108.
「あの、これ頼んでませんが」
「あちらの、お客様からです」
彼女の指し示す方を見ると、カウンターに座っている人物から挨拶された。
て、あれ?
何でここにいるわけ?
そこには、キースがいた。
「げっ」
げっ?
「おい、ジーマ。人の顔を見てそれはないだろう」
お酒の入っているっぽい、木のカップを持ちながらこちらに席を移してくるキース。
「キース、貴方は暇なんですか?一体何されてるんです?仕事はどうされたんですか」
概ね、ドミトリーと同意見です。
私も。
「お前と話してると、尋問されてる気がする」
キースが中身を一気に飲み干すのを見て、一気にのどが渇いてきた。
いいなぁ。
「してるんです、俺は。まさか1人とかは言わないですよね」
更にドミトリーが詰問する。
「いや、もう1人いる。街中彷徨ってると思うぞ今頃。ルイを探しに」
は?え?私?なんで?
「迎えに行くよう頼まれたんだよ、隊長に」
「副団長から?」
キースが頷く。
それはまた、何で?
既に団長の手が回ってるのに。
「それにしても、大変だったぞ。指定場所に行ったらもぬけの殻だわ、オークション場所に行ってもいないわ、探し出すのに時間食った」
「うん、何か団長の方も私を回収する為の業者を頼んでたみたいなので、それで入れ違いになったんじゃないかな?ダブルブッキング、みたいな?」
「回収業者?」
キースが聞いてくる。
「イジャ-フォの船です」
ドミトリーが代わりに答えてくれた。
「ああ、確かに回収業者だな。まぁ、俺達もイジャーフォの後を追ってきたから、ここにいる訳だが」
こちらをちらっと見て、にやりとする。
何よ。
「まぁ、俺の読みが当たったわけだ。ルイならうまい酒のある場所に来るって、昼からここにいて良かったよ。すれ違いにならなくて」
まて、昼からこの人飲んでたわけ?
なんてうらやましい。
ではなくて、私の待ち伏せ場所が酒場とか、それって終わってないか?
どれだけ飲んだくれだと思われてるんだ。
と、その通りなんだけど。
でも、最近飲んでないからね、あまり。
自分に言い訳しないと、禁断症状が。
「何気にキースって酷いよね」
と私が言うと、ドミトリーが同調をしてくれた。
「ああ、女性の心を判らなさすぎる時が、結構ある」
結構あるんだ。
「たまに吐く毒舌が、人の気持ちを抉ってる時があると、ジーマよ、そろそろ気づいてくれてもいい様な気がするが」
「俺は女性には優しい」
真顔で言うドミトリー。
本当か?おい。
「本当に優しい人間は、自分の口で決してそういう事は言わないものだ」
「むっつりスケベだもんね、ドミトリーって」
うんうんと頷き、私が同意する。
「いや、まて、あれは職務上必要な事で、不可抗力だったんだ。って前にも説明しただろう」
慌てて腰を浮かすドミトリー。
いけね、ついうっかり口を滑らしてしまった。
「ほほう、聞き捨てならんな。一体何をしてむっつりの称号を得たのか、さぁ話そうか」
キースが真顔でなんだか怖い。
「いい御身分ですね、キース。俺が散々街中走りまわってる時に、酒ばっか飲みやがって、いえ酒ばかり飲んで」
「お、戻ってきたな、どうだ見つからなかっただろう」
キースがニヤッと笑って声をかけて来た人物に向く。
「何が見つからなかっただろうですか、見つからないから困ってるのに」
私が振り返ると相手はかなり驚いていた。
「な?俺の言ったとおりだろ?酒のある所にア、ルイありって」
おい、そこ。
間違った私のイメージを周りに植え付けるのはやめて。