115.
ひとしきり心の中で嘆いて、肝臓の為と諦めいや違った、納得をして立ち直った私は現在副団長の所へ向かっている。
一応任務完了報告は、必要だと感じたからだ。
まぁ、誰かに聞いてるとは思うが。
副団長の執務室がある建物の中へ入ると、色々な視線が刺さった。
ちょっと注目されています。
すみませんねぇ、邪魔しますよ。
3階の副団長執務室の扉をノックすると、返事があった。
「入れ」
許可が下りたので入る。
ヴォイドも続いて入ってきた。
「失礼します」
「レイか」
「はい、任務完了報告に参りました」
一応そこから、今までにあった出来事を話した。
本当はレポートも一緒に提出した方がいいのだろう。
しかし今の私が書くと、シェークスピア並みに古めかしい文が羅列している、書き手にも読み手にも優しくないものが出来上がるだろう。
1Pが10Pに膨れ上がるという大惨事が予測される。
もしくは、幼児語満載の絵本風になるか。
これなら1Pで済むが。
文字の教本が、神話という名の超古典か絵本だったしなぁ。
まだレポート提出は私にとり荷が重い。
うん。
「そうか。まさか団長自ら手配していたとは思わなかったよ。ヴォイドご苦労だった」
「いえ」
ヴォイドが短く答える。
「それからレイも、いきなりな任務にも関わらずよく頑張ってくれた。これからも励むように」
「は。副団長の手配のお陰で、初日の訓練間に合いました。ありがとうございました」
敬礼をして答える。
あのまま船で帰っていたら、確かに間に合わなかった。
たとえ一日は見逃してもらえたとしても、周りはいい気はしないだろうし。
「そうか。連日の疲れもあるだろうから双方良く休むように。アリーオ、ジョイロナ達の回収は終わったのか」
影のようになりを潜めていた、アリーオさんに副団長が聞く。
「はい、先程報告が届きました。首尾よくいったようです」
こちらを向いて、報告してくれた。
どうやら、今回の作戦は上手く行ったようだ。
良かった、女装した甲斐があったよ。
「だそうだ。レイ、ヴォイド。よくやってくれた。部屋に戻っていいぞ。それから例のあの部屋は好きに使っていい。これから入り用だろうしな」
あの部屋と言うのは、あのファンシー部屋の事だろう。
風呂の事もあって相談しようとしたが、どうやら問題は無い様だ。
再度礼を言って、私達は部屋を後にした。
これで心おきなく、風呂に入れる。
「この後、私は城の方の部屋で風呂に入って食事に行こうと思うんだけど、ヴォイドはどうする?」
「ああ、では俺もそうします。一段落したら、迎えに上がりますので」
訓練期間中、寄宿舎組は外出するのに許可がいるので、食事は基本寄宿舎の食堂へ行く事になる。
帰宅組は自宅での食事が義務化されているらしい。
かつて外食OKだった時代に大騒ぎをした人がいて、次の日に訓練に出れなくなる者が多数いたからだとか。
なのでお酒は禁止。
駄目だ、チベット僧でもここまでの苦行は、いやあそこはストイックだからありえるか。
やめやめ、駄目だ飲んでないとどうしても思考がお酒の事に締められる。
考えない考えない。
「大丈夫ですか?」
「あ、うん。大丈夫。多分。じゃあ、また後で」
ファンシー部屋まで移動し、その前でヴォイドと別れ中へ入ると、ナリアッテが飛んできた。
比喩ではなく、物理的に。
思い切りぶつかってきたので、おなかが、鳩尾が。
「御無事で。御無事でようございました」
いや、今無事じゃない。
それから滅茶苦茶汗臭いので、かなり抱きつかれるのは嫌だ。
頼むから臭いをかがないで。
息止めて。
「えーと、取りあえず離れようか」
そっと肩を持って、はがす。
「心配してくれてありがとう。この通り怪我も無いし、無事に帰還果しました」
本当は真っ先に、ここに来たかったんだけど。
ナリアッテの顔を見ると、帰ってきた感がする。
うん、私帰ってきたよ。
「本当に無事ですか?」
「無事です。むしろその後の訓練の方がきつかったぐらい」
私が笑うと、ホッとした顔をしていたのが印象的だった。
「お疲れでしょう。お風呂をお入れいたしますわね」
いつもありがとう、ナリアッテ。
ていうか、自分でやれよ私。
ナリアッテには、足向けて寝れません。
それから、一時間位風呂に入って寛いでしまった。
その後は、ヴォイドと合流し食堂へ直行。
私とヴォイドが適当に座って食べていると、疲れた顔のジェイとウィルが来る。
「どう?部屋はマシになった?」
私が問うと、二人同時に首を横にふる。
なんだかんだ言って、この二人息ピッタリじゃないか?
「帰るのが恐いな」
ヴォイドがポツリと呟く。
「全くだ」
私も同意する。
「うっ、俺たちだって頑張ったんだ」
いや、そんな捨てられた子犬みたいな目で見られても。
困った。
「め、飯食え。とりあえず食べとけ」
はー、また頭撫でまくるところだったよ。
それより、どうやらこの後部屋の片付けが待っているらしい。
まぁ、ウィルとか片付け出来なさそうだし、期待はしていなかったが。
片付けからは、逃れられなかったかぁ。
仕方ない、食後の運動にいっちょ手伝いますか。
この数日留守にして、心配かけたしね。
2人は相当疲れたのか、黙々と食べる。
この2人が食べ終わるのを待って、私たちは寄宿舎に戻った。
部屋の扉を開けて、再度閉めた。
うん。
長い一日が始まった的な?
そんな何か。
ヴォイドが若干怖いです。




