103.
壮観。
何がというと、いくつもの帆船が見事に集結しているこの景色。
うわー、生で見るとこれはすごいな。
1隻あたりの全長が大体30から40mの船が、目視できるだけでも20は集まってる。
なるほど、これは一生のうち1度は見ておきたい風景かもしれない。
しかも海側から見る事ってなかなか無い。
これほど感動するとは。
是非この風景を、ロランとかレンブラントとかに描いてほしい。
夕方か早朝の風景をモチーフにして。
因みに私の初恋は、ポルトガルにいたころに見たレンブラントのアレクサンダー大王だった。
2次元に初恋とか、我ながら痛い。
それはさておき、絵画ネタで今この船の状況を言い表すのなら、ストルクの描いたスミルナ湾のオランダ船停泊か。
つまり、陸に上がるにはまだまだ時間がかかるぞと言う、船の団子状態だ。
これほどの船が集まるならば仕方のない事なのだが、気がせくのはいかんともしがたい。
艦長が言っていたのは到着に2時間ではなく、きっと陸に上がるまでに2時間はかかるという事だったのだろう。
これを見て納得。
「レイ殿?」
声をかけてきたのは、ヒルスだった。
「ああ、先程はありがとうございます」
私がそういうと恐縮しだす。
「あの、俺事情知らなくて、先程はその、失礼な言動をとった様な気がするのですが」
なぜ敬語。
「え?いやいや、むしろ、先程と同じ様に接してもらえると私としては非常に助かる」
と言うと、ほっとした顔をする。
ここの船員は気を使いすぎるような気がするのだが。
貴族かなんかと、間違われてでもいるのだろうか?
「実は俺敬語とか苦手で、そう言って貰えると助かる。詳細は同僚に聞いたんだ。まさか、男性だったとは、気づかなかったよ」
俺もまだまだだな、と笑うヒルス。
いや、多分君の目は正しいと思うよ?
化粧がはげまくった私の顔を見ても、女だと思ってたんだから。
と、言いたい所だけど言えないんだなこれが。
「ははは。それより、すごい壮観ですね。ここまでとは予想外でした」
「今日はまだ空いている方だと思うよ。いつも色々ごった返してるから、この港周辺。今日はもう夜が近いし、だから入港も少ないんだと思う」
なるほど。
いつもはもっと多いのか、それはすごいな。
「おい、ヒルス!サボるな。手ぇあいてんなら、樽集めんの手伝え」
「あ、やば。じゃ、俺はこれで」
「ごめん手を止めてしまって」
どうやら、作業途中で話しかけてきたようだ。
怒られている。
「ぜんぜん大丈夫です」
「こっちは、ぜんぜん作業進んでねぇ。てめぇ1人で倉庫内の分丸々運ばせるぞ」
「うわぁ、それだけは勘弁して」
「勘弁してほしいのはこっちだ。ほら、オルを手伝え」
ここにいたら邪魔になりそうだな、船室に戻るか。
船室に戻って惰眠を貪っていると、上陸OKの知らせが来た。
で、来ました貿易都市ジュハフィーグ。
よし、プチ観光開始だ。
「よろしくね、ガイドさん」
隣にはグロッキーなドミトリーがいた。
昼食べなきゃよかったのでは?