々君に言ったり態度も悪かったように思う。なのに何故?いつも側にいる、あの男の言う通り手を離す事も出来たのに」
「そうですね。確かに貴方の態度は、あまり褒められたものとは言えませんね。だからと言って、見捨てていい理由にはならないでしょう?それに、何もせず見ているだけというのは、私の性には合いません。唯一理由をあげるとすれば、その場でできる事があれば状況が許す限り行い、出来ないと判断をした時はすぐに退く、という自分の信条ゆえでしょう」
といっても、今回は完全にへまをしたけど。
地盤が緩んでいた事に気付けなかった。
まがりなりにもペアを組んでいたのなら、もっと気を配るべきだったのだ。
まぁ、何はともあれ幸いな事にリプファーグはピンピンしてる。
この最悪な状況で、それだけが救いだ。
さて、これからどうやって貿易都市ルートに戻るか考えねば。
「おい、大丈夫か?」
私が急に黙ったので、心配したのか声をかけてくる。
「もしかして、かなり痛むのか?先程、傷薬は一応塗っておいたのだが…」
「え?」
「いや、怪我が痛むのではないか?あの薬は効くと聞いていたのだがな」
「あの、貴方が?」
服を脱がした?
「他に誰がいる?」
「あ、いえ。何でもありません。手当をありがとう。傷はそれほど痛みません」
うそ、本当は結構痛む。
慣れてるだけで、痛いものは痛い。
それよりも、リプファーグは服を脱がして私の手当てをしたのだろうか?
それとも、裾をまくっただけで手当てを?
どっちだ?
普通は、服を脱がすよな。
そうだよね。
これは、バレたわ。
バレた。