137.
寝てる間に一度、何とかという動物が襲ってきた。
騒がしかったので起きて狩りの様子を見ていると、どうやらキャンプを張ってる場所から離れた所で見張り隊が仕留めたようだ。
死体を確認しに行くと、座学で習った肉食獣のようだった。
特徴のある動物だったので覚えている。
確か、テキストに面白いメモが書いてあった。
嵩張らない様に持ってきていた、皮紙製座学テキストで確認をとると、やはり書いてあった。
肉は旨いと。
余程の美味なのか、見つけ次第必ず肉を手に入れろと書いてある。
ただし、調理法を間違えると激マズらしい。
残念ながら調理法は書いていなかった。
そこは書いていてほしかったな。
とはいえ、どうやらこれで食料の確保が出来たようだ。
解体作業を見るともなしに見ていると、交代時間が来たのでいつものメンバーとリプファーグ達を起こしに行く。
ジェイとクィリム、ヴォイドやウィルは平気だったが、貴族組は朝に弱いらしい。
まぁ、いつもよりかなり早いからね。
どことなくボーとしていても仕方が無い。
その内目が覚めるだろう。
順番に身支度を済ましてもらい、見張りを行う。
先程の討伐で血を流したため、肉食系の動物が更に来るかもしれないという事で少し警戒をしていたが、何事もなくその日の見張りは終了した。
続けて朝食の準備に取り掛かり、その間にウィルたちに全員を起こしてきてもらう。
今日の朝食は、昨日のスープの残りとパンと水。
昨日のスープはやはり美味しく、結構私は満足だった。
朝食を食べ終わり、火消しをして一路南西へと向う。
やはりというか、ティーセットは置いていくらしい。
中には割れていたりした事もあり、危険だとようやく判断したみたいだ。
気付くの遅いよ。
身軽になったせいか、進むスピードも軽快だ。
今日はかなり進めるのではないだろうか?
と、思っておりましたがトラブルは付き物で、そろそろ一度目の休憩を挟もうかという時にそれが起きた。
地面に隠れて見えなかったのか、穴の様な所にリプファーグがはまったのだ。
そのまま雪崩れてその穴に吸い込まれようとしていた。
咄嗟に手を出し彼の手と腕を掴む。
ぐっと踏ん張った所で、元々の地盤が緩いせいか足元の地面が崩れる。
ヴォイドが私の背中の荷物を掴んだが強度が無く、耐えきれずに片方が千切れた。
「その男を離してください!」
ヴォイドが言う。
仕事人間め。
「悪いけど、それは出来ないよ。ヴォイド、貿易都市で!」
無事だった片方もすぐに千切れ、リプファーグもろとも下に落ちる。
落下する時に、地下水でも流れているのか流水音が反響して聞こえた。
この穴が深いせいか暗くて底が見えず、落下地点に水が流れているかどうかの確認が出来ない。
これは固い地面に、落下する事を想定した方がいい。
すかさずリプファーグを引き寄せ、荷物を無理やり外し自分に背負う。
続けてそのまま背中が下になる様、体を方向転換させる。
背中の荷物が、少しでもクッションになればいいと思うが。
すぐに衝撃が体中を走った。
「かはっ」
下には水が流れてはいたようだが、浅すぎる。
これでは殆ど地面と変わらない。
リプファーグの荷物が、何とかクッションになったが、それと同時に何かが付き出してきてた。
「くっ、どうなった」
リプファーグが私の上から退いた。
ああ、無事そうだ。
よかった。
安堵した途端、私の意識はとぎれた。