127.
正直、昨日の訓練はヤバすぎた。
「おい、何人かづつで分かれて、適当に組になれ。それから全力でもって組ごとでかかって来い」
と、突然教官に言われたので、数人単位に分かれて組を作った。
見た所、4組位に分かれているようだ。
で、こっちのメンバーは何故か隣部屋の4人と組む事に。
なぜこうなる。
組み分けが終わった後、先陣を切った組がかかっていくものの、どうやら間合いが悪すぎて仲間の頭を打つわ、体を打つわ、倒れるわの同士討ちが多発。
これが原因で、隊員の1/3がダウンした。
後発隊は、同士討ちに気を取られ過ぎて、教官の攻撃が見えておらず、その攻撃によりほぼ全員がダウン。
何となく最後の方に残っていた自分達の組は、これらを教訓にし声を出し合うことにした為、同士討ちだけは避けられた。
が、いかんせん教官が強すぎる。
気付くとクィリム・ジェイ、リプファーグがダウンしていた。
残りは隣人2人組とヴォイドとウィルだけになった。
ウィルが善戦するも、結局ダウン。
隣組は複数でのやり取りに慣れているのか、間合いの取り方が非常に上手い。
ヴォイドに至っては、言わずもながだ。
いやぁ、この3人がいれば、楽で良いですわ。
私は後ろでやってるふりだけ。
頑張れ3人。
でもまぁ、結局サボってるのが教官にはばれてるわけで、結局こっちに来るのね。
って、いきなり突きですか!?
ヴォイドが割り込み、防ぎにかかる。
「訓練中だ。邪魔するなよ、アンヴォイド」
「何の事か、解りませんね」
お互い鍔迫り合いで、拮抗している。
その隙を狙って、2人組が連携をして教官に攻撃をする。
無理やり教官が身体を横にずらし、ヴォイドの身体に蹴りを入れ2人組にぶつけようとしていたが、全員それを読んでいた為、教官の思惑には嵌らなかった。
わき腹ががら空きだったので、今の内に気配を消して蹴りを入れてみる。
「っ。お前な、剣術の訓練中なんだから、剣で応戦しろよ」
「教官、ヴォイド、蹴った。だから、いいのかなぁとか」
現在、教官と鍔迫り合い中。
もちろん力負けして、押されまくってます。
当然だけど。
こ、腰が。
「それに、私は剣の扱いが下手だし」
「お前があの試験の時に使ってた奴なら、十分ここでやっていけると思うんだが」
「皆に止められてる」
あ、何か腕がプルプルしてきた。
「あー、忘れてた。まー、今ならいいんじゃないか?あの時は、黙っている方が面白そうだったから、何も言わなかったが。ほら、今はもう誰も見てないだろう?良いじゃないか、少しぐらい。な?やらないか?」
にやりと笑い、半歩前に力を込める教官。
そのかかる力に抗えず、剣が少し滑りバランスを崩して後方へ倒れそうになる。
咄嗟に態勢を取り戻そうとするが、間に合わず身体ごと後ろへと傾ぐ。
反射的に教官の足を払ってしまったが、方向が不味かったらしく教官が私の上に被さるように倒れてきた。
来るであろう衝撃に備えて、受け身の態勢に入ったが衝撃は来なかった。
ヴォイドが私を抱えたからだ。
教官は上手くバランスを取り、態勢をすぐに立て直した。
見事だ。
隙が全くない。
それよりヴォイド、そろそろ下ろしてほしい。
それから、隣組呆けてますが、教官が攻撃態勢はいってますよ。
って、こっちに攻撃かい。
ヴォイドから降りて、即座にに応戦に入る。
「あくまでも使わない気か。仕方が無いな。悪く思うなよ?」
それからは、教官による凄まじい程の集中攻撃だった。
防戦一方だった。
ちょ、なにこれ、いじめ?
絶妙のタイミングで、2人組とヴォイドが教官に攻撃を入れるが、それでもターゲットは変らず、結局逃げる事しかできない。
のらりくらりと躱していたけど、とうとう限界が来て太極剣を使わざるを得なくなった。
使った瞬間の教官の目が、獲物を狙う肉食獣の目をしていて、非常に怖い。
絶対食われる。
それからは、必至で応戦した。
連続による攻撃を身体をずらして躱しながら、2人組が攻撃しやすいように斜め方向に移動。
背後をとった2人組による連携攻撃が功を奏し、教官が態勢を崩す。
ヴォイドがその隙を逃さず横合いから攻撃を加えるが、読んでいたのか躱された。
そこに後ろから突きを入れてみたが、剣ではじかれる。
正面に立った二人組が時間差で攻撃するも、1人は急所をたたかれダウン判定。
もう1人が上手く下がり、教官の攻撃を躱す。
私がすかさず背後から、左横腹目掛けて切り上げるが、飛んで躱された。
丁度着地点付近にヴォイドがいるので、その隙を狙い背後から袈裟切りに、とはいかず教官の剣が真一文字に一線。
危うく当たりそうになったので、大きく後ろへ飛び距離をとる。
ヴォイドと教官が凄まじい攻防を始めた。
隣人と目線を交わし、攻撃の合図を送る。
2人がかりで左右より攻撃したが、教官がヴォイドのバランスを崩させ、その隙に私を回し蹴りし、そうする事で隣人の攻撃を躱していた。
一瞬のことだった。
再度立ち上がろうとした所、ヴォイドが私に気を取られてダウン判定。
そこからはあっという間に、隣人も私もダウン判定されてしまった。
これが午前中の出来事で、午後から引き続き何度も午前中と同じ事をさせられた為、訓練後は屍だらけになっていた。
やはり、複数で攻撃と言うのは、だいぶ疲れる。
昨日の訓練内容を思い出してみて、げんなりした。
今日は違うメニューでありますように。
「よし整列しているな。では、今日は昨日と同じ事をするぞ」
テンションが駄々下がった。