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4.闇より這い出るもの
広場の霧がさらに濃くなり、辺りの視界を奪っていく。村人たちはアシュルとセラの指示に従い、足早に教会へと向かうが、恐怖に震える声があちこちで漏れた。
その霧の中から、重く歪んだ影が形を成し始める。獣のようにも、人のようにも見える異形の魔物だ。
村人の一人が叫ぶ。
「逃げろ! こいつは瘴気の化け物だ!」
避難し始めていた農民に恐怖が一気に伝染する。
だがアシュルは動じなかった。槍をしっかりと握り締め、魔物へと距離を詰める。
「落ち着け。村人を守るのは俺たちの役目だ。」
彼は冷静に自らに言い聞かせる。
魔物が低い唸り声を上げ、巨大な爪を振りかざす。アシュルは素早く身をかわし、反撃の槍を突き出す。
「セラ、村人の安全を最優先に! 俺が食い止める!」
セラは頷き、慌てて子どもや老人を連れて教会の中へ走った。
アシュルの槍が魔物の身体を貫くが、瘴気の力がその傷をすぐに癒していく。
「簡単には倒せそうにないな……」