すみませんが、恋愛ルートは管理させていただきます。
御機嫌よう。私、ウィステリア・メイズ メイズ伯爵家の長女ですのよ。
お察しの通り、異世界転生してきた転生族です。ついでに言えばこの世界も乙女ゲームの一種、らしい。
らしい。というのは私がこのゲームの略称どころか題名も覚えていないからなんだけれども、たいして不便ではない。だってモブだから。メインキャラでもその取り巻きでもないTheモブ。多分ゲームでも全身真っ黒で背景状態な人間。それが我々だ。分かるかな、私の名前、日本語訳すると「藤・梔子」なんだぜ。否、いいけどさモブとしては結構贅沢な御名前なんだけれども、せめてさ、ラテン語とかさ、ひねってほしい。
「ウィステリア、大丈夫?」
「えぇお母さま」茶色の髪、黒の瞳、まさしくモブな色彩のこの女性、私の実の母だが、彼女も転生者である。
「そう?ぼんやりしていたから、、、風邪かしら」
「ちょっと、此の世に生まれ落ちた理由を、考えていてな。」
「大丈夫?もう中二はやめてちょうだいな。」 はい、引っかかった。この世界に「中二(病」という単語はないぞ、まだまだ甘いなお母さま。
「あなたももう十七。お友達と毎日現実を見て、青春しなさい。」 お母さま、「青春」という単語もございません。
「どうなさったの」
「おばあ様」白髪に茶色の目の、御年六十七歳のおばあ様、此の方も転生者であらせられるぞよ。
「お義母様、ウィステリアが十七にもなって人生をつまらなく過ごしているのです。」
「それはいけないわね。ウィステリア、ちょっとお友達とタピってきなさい。スタバでも可」
、、、もうおばあ様にいたっては隠す気ゼロなんじゃねえの?「タピる」とか「スタバ」とか、現代っ子じゃん。リア充じゃん。
「一時一時、楽しまなければマジ萎えるわよ、ガン萎えよ。」あんな、ばあちゃん、あんた絶対前世ギャルだろ、言葉がもうそれだもの。お母さまもよく気が付かないな、逆に感心しちゃう。
しかし、ここで「タピル?ガンナエ?なんです?それ?」なんて言ってはいけない。言えば二人は気付き傷つく、本人たちが隠そうとしているのなら、私は協力を惜しまない。
何故ならば
「きゃああぁぁぁ!!ほんとに『マジエピ』の世界に転生しちゃったのね~!モブだけど、推しのローズマリィーたん(悪役令嬢)と同じ世界にいれるなら、もうなんだっていいわ!ハァ~マジ神様ありがとぉ
ついでに聖女ぶっ殺しといてくれると助かります。ローズマリィーたんは王子のクラウスとハッピーエンドじゃないといけないから。」
母は悪役令嬢ガチ勢 多分マリィーたんのグッズ神棚作って拝むタイプ
「あーマジ異世界転生ワロタ!マジ神 あざ丸水産 聖女きゃわ~♡ プリズムしか勝たん~!はぁもう天使じゃね?あ、いや設定天使だったわwプリズムはウチが幸せにする。逆ハーエンドまでもってって。
つか、悪役令嬢マジむかつくし。何アイツ天使プリズムたそにいじめとか、自分に自信がない証拠じゃんマジ許してるプリズムたそ可愛すぎ」
祖母はヒロイン至上主義ギャル 解釈違いは真っ向から応戦するタイプ
お察しの通り、この二人は転生者とばれると色々面倒になりかねない。かたや悪役令嬢推しとヒロイン推し。純愛一筋と逆ハー希望。加えて嫌いなキャラは相手の推し。うん、戦争だこれは。ガチ勢と至上主義、バッチバチやぞこれ。野次馬としてなら拝みたいけれども、関係者となると話が違う。ラブ&ピースの精神でいこうや。ゲームのストーリーを覚えていれば、そこらへんも上手く回避できるのだろが、繰り返すように私はゲームのことを殆ど覚えていない。ヒロインや悪役令嬢のことも上の二人からのお話で、「あぁ、なんかそんなのいたな。」というかんじ。じゃあ、逆に何をお前は覚えているんだ?と聞かれれば、「攻略対象全員の、身長・体重・足のサイズ・血液型・趣味嗜好」は空で言える。『え、怖い』と引かれてしまってもしょうがない。
私がこのゲームをプレイした理由は、攻略対象が理想の人物達ばかりだったからである。しかし!私は純粋に攻略対象との疑似恋愛を楽しむ為にゲームソフトを買った訳ではないぞ。そう!このゲームは理想の「攻め」と「受け」がいるのだ。
なんせ、私の前世は所謂『腐女子』というやつで、お母さまの言う『マジエピ』をプレイしていたのも攻略対象のビジュが好かったからだ。男同士の絡みを拝まんとやってみれば、当然というべきか乙女ゲームなので攻略対象同士の絡みは少なく、、、もないが全体的にヒロインとの糖分がド高くプレイ中片時もコーヒー(ブラック)が手離せない状況だった。ストーリー展開はベッタベタなのに、桃色パァラダイスで始終「何処のバカップルだ‼」と叫んでしまう程だった。 、、、辛い。
そんなんでも、多分全部クリアしたと思う。止めたらソフトを買った金が無駄になるような気がしたのと、攻略対象目当てなのにクリアしなければ、妄想できないし創作もできない。同人誌も書けないので、きっとクリアしたのだろう。BGM私は公式のストーリーを覚えてなくて、カップリング妄想ばかり鮮明に覚えているのでしょうか。
「テリア、晩御飯の時間だよ。一緒に行こう。」良いね、テリア、可愛いよね。ヨークシャーテリア可愛いよ、うん。この世界にいるのかは別だけどね、うん。
「お父様、ええ、一緒に行きましょ」
お父様と食卓に向かいながら、話題は自然と一週間後のことになっていた。
「とうとう、『マジカル・エンゼル・フォーリン・ラァブ学園に入学だね、いやはや子どもの成長は早いなぁ、、。」製作者ァ!!ネーミングどうなってんの!?なんで【ラァブ】?もうそこまでいったら単純に【ラブ】で良いだろ。なんで一手間加えちゃったの?
「私、不安だわ。ねえお父様、入学式に絶対来てね、」こんな名前の学校なんて鳥肌もんだ!
「勿論だとも!娘の晴れの日に出席しない親などあるものか!」
「有難う!お父様‼」
ホントにありがと、親父。あんた良い親だよ。純粋に娘の入学祝ってくれるもんね。
「んっんん!ウィステリア、いよいよ来週入学式ね、おめでとう。」
「ありがとう、お母さま」
「あ、あぁそう、リゼロ公爵家のご息女、ローズマリィー様も御入学なさるそうよ、ローズマリィー様は文武両道だと評判で、顔もお美しく神々しく人望も広く加えて「お母様」
「つまり、何?」
「え!あ、そう!これを機に仲良くなっておきなさい、ということよ。きっと貴女の良き先生になってくれるわ!」ホントかねぇ~
「お待ち!ウィステリア。聖女候補の方も御入学されるらしいからね、きっと心細いでしょう。貴女は優しいから、助けになってあげなさい。」おぉ、立派な建前
「はい、お二人の助言は心に留めておきますわね、」
「お友達もつくるわ。いつか家に招待できるような友達を、ね」()だからお前ら首を突っ込むなよ?私の青春だぞ?
「その通りだね。リゼロ公爵家は格式が高いし、聖女候補は神聖な存在だからあまり関りを持つと、双方に良い影響どころか、最悪な事態も引き起こしかねない。」親父、分かってるぅ!
「テリアはテリアで、楽しみなさい」もう!本当に最高!愛してるぜ、親父ィ!!
私は他のまんがの主人公腐女子がやらかした溺愛なんぞのドジは踏まん。あくまで、推しのカップリングの為に従事し、ヒロインとかはもうこの際ほっぽって、私のCPに邪魔立てするのならば、容赦なく排除するし、黒子として学園をエンジョイする。
待ってろよ、ヒロインと悪役令嬢。お前らの恋愛ルートは、私が管理させていただく!