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「なんかね〜。変に気を使っちゃうんだよね」
ネットを繋げて二人でゲームをしているとき、彼女は愚痴をこぼした。今付き合っている彼氏との関係が悪化していたらしい。話を聞いてある想いが頭から離れなくなった。「だったら俺と付き合ってよ。そしたら、絶対に幸せにするから」。想いは口から脱出しようと暴れていたが、何とか抑えられていた。電話越しでの会話だったおかげもあるかもしれない。
その後彼女と関わる上で何度もその想いと戦うことになる。厄介なことに戦っている本人の抑える気力は会うたびに段々となくなっていっていった。
その結果が前述の出来事だった。今から二ヶ月ほど前、その場のノリで居酒屋に行く機会があった。二人の行きつけのようになっている安い居酒屋。その日はいつもに比べて静かで、二人だけの空間がすぐに完成した。二人とも酒の場が好きだということもあり、酔っ払うまでそうかからず、必然的に彼女の身の上話を聞く機会が生まれた。
「最近全然連絡も取ってないの」
彼女はいつものように彼氏との話をする。そのたびに暴れる想いを回らぬ頭を酷使して抑え続けた。そして、考えが消えることを願ってアルコールを流した。佳奈子はそんな彼の状況も気にせずに幸せそうに飲んでは話を続ける。そして、勢いのままなのか、元から言うつもりだったのか、彼女ははっきりこう言った。
「最近仲良くなった男の子がいるの。多分次その人と付き合うと思う。子供も早く欲しいしさ、多分その人と結婚する気がするんだよね」
体が震え始めた。それでもすぐ口を押さえなくてはと焦り、腕を必死に動かした。しかし、間に合わなかった。押さえていた想いが解き放たれたのだ。




