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3話 式神と使い魔

「君は術を使えるようになったほうがいい」

家に着くなり夜叉が言った。


「君と私は魂を共有しているから私の魔力や妖力も共有されているはずだ。だから君も自分の身を自分で守るためにその力を使えるようになったほうがいい」

「そんなことできるかな…」

「できるさ!私が直接教えてやるんだからな」

夜叉は自信満々に笑った。


二人は庭に出た。ひまわりの花は少し萎れてきているが、まだまだ綺麗だ。


「まずは合掌して」

見様見真似で手を合わせる。

「そうそう!飲み込みが早いな!そしたら次にこう唱えるんだ」


“使魔召喚”


小さな真っ黒なチワワのようなものが現れた。ただし目は四つだ。


修一もやってみる。


「使魔召喚」

何も起こらない。


「できないや…どうやったら使える様になるの?」

「んー…。私はなんとなくの勘でやってきたから…どうやって説明しようか…」


夜叉は身振り手振りで必死に何かを伝えようとするが、全くわからなかった。

どうやら夜叉は説明が苦手なようだ。


その後も何度もやってみたが、結局夕方になってもできるようにはならなかった。


「まあ魔術には向き不向きがあるからな。神でも使えるやつは私以外いないし」

「夜叉にしかできないのに僕にできるわけないだろ」

「そうかな、そんなに難しくはないけど」


才能のある奴の『難しくない』ほど参考にならないものはない。


「じゃあとりあえず一番簡単な妖術から覚えるか」

「最初から簡単なのやらせてくれればよかったのに」

「君は魔術を使うことが理論上可能だ。使えればものすごいアドバンテージになるんだがな…」


夜叉のすこし残念そうな顔を見た修一は、なかなか上達することができない自分自身に苛立ちを感じた。


「妖術の中で一番簡単な術は式神召喚術だ。この術は自身の心の支えになっているものや、深い繋がりがあるものを式神に変換して具現化させる術だ。まー君の場合は、魂の共有者である私がいるから創り出すことはそう難しくはないだろう」


夜叉は合掌してみせる。

驚いたことにそのやり方は使魔召喚と何も変わらなかった。


「合掌したらその後に『式神召喚』って唱えるんだよ。やり方はわかったね?やってみて!」

「夜叉は式神出さないの?」

「私の式神召喚術は使魔召喚術で上書きされちゃったからもう使えないんだよ。でも使えた頃は犬の式神だったなー。なつかしー」

「ふーん」


修一は掌印を組んで唱えてみた。


“式神召喚”


すると視線の先に白いモヤモヤとした煙のようなものが現れた。


「上出来!初めてやったにしてはすごい!きっと上達する」

褒められて素直に嬉しい。


「ただいまー」

おばあちゃんが帰ってきた。


集中力が散漫になったことで式神は消えた。


夜叉も黒猫の姿に戻っている。


「おかえりー」


修一と黒猫は室内に戻り、窓を閉めた。

すっかり暗くなった外からは部屋の明かりが灯篭のように光っていた。


***************************


朝、目が覚めると修一はいそいそと家を出る支度をした。


そんな彼を見て黒猫が話しかける。

「やけに嬉しそうじゃないか」

「久しぶりに学校の友達と遊ぶんだ!」

「そうか、気をつけてー」

黒猫は目を閉じ、眠りに入った。


修一は駆け足で家を出た。


久しぶりに会っただけあり、盛り上がった。


カラオケに行き、昼ごはんを食べた後、公園でサッカーをすることになった。

元々球技が得意ではなかった修一はめちゃめちゃに負けた。

「ふー疲れた」


みんなで日陰に入りながらスポーツドリンクを飲む。

暑さでぬるくなっていたがそれでも疲れた体に染み渡る。

彼がリラックスしていると友達の一人が何かを見つけた。


「わー猫だ可愛い」


修一はまさかなと思いながら振り向く、そこにはよく見慣れた黒猫がいた。

「どこかの家の飼い猫かな」

「それ俺の家の猫だよ」

「マジで?超可愛いじゃん」


黒猫は皆に可愛いと言われ満更ではなさそうだ。


修一は猫を両手で掴むみ、トイレの影に連れて行った。


黒猫が夜叉の姿に変わった。

いつもと違いポニーテールで運動着を着ている。


「今日は珍しく違う格好だね」

「あの服はめちゃくちゃ暑いからな。かっこいいけど普段使いには向かないな」

「で、なんでついてきてんだよ」

「見守りだよ」


彼女の過保護具合にイライラした修一は語気を強める。

「なんで見守りなんかするんだよ」


すると夜叉は声を低くして言った。

「街に放っていた使い魔が2体やられた」


使い魔が倒された!

それ以上に修一は夜叉があの化け物を放し飼いにしていたことに驚いた。


「なんで勝手に出して…」

修一の注意を誤魔化すように夜叉は話をすすめた。


「とても強力な奴が、だ。そんなことができるのは相当強い神にしかできない」

「つまり、どう言うこと…?」


夜叉が深刻な顔で言う。


「危ないんだよ。君を一人にすると」

「でもさ、ずっとついてくるわけにはいかないだろ?どうするの?」

「大丈夫!秘策がある」


夜叉の姿が修一と同年代くらいの女の子に変わった。

「どう?かわいいでしょ」

「え?どういうつもり…まさか」

「そう!夏休みの間だけ私は君の親戚!これでついて行っても怪しまれない!」

「えーー?!」


「試合やろー」

友達の声がする。

修一は夜叉の方を見た。

彼女は行ってらっしゃいと言うようににこやかに笑う。

修一はもといたところに小走りで戻った。

その日は日が沈むまで遊び呆けた。

全て書き終わっているので毎日投稿します。

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