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自称現実主義者の異世界トリップ  作者: GUOREN
自称現実主義者のプチ旅行
104/228

104.

「大丈夫ですか?」

あまりにも酷い顔色なので、聞いてみた。

「ああ、陸なら俺は生きていける」

どうやら、大丈夫ではなさそうだ。

「えーと、どこかで休みましょう」

「いや、とりあえず歩こう。その内治る」

本当に、大丈夫なのか?

まぁ、当人がそういうなら問題ないのだろうが。

「そうですか?では、まず今晩の泊まる場所をどうするか決めようと思っていて、艦長に聞いたホテルへと今から向かおうと思います。そこが今一だったら船で寝ようかと思っていて……」

そこまで私が言うと、被せる様にドミトリーが発言してきた。

「悪い事は言わん、ホテルにしておいたほうがいい。うん、ホテルの方がいい」

よっぽど船が嫌いらしい。

体調不良を押してまで、ドミトリーが先導し始めた。

いや、別に私はどちらでもいいんだけど。

「こうしてみると、ここから見る海もいいなぁ」

思わず立ち止まって、停泊中の船を見てしまう。

「いや、俺は暫く船はいい」

眺めていると、うんざりとした声音で言ってくる。

「あはは、そうとう堪えてるみたいだね」

私の言葉に肩をすくめて答える様が、彼のげんなり感をよく顕していた。

ご愁傷さまです。

さて、この街はこの先どんな風景が広がっているのだろうか。

少し期待を膨らましつつ、港を後にした。

倉庫街を抜けると、人通りが多い区域に出た。

両サイドには、新鮮な魚や果物や野菜が売られている露天が並んでいる。

「港が近いので、この場所で水揚げされた魚や輸入の野菜果物が売られている。たいていの食料品はここに来れば手に入るな」

そのドミトリーは、食べ物を見たくないのか、ひたすら前を見て歩いている。

時間帯のせいか出てきているようだ。

食事を出すお店も多いので、朝に来ると今の倍は人がいて、前に進むのが大変だそうだ。

暫く歩くと市場の区画を抜け、衣料など布製品が多く売られている場所に出た。

この地区は先程見たような露天を出している所もあるが、ほとんどが店舗販売のようだ。

「ルイは服とか買わないのか?」

服か。

今までここの知識を仕入れるので手一杯だったから、買い物まで頭が行かなかったな。

お金ないし。

と言い訳してみる。

知識を仕入れるなら、実際見る方が手っ取り早かったかもしれないな。

反省。

「いや、私は今まで支給品で賄ってたから、自分の服ってないですね」

自分で言っててなんだが、ちょっとへこんだ。

「ちょっと待ってくれ。支給品って。団長と面識ありそうな発言したり、騎士団の任務に協力したりしてたのは、もしかして騎士団に所属してるからなのか?」

呆然とした顔でこちらを見る、ドミトリー。

顔色が治っている事を思うと、体調は良くなったらしい。

歩くと治るは、本当だったのか。

「ええ。ちなみに男のなりをしてる時は、レイと呼んでください」

「待て。俺は今まで騎士団で、女の隊員を見たことないぞ」

かなり狼狽をしている。

それ程の事だろうか?

「いないそうですよ」

私がそう言うと、信じられないものを見るような目で見てきた。

まぁ、その反応も分かるけどね、今更辞める気はないから私。

「その、騎士団の連中でル、レイが女だと知ってる奴っているのか?」

「えーと、多分2人?」

キースはどうなんだろう。

あれ以来会ってないから、判らない。

「多分?なぜ疑問系なんだ……」

「団長が公衆の面前で私を男だと発言したから、皆の認識が上書きされたかも」

と言うと、なんだか納得しているドミトリー。

「良く今まで無事だったな。と言うか何故周りが気づかないのか、そちらの方が不思議で仕方がない」

もっともです。

といっても、訓練すらまだ参加してないので、これからの事は判らない。

そうなると、団長のあの発言は逆に助かった事になるのか?

う、なんだか癪だ。

「まぁ、副団長が色々フォロー入れてくれるらしいので、何かあったらそちらに丸投げです」

「え?副団長がこの事知ってるのか」

まぁ、そうだよね。

騎士団のNo.2が許可したと知ったら驚くわな。

「ええ、一応協力者ですから」

「何っやってるんだあの人は。女の子をあんな所に入れるなんて」

意外だ。

「ドミトリーってそういうとこ気にするタイプなんだ。今時、軍に女性がいるとこってざらにあるでしょう?」

「いや、俺が言いたいのはそこではなくて。まだこの騎士団って、女性が入隊する事に対する前提条件というかそういったのが、整ってないだろ」

前提条件?

て何だ?

「一番判りやすいのは、設備なんかがまだ男女別になってないとか」

ああ、そういう事。

確かに。

「うーん、そういう意味では、やりにくいですね」

「だろう?まぁ、副団長が協力者なら、そこ辺りに何か考えがあるのだろうけど」

あるのかなぁ、以外とそういうところ抜けるタイプだと思うけど。

「副団長的には、私がまさか試験で合格するとは思ってなかったみたいです。予定外といっていました」

はっきりそう言っていたし。

「試験を受けたのか?」

意外そうな顔をする。

コネだと思ったのかな?

「はい、実技のみですが。団長に手合わせしていただきました」

良く考えたら、十分コネだった。

筆記免除だし。

「手合わせしても、気づかなかったのか団長は」

信じられんと言いながら、一軒のお店に誘導しようとするドミトリー。

おーいどこに行く。

「この店、いい布そろっているしセンスもいい。リクエストも聞いてくれるので、服を作るならここだな。既製服もあるので、服を買っておくといい。それ、サイズあってないだろ」

確かに、腰回りや胸辺りなんかが心もとない。

頷きかけてやめる。

いやいや、無一文の私に何言ってんのよ、この人。

お金無いって言ってるのに。

ジト目でにらんでしまった。

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