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自称現実主義者の異世界トリップ  作者: GUOREN
現実主義者(自称)は只今基礎訓練中
125/228

125.

教官の話によると、対人訓練はまだ数日続くらしい。

早いところ、次の訓練にはいって欲しいものだ。

もう1対1は嫌だ。

今日の訓練を思い返すと、最後に近づく程リプファーグがあまりにやけくそ気味に打って来るので、私は段々腹が立って来て最後の一撃だけ本気を出してしまった。

少し大人げなかったと反省。

それ以降何故かじーっとこっちを見てくるんだけど、言いたい事があるなら今朝みたいに言ってくれと思う。

どうしよう、ご飯まで時間あるから今から風呂に行きたいんだけど、何故か付いて来てるし。

はー話をしなきゃならんか、やっぱり。

あまり城に入るところを見られたくないし、仕方が無い。

腹をくくるか。

はー。

「えーと、何か?」

ヴォイドに一応合図してから、リプファーグと向かい合った。

「しばらくこの者と話がしたい。貴方は遠慮してもらおう」

無視かよ。

リプファーグが、ヴォイドに去るように言う。

「理由が無いな」

ヴォイドはそれをすげなく断った。

いけすかない相手には、非常にクールだ。

あ、ちょっとリプファーグがビビってる。

「さあレイ、参りましょう。この時期は冷える」

「そ、そちらに理由が無くても、こちらにはあるのだ」

おお、言いきった。

結構根性があるな、リプファーグ。

「まぁいい。おい、レイとやら。お前に聞きたい事がある」

どうやら一旦頭から、ヴォイドを追いやったようだ。

「今日のあの最後の一撃は何だ?答えろ」

何だと聞かれても困る。

どう答えようか。

「レイ、訓練中何かしたんですか?」

ヴォイドが聞いて来る。

「あ、いや、その、なんていうか、魔が差したというか、思わずといか、うっかりというか、大人げ無く血が上ったっていうか?」

口をもごもごさせてヴォイドに言い訳してたら、クスリと笑われた。

う。

笑う事ないじゃん。

「大体事情が判りました。使われたんですね?あれを」

「いや、その1回だけ、1回だけなんだ。一応約束は守るつもりだから」

避けるのに少し使ってるけど、剣術じゃないから大丈夫だよね。

ジェイたちの約束破って無いよ。

多分。

と、心の中で言い訳をしてみる。

「あ、いやそんなにむきにならなくても。別に疑っているわけでは」

「むきになってはいないけど、なんだか言い訳しないといけない気がして」

「何をごちゃごちゃと。先程の質問に早く答えろ、レイとやら」

こちら側で話をしていると、リプファーグが割り込む。

しびれを切らしているようだ。

「何だと言われても……追い詰められれば出てしまう何か、としか言いようがありませんでして」

「何だそれは。答えになっていない」

一刀両断された。

この場合どう答えればいいのだろう?

「逆にお伺いいたしますが、具体的には何をお聞きになりたいのでしょう?一番最後のあれは、火事場の馬鹿力みたいなものなのですが」

困った。

何をどう説明すればいいのか解らない。

「言い方を変えよう。最後の一撃だけは、洗練されていた。お前、本当は剣を扱えるのではないか?昨日と今日、訓練を不本意ながらお前と相手をしたのは、この私だ。相手の力量位は判る。それに、お前の身体には掠り傷一つ付いていまい」

「ああ、それは、リプファーグ……さん、殿、様。うーん、殿?」

思わず首をかしげる。

「それでいいと思いますよ?」

ヴォイドが助け船をする。

「殿が、傷をつけない様に攻撃する、器用な方だからなのでは?」

「はぐらかすな!」

褒めたのに。

「貴方の言う"扱う"が、どの程度の事を指すのか私には解りかねますが、恐らく貴方の考えておられる領域には、現実問題全然至っていないと思います。正直、基礎訓練ですらまともにこなせませんでしたし」

「くっ、あくまで答えない気か」

うあー、回答間違えたみたいだ。

怒らせた気がする。

どうしよう。

「と、とりあえずですね、私は攻撃されれば避けますし、反撃もしますが、それは剣主体の物ではないのですよ」

もう必死です。

「どちらかというと、剣の扱いは不慣れで、道端の砂やら石やら木やら棒やら拳やら蹴りやらで応戦する方が得意というか、まぁ要するに逃げる方が得意というか、避ける専門というか」

テンパると説明にならないのは、なぜだろう。

「解ってくれますよね!?」

思わずリプファーグの両肩を掴んで身体をゆすってしまった。

「わ……解った解ったから離せ」

リプファーグが両腕をどんっと前にやって、私を遠ざける。

危うくバランスを崩しそうだったが、ヴォイドが肩を支えてくれた。

ヴォイドに向きなおって礼を言う。

あれ?

何だか気温がグッと下がってきたような……

冬だなぁ。

「……な!?」

リプファーグが声を出したので見ると、両手を見ていた。

霜焼け?

豆でもつぶれたのかな?

「と、ともかく話はこれだけだ!」

私と目が合った途端、それだけ言い残して走って去って行った。

朝も言いたい事だけ言って去って行ったが、今回もか。

そういう性格なのかもしれない。

晴れて解放されて、やっと風呂に行けた。

ナリアッテが出迎えてくれる。

和むわ。

癒される。

「お疲れの様ですね、ごゆっくりお入り下さい」

1日の楽しみのお風呂。

これの為に頑張った。

って、あれ?

さらし取れてら。

今日巻くの緩かったのかも。

って言っても誰も気づかない位、胸無いけど。

さて、入ろ入ろ。

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