111.
「ルイ!」
ヴォイドが注意を促す。
左後ろ方向からも殴ってきたので、タイミングを見てしゃがみ込んで躱す。
こちらへ向かって来た相手の勢いを利用して、そのまま胸倉を掴みラポイの方へ押し出した。
押し出された男はラポイへと体当たりしそうになるが、奴が避けたためそのまま近くのテーブルにぶつかった。
ラポイが鳩尾に拳を下から入れてこようとする。
なのでそのスピードを利用しながら、身体を左回転で捻り顎に向かって肘鉄を入れる。
ラポイが咄嗟に上体を反らして躱す。
その時、繰り出していた拳をがっちり脇でホルドしたのでラポイの軸足がずれた。
ずれた方向に足を引っ掛けラポイのバランスを崩し、相手の上半身に肘を突き出し体重をかけ、そのまま仰向けに押し倒す。
「かはッ」
背中を強く打ったらしい、ラポイが思わず声をあげる。
そのまま鳩尾に一発入れる。
打つのが弱かったのか、なかなかしぶとく意識がある。
チッ。
背後から椅子を持ち上げた奴がこちらに迫って来ていたので、ラポイの首と胸に両手を置き身体に捻りを入れながら、バックキックでそいつの鳩尾に蹴りを入れる。
その瞬間椅子の位置が下へずれたので、椅子の脚に自分の足をからめて奪取する。
椅子を引き寄せ、ラポイの上に置き動けなくするがその必要もなかった。
気絶をしていたからだ。
死んではいないと思う、多分。
椅子で殴ろうとしてきた奴が、今度はナイフを持って攻撃してくる。
おい、こっちは武器持ってないっての。
仕方がないので、そのまま応戦。
相手が踏み込み、ナイフを繰り出してくる。
「ルイ!貴様らどけ!邪魔だ!」
右胸に向けて繰り出された瞬間を狙い、ナイフのブレード部に右手の甲を使って相手の流れを殺さず横斜め下方向に力を加える。
右方向へと身体が流れた相手に、私が力を加えるとさらに相手の肘が上がってくる。
勢いはそのままに、ナイフのハンドル部分にかけてある相手の親指を握って外へ向けて捻り上げると、するりとナイフが落ちる。
落ちたナイフを、足で蹴り遠くへやる。
捻り上げた男が抵抗を試みるが、ジーマが無効化した。
「ルイ!無事か!?」
「無事ですか?」
ジーマとヴォイドがこちらへ来る。
他に敵はと見回してみたが、粗方片付けたようだ。
「無事です」
「そうですか、よかった」
キースも一段落したのかこちらへ向かってくる。
「さて、主人、悪かったな。ここの請求はすべてあいつらに送ってくれ。何か問題が起きた時は、騎士団まで」
キースがここの店のオーナーへ話しかけ、伸びてるラポイを指しながら言う。
おぬしも悪よのう。
「あ、騎士団の方でしたか。確かに店はこんな有様ですが、あいつらには他の客が迷惑しておりましたので、いいざまです」
「もし本件で話が収拾つかなくなったら、騎士団を呼んでもかまわない。この街に駐在している奴らに、こちらから話を付けておこう」
何だかいい事したような雰囲気で終わってるけど、いいのかなぁ。
70%こっちが原因なんだけど。
しかもほぼ私が悪い。
罪悪感。
「てことで、飲むか、あいつのおごりで」
キースがいい笑顔で言い放つ。
「ハイはいはい!飲みます!エウェジークのストレートで!」
罪悪感?
そんな言葉なかったよね。




