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キド  作者: 野乃
第1章
15/21

15話

 機内は途端に静寂へ包まれた。

 ぬるい温度の中、双樹は世界の中心に立たされている。

 また一つ、深呼吸をした。

 そして、心の中で願う。

 動け。


 「……」


 だが何度思っても、花柩は沈黙したまま。

 早くなる鼓動を抑えるように、ぎゅっと拳を握りしめる。


 「……っ葵、動いて……葵、お願い……」


 不意に双樹から言葉がこぼれる。

 それでも、その悲痛な声に花柩は耳を貸さなかった。



 「無理だ……」


 そう、司令室の誰かがつぶやいた。

 項垂れる花柩の映像と、双樹の声に目を逸らす者もいる。


 「花澤さん、これは……」

 「見てられませんね……これ以上はもう不可能だと思います。そもそも前提からして出来るはずがなかったんですよ」


 花澤はインカムのコードをいじりながら液晶を見上げる。

 その時、心臓の飛び上がるような警告音がけたたましく響き渡った。


 「っ花柩第七機の機体温度が急上昇しています‼ またカイ培養液の大きな揺らぎを確認‼」


 一人の職員がモニターを目で追いながらそう叫んだ。


 「まずいっ‼ 花柩が自己破壊しようとしてる‼」


 花澤は立ち上がって指示を飛ばし始めた。


 「試験室の朝桐指揮官に連絡を‼ パイロットにはコードを外すよう伝えて‼ 応じない場合には強制解除するわ‼」

 「しかし……!」

 「こうなったらパイロットの命が優先よっ‼ たとえ花柩を無駄にしても……‼」


 冷や汗が彼女の手に滲む。


 「ダメです‼ パイロット応答しません‼」


 先ほどまで司令室に響いていた双樹の声は、いつの間にか止んでいた。


 「貸して‼ 私が代わる……!」


 花澤は無理矢理回線を奪い取った。


 「双樹さん聞こえる⁉ 今すぐコードを外して! 花柩が拒絶反応を起こしてるの、このままだと貴方諸共、弾け飛んで死ぬわよっ‼」


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