28話
更衣室で真新しい制服に着替え、あの日と同じように双樹は花柩のいる真っ白な試験室へ入る。
今日は遥かに静かで、心も落ち着いていた。
カンカンと足裏が鉄骨を鳴らし、第七機の頭上まで登る。
『双樹、乗ってくれ』
部屋全体に朝桐のアナウンスがこだますると、双樹は作業員が促したのを合図にコックピットへ乗り込んだ。
中は暗いままだが、すぐにコードを見つけて首裏に差し込み操縦席へ座る。
すると、双樹が少し意識するだけで第七機は反応を見せた。
『起動は問題なさそうだな』
双樹は小さく安堵の息をつく。
前面が明るい外界を映し出すと、朝桐や藤、それから見知らぬ二人がガラスの奥にいるのが見えた。
片方は普通の研究員だろう。手元のタブレットを操作している。
もう一人、眼鏡をかけた長身の男は朝桐に代わってマイクを掴んだ。
『初対面がこのような形で失礼。第一研究室室長、青海川薊だ。この度は第七パイロットへの就任おめでとう。だが君の場合イレギュラーが多く、色々と正規の手順をすっ飛ばしているためデータ収集への協力を頼む』
「は、はい。夏宮双樹です。よろしくお願いします」
『双樹~緊張しなくても大丈夫だぞ~!』
そうやって少し遠くから届く藤の声で体の力が抜けていく。
『そうだ。変に強張られては正確な数字が取れない』
だが向こう側では小さな惑星衝突が起こったらしい。
『おい薊、もっと優しく穏やかにできないのか。怖がらせるなよ』
『僕への相談も無しに、強行突破で第七機の起動に踏み出したことを鑑みれば十分な優しさだと思うが?』
『はいはい二人ともストップ! 花澤さんもう始めて‼』
「確かに、聞いていた通りカイはほぼ使えない状態だが、花柩は正常に動かせている。それどころかパイロットの能力が非常に高く、カイとも相性が良いことで、花柩の強さは基準値をかなり上回るという」
「これは……現段階では説明がつきませんね」
「ああ、これは一旦うちで持ち帰ろう」
青海川と部下の話し合いは終着を見せ、朝桐がようやくと会話に割り込んだ。
「それで、今後は普通に使えそうか」
「問題ない。現状、他の花柩やパイロットと同じ状態だと考えていい。ただ背景は未知な点が多いから、常に想定外を意識しておけ。異常が起こったらすぐに僕に連絡。壊したらただじゃ置かないからな」
「了解、肝に銘じておく」
未だぶつくさとは言っているが、区切りはついたようだ。
「まあいい、今日重要なのは武器の方だ」
青海川が無線で指示を飛ばすと、花柩の足元に大きな箱が運び込まれた。
『これは……?』
不思議がる双樹の声がスピーカーを通る。
「開けてみろ」
言われた通り、花柩は大きな体を屈ませて、重そうな蓋をいとも簡単に開けた。
そこから覗くのは白銀の球体。
「それは今から姿を変える。花柩が必要とする武器の形に」




