表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
キド  作者: 野乃
第2章
27/33

27話


 「緊急時なのにすぐ出動出来なかったら困るだろ? このエレベーターは花柩の保管場所にも繋がってるし」


 雑談の合間、藤がそう言った時ちょうど目的地に着いた。

 続くようにそっと一歩踏み出すと、下の方では人々の職務的な声が騒々しい。

 そしてかなり大きな空間、奥には見慣れた巨大モニターがある。


 「司令室だ……」


 それは以前、朝桐が紹介してくれた特別な場所。

 司令室の上方に構えた、パイロットと指揮官の席。


 「お、蓮さん。珍しいここにいるなんて」


 その言葉に双樹がひょいと藤の背中から覗き込めば、最前で白い椅子に腰かけながら書類を広げている朝桐の姿があった。

 振り返った朝桐が二人を視界に入れる。


 「ああ、冬夜か。案内ありがとう。双樹さんも急に呼び出してすまない。そこに飲み物もあるから、座って待ってなさい」


 はーい、と藤が間延びした声で答えると、双樹を横に座らせた。

 一息ついて有難く缶ジュースを開ける。


 「てか蓮さん、まだ“双樹さん”とか呼んでるの? 呼び捨てでいいじゃん、堅苦しいよ。双樹もそう思うでしょ?」

 「え?う、うん。気楽に呼んで下さったら……」

 「お前なぁ……」


 忙しそうにする朝桐に遠慮なく話しかける藤。

 朝桐はその話に小さくため息をついた。


 「蓮さんね、そういうの苦手なんだ、自分から距離詰めるの」


 こそこそと藤が双樹に耳打ちしてくる。

 だが当然この距離では本人にも聞こえている。


 「分かったよ、善処しよう……」

 「わーい! よかったな双樹」


 ニコニコと満足げに缶を傾ける藤に双樹は呆気にとられる。

 

 「冬夜って凄いね」

 「ん?」


 当人は何のことか分かっていない様子だが。


 「そいつは芽久沙菜を手懐けるのも早かった。小さい頃から変わらず、天性だな」


 手元からは目を逸らさず朝桐がそうこぼす。


 「小さい頃? 冬夜がパイロットになったのってそんなに昔じゃ……」

 「だって俺、蓮さんちの子だもん」

 「えっ、それってどういう、」


 「あ! いたいた! 双樹さん!」


 その時、荷物を抱えて現れた花澤に話は遮られた。


 「花澤、アイツは来たか?」

 「青海川先生ですか? もうすぐで着きそうだと連絡が」

 「……遅刻だがまだマシか。移動しよう」


 朝桐がそう言いながら書類を片付けるのを見て双樹らも立ち上がった。


 「双樹さん、これを」

 「制服?」

 「はい! 前回は藤さんのをお貸ししていましたが、双樹さんのために新調したものが出来上がったので」


 渡された透明な袋から覗く白い制服には、金のラインが引かれ、花型のブローチには黄金の宝石が光っていた。


 「俺の時は藍だっただろ? 識別しやすいように花柩の瞳の色が使われてる」


 双樹がじっと眺めていると、花澤は微笑ましそうにそれを見つめる。


 「ふふ、気に入りました?」

 「……はい」


 かつて、あの小さな子がいつも金色の折り紙を選んで一生懸命に剣を作っていたのを思い出す。


 「さぁ、試験室に行きましょうか。七機も待ってます」


 双樹は小さく頷いて、こちらを待ってくれていた朝桐の後に続いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ