表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
自称現実主義者の異世界トリップ  作者: GUOREN
自称現実主義者のプチ旅行
105/228

105.

「あ、いや。その、変な目では見ていないから。ただなんとなく歩きづらそうだったから、提案をしてみただけなんだ」

必死に言い訳を始めるドミトリー。

ん?

何故、必死?

もしかして、何か違うほうに解釈されてる?

「あれ?いや、ただ私は今お金が無いから、服が買えないという意味だったんだけど……」

「え?お金?ああ、それなら心配ない。十分にあるから気にするな」

そう言って、ウェスト辺りをたたく、ドミトリー。

いや、それは奢るという事だろうか?

しかし、奢ってもらう理由が無い。

それに、正直借りは作りたくない。

確かに今の格好は目立つけど、激しい運動さえしなければ大丈夫な仕様になってるし。

うん、問題ない。

「あー、もう。ごちゃごちゃ考えるな。ここは奢られとけ」

といって腕を引っ張り、無理やり店内に押し込まれる。

「ちょ、待って」

「あら?ミルいらっしゃい。ちょうどよかったわ。この間の図案気に入ったの。あれを基に服を作って売ってもいいかしら」

「それは好きにしてもらっても構わない。それより今日は、レイに、この者に何か見繕いたいんだが」

店に入ると、品のいいワンピース姿の店員が目に入った。

その店員と目が合うと、にっこり微笑まれた。

頭を下げる。

「あら、どういった服がいいかしら。そうね、1から作りたいところだけど、どうかしら?」

「いや、少し急ぎで頼む」

「なら、今ある服から選びましょうか。ミルは?」

「この際だから、さっき言っていた図案のやつを、もう1着作ってくれないか」

「お安い御用よ」

ではこちらへと言って、奥へ案内された。

中にはいろいろな服と、大きい鏡があった。

「まず採寸をするわね。少し両腕広げてもらえるかしら」

そう言われたので素直に広げる。

ええい、もうこの際服を買おう。

それでもって、値段聞いて後でドミトリーに返そう。

店員の採寸の手が止まる。

ん?

「まぁ、あなた女の子なのね。もう、誰かしら。女の子に男の服を着せるなんて。ミルかしら。でもこれもありかもしれないわね……意外とそそるわ」

最後の言葉は、なんだか聞いてはいけないような気がした。

「あら、ごめんなさいね。一応一通り採寸を終わらせてしまうわ。だけど困ったわね。実はあまり作り置きの女性服がないのよ。ここにかかってあるだけなの。男性の既成服は需要があるから、作り置きを結構しているのだけど。女性は1から作られる方が多いので、あまり置いていないのよ。あるのは見本ばかり」

一通り採寸が終わり見せられた服は、ドレスとワンピースの中間みたいな女性服ばかりだった。

「あの、男性服がいいのですが」

「えぇ?」

びっくりされてしまった。

「あぁ、驚かれるのも無理はありませんが、少し事情がありまして。男性の格好をしなくてはいけなくて」

一応説明しておく。

「そうなの。ミルはその事知っているの?」

頷く。

「あまり詮索するのもよくないわね。ではまず、男性服から選びましょうか」

そう言って服選びが始まった。

この女性の選ぶ服のセンスはなかなかいいと思う。

華美な物ではなく凄くシンプルで、だけど細部のディテールにこだわりを感じる、そういった物を選んで来た。

それに既製服なのに、まるで誂えたかのような物を選んでくる辺りプロだなと感じる。

「あら、これはなかなか合うわね。首元が隠れているし、ゆったりしているので触らない限り女性だと判らないわ。本当に、そうして立っていれば王都の騎士様にも見えるわね」

鏡で見ると、確かにベストを着れば騎士団配給の制服に見えなくもない。

「結構王国騎士団の制服が人気なものだから、同じ物を作ってくれという注文が多いのよ。でも全く同じ物を作るわけにはいかないから、色々な部分で違いが出るようにしているの。一番の違いは紋章が入っていない事なのだけど」

「へぇ。そうなんですか」

あの制服人気あるんだ。

「そうなの。それにしても、それが1番似合っているわね。これは表通りで」

「え?」

「いいえ、なんでもないわ。さて、本番はこれからよ」

本番?

「あの、私はこの服で十分なんですが」

あれ?

何だかナリアッテと同じにおいがする。

「だめよ、私が女物を着たあなたも見たいの。それからミルに見せて、びっくりさせましょう。そうよ、それがいいわ」

確かに普段着る用の、ドレスじゃない服が欲しいのは確かで……

あぁ、借金がたまっていくが、もう何だかどうにでもなりそうな気がしてきた。

副団長に、特別手当出ないか交渉しよう。

なんなら飲み会の時に、飲み比べでお金を稼ごうかな。

よし、そうしよう。

それにしても、この国の女性ってもしかして押しが強いのか?

何だかそのような気がしてきた。

それから、女物を何着も試着させられる羽目になった。

女性用の服は面倒臭い上に、時間がかかる。

脱ぐのは簡単なのに。

前を向いた時ふと、中々シンプルで動きやすそうな女性用の服が目に付いた。

「あのー。あそこに掛かっているのは女性用ですか」

男性服の所にあるので、もしかすると違うのかもしれないが、私からするとあれは女性用な気がする。

「あら、男性用に紛れているわね」

そう言って取り出してくれた。

形がシンプルで動きやすそうなロングワンピースだ。

丈が踝まであるが、サイドに膝までのスリットがあるので、走っても暴れても大丈夫そうだった。

しかも伸縮性に富む素材なので、大またで走ったり歩いたりしても支障はなさそうだ。

基本色はチャコールブラウンで、素材が少し特殊なのか光の種類によって色みが変わる。

日の光だと黄色みがかり、蝋燭のような元では銅色に見えるようだ。

「あら、これは。そうね、貴女ならもしかして。皆、この服を試着していくけれど、服に着られていて着こなしきれなかったのよ。どうしても欲しいと言われた事もあるけど、結局どのお客様も買われなかったわね。一度、袖を通しましょう。あなたほどの背丈があって、かっこいい雰囲気の女性なら着こなせるわ」

着てみると、胸以外ピッタリだった。

少し、複雑。

「まぁ。あ、ねぇこの際このまま着て帰ればどうかしら。ああ、でも男性のふりをしなきゃいけないのよね。残念ね。だけどせっかくなので、きれいにしてミルにだけはお披露目してあげましょう」

お披露目ー?

は、いいんじゃないでしょうか。

しかし、化粧直しの言葉に負けて、頷いてしまった。

最近女性の押しに弱い自分に気付いた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ