20話
あの時、セルファの光線から双樹らを守ってくれた花柩と同じ。
『こら、沙菜』
朝桐が咎めると、その少女は反発するように捲し立てる。
『だって朝桐さん‼ あたし、コイツのために芽久の武器まで持ってるのに‼』
「武器……」
確かに、花柩は自身の特徴的な大きい盾と、所々にイエローのデザインを持つ長槍を抱えていた。
『なのにコイツの方が遅いって……!』
「ああ、ええと、彼女は花柩第五機のパイロット葉月沙菜さんです。先程もご説明したように、今回は沙菜さんが双樹さんをサポートしてくれます」
『誰がこんな足手纏いを……!』
花澤がフォローに入るが気性の荒そうな少女は止まる所を知らない。
『作戦説明をする』
だが朝桐はパッと空気を変えた。
『軍部より、敵のコアは右目だと報告が上がっている。そこで、双樹さんには花柩第六機の槍を用いてトドメを刺してもらいたい。ただ、今のカイを載せた花柩第七機には武器を扱いきれない可能性もある。その場合も含め、私が危険だと判断した際には撤退命令を下すため即刻従うように。……いいかい、沙菜。君の守りと状況判断が頼りだ。任せたよ』
瞬間の沈黙。
『……あぁもう! わかったわよ‼ 面倒見ればいいんでしょ‼』
沙菜はまだぶつぶつと文句を垂らしていたが、渋々と言った様子で引き下がったようだった。
双樹にも何か言いたい気持ちはあったものの、初陣の手前これ以上このアテナの怒りを買うわけにはいかなかった。
『出るわよ』
少し硬さを持った沙菜の声と共に、開き始めた頭上の扉から光が落ちる。
二機の花柩が地上へ飛び出した。
『標的を確認!』
沙菜に続いて、双樹もそれを視界に捉えた。
曇天の街を踏み荒らし、こちらにやってくる怪物を。
『ほらそこの坊主‼』
「は⁉ ちょ、おい!」
第五機が勢いよく腕を振って、長槍を第七機に投げた。双樹は咄嗟に花柩を動かして、何とかそれをキャッチする。
「っぶねぇ……誰が坊主だこの!」
遂に我慢の限界が来て素の双樹が顔を出した。
『アンタに言ってんのよ! 十五歳はガキンチョでしょうが』
「なっ、……てか、葉月姉妹は十六だろうが! 一個しか変わんないのに……!」
『ごちゃごちゃ煩いわね! 行くわよ!』
花柩がビュンと目の前を駆けていく。
双樹の乾いた笑いがこぼれた。
「とんだじゃじゃ馬じゃないか……!」
花柩第七機は僅な水色の残光を追いかけた。




