130.
写した一覧も、何かしらの作為を感じるし、本当にただの行軍訓練なのだろうか?
ジェイたちも色々不安に思っていたらしく、急遽寄宿舎に帰って皆で作戦会議をする事にした。
「なあなあ、今日のさー、ユイクル教官の説明どう思う?怪しくないか!?絶対何かあるぜ」
ジェイが部屋に入るや否や、口火を切る。
座学が嫌いなのか、終わった途端に元気になるな、ジェイは。
「確かにな。日程と場所の説明が一切無かったしな」
ウィルも思案顔だ。
きっとこの件について、何か考えているのだろう。
「どこに何日間行くかによって、装備を変える必要があるしね。そういう情報が無いというのは、どこか作為的な感じがする。今ある情報を皆で一旦整理しない?」
私の言葉に、一同頷く。
「まず、持っていく物一覧の、照らし合わせからした方がいいな」
ウィルのその言葉で、各自メモしたものを取り出す。
私が取り出したメモを見て、なぜか皆目を丸くしていた。
あれ?
なんか反応がおかしい?
「…。なぁ、それ、俺読めねぇよ」
「異国の文字にしても、見たことがないな」
私のメモを、ためつすがめつするジェイとウィルの2人。
そうだった。
英語で書いてたよ、私。
これ見せても、全く意味無いわ。
「ごめん、慌てて母国語で書いてたよ。えーっと、お互いの分を見比べて、抜け部分を各自書き足すって感じでやっていこう」
少し強引だが、話を進める。
「ああ、そうだな」
深く追求してこないのがありがたい。
この2人はとてもいい奴だと思う。
「支給される部分はともかくとして、見た所全員一致しているように思うが」
ヴォイドが素早く全員分を確認してくれたらしい。
その言葉に、皆が頷く。
「今回の行軍訓練において、認識の共有化が必要だと思う。なので、各々の考えを聞いておきたいんだけど」
「考え?」
私の言葉に、ジェイがキョトンとした顔で聞き返してきた。
それに私は頷いた。
「そう。まぁ、すり合わせとも言うけど、ここで意見交換しておいて訓練、最悪の事態になった時に備えておこうと思って」
何かがあってからでは遅いだろうし、安全を確保したうえでのとは限らない。
と言うより、作為的な物を感じているので一筋縄でいく訓練ではないだろう。
慎重にならざるを得ない。
なので、出来るだけ注意深く準備しておきたいのだ。
「最悪の事態か……これ程何も知らされずにいると、持っていく物は慎重に選んだほうがよさそうだな」
ウィルも同意見のようだ。
ヴォイドも頷きで答えてくれた。
「そうだね、先程ウィルも言っていたように、日程及び場所が不明な事。装備一覧に書かれた物品には、やたら無駄が多い事。これらの事だけでも、明後日の訓練は一筋縄ではいかないと思う」
私の言葉に、ジェイが何か閃いた様な顔をした。
「もしかして、持ち物の調査とかされて、不正解な物を持って行ってる奴が減点、とか?」
「ああ、ユイクル教官が持ち物は座学で全部習ったはずだ、などと言っていたしな」
ジェイの言葉に、ウィルが続ける。
「そうだろ?そう思うだろ?絶対そうだって」
ジェイがすごく得意げな顔をしているのを、思わず微笑ましく見てしまった。
持ち物検査だけにしては、目的地や日程が不明なのは不自然かな。
自分の考えも一応伝えてみた。
「つまり、目的地やその道程に何かあると言いたいんだな?」
ウィルの言葉に、私は頷いた。
「その可能性は高いな。罠か仕掛けがあると思う。数日かけての行軍において、日程や目的地の言い忘れなどはまず考えられないからな」
ヴォイドの言葉に皆が頷いた。
騎士団入団前の説明では、仮訓練は約1ヶ月と説明していた。
となると、仮訓練は後10日程で終わる計算になる。
最終試験が何日あるのかは知らないが、明後日から行われる行軍訓練の持ち日数は2~5日程だと私は踏んでいる。
目的地や日程が知らされなかったのは、訓練自体に何がしかの意図があるのはまちがいないだろう。
それが何かは判らないが。
いや、非常に当たってほしくない予想なら1つだけしている。
放置だ。
勝手に戻って来いと、放置されるパターン。
いや、まさかね。
ないない。
と、楽観視していた自分がいました。
現在、どこかの森。
人生2度目の迷子です。
前回投稿ミスって投稿が遅れた事をお詫びします。