121.
「げっ、リプファーグ」
クィリムが、嫌そうな声を上げたのでそちらを向くと、三人組が立っていた。
どこかで見たなと思ったら、寄宿舎ですれ違う度に嫌な顔をしてくる人達だ。
それに、声もつい最近聞いたかもしれない。
どこでだっけ?
うーん。
思い出せない。
「ふん。ウィロアイドもそんな者達と共にいるとは、ケナンヴェマの名も泣くな」
「何!?」
どうやらこのリプファーグという男、一言も二言も多いらしい。
ウィルがみるみる不機嫌になっていく。
先程まで茅の外にさせられて、只でさえ機嫌が良くないのに。
「名が泣くだと!?言うに事欠き、出てきた言葉がそれか。分別もつかず、深く物事を知ろうともせず、上辺だけの事でしか判断できぬ者たちに、一体我がケナンヴェマ家の何を判ろうと云うのか。例えこの先、この者達と共に居たとしても、易く名折れになる程、当家は脆弱ではない!それに、私が誰といつどこにいようとも、貴殿らには関わりのない事。放っておいてもらおうか。今後一切…」
ウィルの怒りで、空気がびりびりする。
これはかなり本気の様だ。
「私やこの者たちに近づくな!」
ウィルの底冷えのする声が、辺りに響いた。
まるで闇夜の雷だ。
中々鋭く、そして迫力がある。
あの3人組がウィルに圧倒され、二の句を告げないでいるようだ。
ジェイも驚きすぎて、目をひん剥いてフリーズしている。
目が落ちそうだ。
クィリムは、なんだか尊敬の眼差しをウィルに向けている。
そのうち兄貴とか言い出すんじゃなかろうか。
それにしても、ウィルって意外と身内を大切にするタイプなんだな。
数週間前は明らかに、あっちサイドだったというのに。
一体どういう意識改革が行われたのか?
非常に気になる。
やはり、ヴォイドのあの教育的指導が効いているのだろうか?
どういう洗脳を行ったらああなるのか、一度現場を見てみたい気もするがこういうのは見ない方がきっといいのだろう。
ちらっとヴォイドを見たら、こちらはこちらで不機嫌モードだった。
周囲が冷気で凍っている。
ようにみえる。
「それから言っておくが、クィリムはお前たちの侍従ではない。自分の家にいる従者と同等に扱うのはよせ」
この言葉に、三人組の剣を持つ手に力が入ったのが見えた。
げ。
何だかあちらさん、今から何かしそうなんだけど、止めた方がいいと思う。
この間の闇夜の3人組みたいに、ってあれ?
「貴様に指図される言われはない」
うあー。
思い出した。
この声で思い出した。
もうどうしましょう。
この前の闇討ち失敗組だ。
ふと、ヴォイドを見るといつでも行けますみたいな顔をしている。
いけませんから。
止めてあげて?
これ以上は彼らの傷が、トラウマが。
何かをヴォイドが声を出さず私に伝えようとしているので、唇を読んでみた。
え?何々?
『ういろうパンツを売りたい?』
なんじゃそりゃ。




