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キド  作者: 野乃
第2章
23/33

23話


 削り取られた山肌に、自然とは似つかないカラーコーンやクレーン車。

 作業服を着た男たちに交じって、研究員らがデータを収集していた。

 

 それを取りまとめる細身の男が一人。

 内ポケットで電話が鳴って、煩わしそうに手袋を外した。


 「はい、こちら青海川(おおみかわ)。今手が離せないんだ後にしてくれ」

 『何言ってる。我慢できずに自分から現場分析に向かったくせに』

 「仕方がない。三十一体目はかなり興味深いんだ。で、用件は?」


 奥では大声や機械音が騒々しく、セルファの埋まっていた跡を丁寧に計測している。


 『第三十一生命体は殲滅した』

 「ああ、先程部下から聞いた」

 『今回、先手を打ったのはセルファだ』

 「……なるほど?」


 青海川は、話しかけようと駆け寄ってきた自身の部下を手で制した。


 「七機には例の子が乗ったそうだな。カイはどうした」

 『彼の弟だ。だがキドの力はほぼない』

 「……貴様、これで第七機を壊そうものなら上よりも僕が先に君を殺してたぞ」

 『覚悟の上だったさ。それに、お前にとっては探求心を擽る重要なケースになっただろう、薊』

 「ったく、開発者の僕に口答えをしてくるのは同期の君くらいだよ」

 『データは送った。報告は草壁に』

 「はいはい」


 乱雑に前髪をかき上げた青海川は愛用の煙草を口に咥えた。

 ようやく晴れた夕方の空に煙が立ち上る。


 「蓮」

 『なんだ』

 「敵は死んだ。パイロットは生き残ったんだ。それでいい。君は優しすぎる」

 『……やめろ、お前らしくない』

 「だったら僕に悟られるなよ。それから、近々その研究対象に会うから日程だけ調整しとけ。じゃあな」

 『なっ、忙しいのはお前だろ‼ いつも返信すらしないくせに……』


 小言を遠ざけるように携帯を離して青海川が通話を切った。


 「今の朝桐さんの声ですか? 室長、また怒らせたんでしょ」


 青海川を待っていた研究員がようやく声をかけた。


 「知らん。アイツが勝手に喚いてるだけだ」

 「ひえー怖いもの知らずだな。あ、今度、噂の黄金の青年に会いに行くんですよね? 僕も同行していいですか?」

 「なんだそれは、大それた名だな」

 「民間に予告しなかったのは第一機以来初めてでしたからね。それに今や花柩やそのパイロットたちは人気の的ですから、かなり注目を集めてますよ」

 「理解しがたいな」

 「まあまあ」


 赤さを失った灰が山の土に零れ落ちた。


 「室長ー‼ 全ての測定が終わりました‼」


 遠くで彼の部下が叫ぶ。


 「よし、我々は撤収! 次に第三十一生命体の解体現場に向かう! 準備しろ‼」

 「はっ!」


 青海川は眉間を押さえて小さなため息をついた。

 研究員たちと同行するのだろう、今度はスーツ姿の職員が青海川の荷物を担いで話しかける。


 「だいぶお疲れですね。美しいお顔が歪んでますよ」

 「煩い。こっちは花柩の修繕作業から抜け出してきたんだ」

 「なんと。確か第二機と第三機でしたか」

 「そっちは最終チェックを除いて終わらせた。だが本日午前の第六機。さらにさっきまで戦ってた第五機も追加されるだろうな」

 「……適度に休憩されてくださいね」

 「朝桐指揮官様に言ってくれ」


 新しい煙草に火が灯る。

 ゆっくりと、それぞれの運命が動き出した。

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