100.
「信じてもらえるとは思ってないが、俺はゴーストと呼ばれるものを見つけたら、何よりも優先して全力で守れと言われている」
何よりも、ね。
「誰からです」
く、交渉材料が自分の情報しかない時はつらいな。
先立つものがないというか、一文無しだ。
駄目な時は脅しか、引き下がるしか道がない。
とほほ。
「悪い」
だよね。
ただでは渡せないか。
脅した所で、利がないので諦めよう。
誰からそういう命令されたのか気にはなるが、命に別状無しなら保留選択もありだ。
「いえ。それより貴方はロシア人ですか?」
ヨモルォスカもロシア語、ドミトリーもよくあるロシア人名。
ロシア系なのは間違っていないだろう。
「父がな」
ん?意外とあっさり答えるな。
うやむやにするかと思った。
「先程の彼は、何故ミルと?」
ドミトリーだったら、ジーマとかミチャだったかミーニャだったか。
「ウラジーミルと名乗ったからだな」
ここでは、ウラジーミルと名乗っているのか。
「ウラジーミル?だったらヴォロージャとかじゃないの?」
「いや、ここはロシアではないからな。それにアメリカでも、自分からそう言えと言わない限り、ヴォロージャとは呼ばれない」
あ、そっか。
納得。
「気になるんだけど、ヨモルォスカと今となぜこんなに性格というか、しゃべり方が違うわけ?」
あまりの違いにびっくりだよ。
多重人格の持ち主なのかと疑ってしまう。
じっと見ると困った顔をする、ドミトリー。
「ヨモルォスカは、知り合いの性格をそのままコピーしている」
うわー、なんてはた迷惑な性格だ。
頭の中は、きっと女の事でいっぱいなんだろう。
なんだか残念な性格をしているようだ。
ていうか、それを自然にこなせてるという事は実は……
「待て、何故そんな目をする。俺はあんな性格はしていないぞ。むしろ逆だ」
言い訳をしてきたなぁ。
よし、面白いのでつつこう。
「そのわりに、下着の種類も色も詳しそうだけど?」
ジト目で見ると、むっとした顔になるドミトリー。
「違う。任務上知る事になってしまっただけだ。そんな変態を見るような目をするのはよせ」
「ふーん?じゃあ、何で身体検査の時に、あれだけ触られたのかな?私は?」
そうそう、あれは嫌な思いをした。
フフフ、リベンジ。
「それは……」
口をパクパクさせているドミトリー。
この、むっつりスケベ。
「しかたないだろ、にんむだったんだから」
棒読みですよー。
目が泳いでますよー。
「へー?任務だったらいいんだ」
うん、そろそろか?
お、きた。
今だ。
「初めてだったのに、ひどい。キスまでされた上に、散々いじられて!」
「え?あ、いやそれは」
おどおどし出すドミトリー。
よし、もうひと押し。
「それに、押し倒したのに、責任も取らないなんて」
なんてひどい奴とかいう振りして、顔を逸らす。
「おし……いや、あれはちが」
「あー、また取り込み中で悪いんだけどさ、お二方今いいですか?それから、ミル。あの、俺は無理強いして押し倒すのはよくないと思う。きちんと話してからか、雰囲気作ってからでないと。その、あの、例えおと、あっ、あの、もしかしてまだ言ってなかったりしますか?ミルは何でもないからな。うん。それより、あー、昼どうする?できたけど」
おお、タイミングばっちり。
これにて、報復完了。
記念すべき100話がこんなので申し訳ないです。
もうすぐ琉生の初任務編が終わり、通常訓練に戻るかと思います。
ここまでお読みいただき有難うございます。
引き続き宜しくお願いします。