101.
「お昼をいただいても?」
お腹がすいた。
結構動いてるしね、なんだかんだ言って。
「え?あ、はい。もちろんです。ご案内します。ミルはいつもの所な」
「あれ?一緒じゃないのか?」
ドミトリーが船員に聞く。
私も皆と一緒に食べるのかと思っていたんだけど、違うのか。
二人して首をかしげる。
「レイ殿は客人ですので、艦長室にご用意しております」
「あれ?そうなんですか?」
一応ここでは客人扱いなんだ。
「ええ、艦長が是非にとのことなので」
「そうですか。では、よろしくお願いします」
頭を下げる。
「かしこまりました。ミルはもう船酔い大丈夫なのか?」
ドミトリーの容態を尋ねる船員、いい奴だ。
「今は大丈夫だ」
そう言えば、いつのまにか顔色がましになっている。
相当つらそうだったけど、大丈夫だというのなら、いけるのだろう。
「そうか、まぁ、無理しないほうがいいよ。では、レイ殿そろそろ」
私が頷くと、船員が案内し始めた。
甲板に出ると酒盛りをやっていた。
ちょっと待って、あっちにものすごく行きたいかも。
羨ましそうに見てたのがバレたのか、船員に笑われた。
「いつもあんな感じなんですよ。なのでどこかの港に寄港する際には、大量の酒と食料を船に積むんです」
今日も一度港に寄るらしく、そこで新たな食料と酒などを大量に仕入れるそうだ。
そのためか、食材や酒がいつもより多めに昼に出されるとの事。
それは、古いのを消費するためなのだそうだ。
なるほど。
倉庫はあけなきゃね。
艦長室に入ると、案内してくれた船員が去って行った。
その際に、一応お礼も言っておいた。
部屋を見渡すと、艦長の他に先程のエセ紳士のフィオルさん、それと見慣れぬ船員が1名いた。
どうやら、このメンバーで食べるらしい。
見慣れぬ船員は副艦長で、名前はイウイェットさんと言うらしい。
船員というよりは、経理と言われた方がしっくりいく。
そんな風体だ。
まぁ、実際そうなのかもしれない。
ここ、貿易船だし。
それからフィオルさんは、カフィオロと言うそうだ。
ここでは航海長を任されているという。
昼食にしては少し早い時間だったが、その割に中々食が進む。
航海用の食料なのに、意外とおいしかったのもあるかもしれない。
艦長からこれからの話を、食べながら色々聞く。
今から上手くいけば3時間後位に次の寄港地に到着するとの事で、そこは王都と違い入港規制が若干緩いらしい。
と言っても、規制が緩いのは国内商船に限るが。
それでもなお他国船も負けず劣らず多いのは、王都と比べて敷居が低く貿易のし易い条件がそこに揃っているからだそうだ。
国内外の品が一同に集まるので、物流が滞る事なく常に商品が入れ替わる。
なので、いい物や新しい物が早く安く豊富に取り揃うらしい。
そういった条件が揃っている為、そこは人気の貿易スポットなんだそうだ。
そうしたわけで、海側から見る港は圧巻で、商船の集う様は一生の内に一度見てみたいという人も多いらしい。
それは楽しみだ。
30m以上もある帆船が何隻も海に集まるなんて、今や映画の世界でしか見れない気がする。
それはぜひ見てみたい。
この貿易都市は観光地としても人気で、異国の食べ物や酒も多く集まるので中々に楽しいらしい。
うわ楽しみって、それはお金があればこそだよね……
がっくり。
うう、今日は大人しくしてよう。
いい場所だったら、また来ればいい。
何としても、お酒の為に。
話がそれたが、この都市に一泊し明日の朝王都に行くらしい。
良く考えたら、もしかして仕事以外で初城外行動?
うわ、楽しみ。