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悪魔の象徴  作者: 小籠pow
第3章 学園編~学園対抗戦~
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第34話 圧倒的な雰囲気

「じゃ、頑張ってな」


 しばらく談笑を楽しんだ後、ロベールさんたちはそう言って別の人たちのもとへと歩いていった。


 人脈を作るという僕に気を使ってくれたのだろう。


(とは言っても……次はどうしよう)


 さっきはロベールさんが話しかけてくれたおかげで何とかなった。


 しかし、次も同じようにうまくいく保証なんてどこにもない。


 現に周りを見渡しても話せそうな相手はおらず、またひとりぼっちになりかけている。


(さっきみたいに話しかけてくれる人いないかな……)


 そんな甘えた考えが頭をよぎったその瞬間だった。


「君がカインくんだよね?」


(き、きた!)


 背後から声をかけられ、僕は反射的に期待と緊張で胸を膨らませる。


 すぐさま振り返ると、そこに立っていたのは——


 とてつもなく整った顔立ちの、まるで絵から抜け出てきたような美青年だった。


 リアムさんやロベールさんだって十分整った顔立ちだけどこの人は別格だ。


 鋭い眼差しと柔らかな微笑み。その全てが完璧すぎて眩しく感じるほどだ。


(でも…誰だろう)


 僕はこの人を知らなかった——でも、彼は僕の名前を知っている。


「あ、あの……はい。カインと申します!初めまして!」


 少し上擦った声でそう答えると、青年は安心したように微笑んだ。


「良かった。人違いだったらどうしようかと思ったよ」


「そ、その……あなたは?」


「はじめまして。僕は...」


「珍しい組み合わせっすね」


 そのとき、すっと横から割って入ってきた声。


 見ると、アゼル先輩がすぐ隣に立っていた。


「アゼル先輩……!」


「アゼルか。久しぶりだね」


「一ヶ月前に会ったばっかりじゃないですか」


「一ヶ月も君に会えなかった僕の気持ち、分かってくれよ」


「はいはい……」


 二人のあまりにも自然な掛け合いに、僕は完全に置いてけぼりを食らっていた。


 目の前で繰り広げられる親しげな会話に言葉を挟むタイミングを見失う。


 すると、二人は僕の様子に気づいたようだった。


「ごめん、置いてきぼりにしてしまったね」


「大丈夫ですよ!」


「では改めて、僕はアーサー!シャイターンの第1王子のアーサーだ!君にはイリスの兄といった方が分かりやすいかな?」


「っ……!」


 アーサー王子——その名を聞いた瞬間、脳が真っ白になる感覚が走った。


 シャイターンの歴史上、類を見ない天才であり既に次の国王になるのが決まっているとかいないとか。


(え、まさか……本物!?)


 驚きのあまり、足元がふらつきそうになる。


 これまで驚くことは何度かあったけれど、気絶しそうになったのはダンタリオンと契約したとき以来かもしれない。


(ていうかアーサー王子って実在してたんだ……伝説の存在かと思ってた)


「ほら、こいつびっくりしやすい体質なんで絶対こうなると思いました」


 アゼル先輩が肩をすくめながら笑う。


「君から聞いていた通り面白い子だね。それに……」


 そう言ってアーサー王子はじっと僕の目を見つめてきた。まるで心の奥まで見透かされているような、不思議な感覚。


「うん。アルノーさんが気に入るのもなんとなく分かる気がするよ」


「じゃあ次の特訓相手はカインで……」


「それは無いね。カインくんに才能があるとはいえ、僕のお気に入りはアゼルだけだから」


「はぁ……」


 アゼル先輩が呆れたようにため息をつく。どこか慣れているような反応だ。


「ただ……」


 また僕を見つめ直しながら、アーサー王子は穏やかに微笑んだ。


「カインくんもたまには王宮に遊びにおいでよ。時間が合えば僕が稽古をつけてあげる」


「え、えっと……! は、はいっ! よろしくお願いします!」


 まともに声が出たのが奇跡だった。


 しかし、僕は何も考えずに返事をしてしまっていた。


(あれ……今”よろしくお願いします”って言っちゃったよね!?)


 心の中にじわじわと後悔が広がる。


 もう少し冷静に考えてから答えるべきだった。


 こんなすごい人の稽古を受けるなんて荷が重すぎる。


「……あーあ、頷いちゃったか。まぁ、自業自得だからな」


 横でアゼル先輩が肩をすくめながら、呆れ半分、面白がるような口調でそう言った。


 一方、当のアーサー王子はというと——まるで僕たちのやりとりが微笑ましいとでも言うように笑っていた。


 それから三人で他愛もない話をしていたが、ふいにアーサー王子が何かを思い出したように言葉を発する。


「おっと、もうこんな時間か。旧友と話す約束があってね……そろそろ僕は失礼させてもらうよ」


 そう言って王子は背筋を伸ばし、優雅な所作でその場を後にした。


 去り際、僕の方へ軽く振り返り笑顔を向けながら——


「ちゃんと王宮に遊びに来るんだよ、カインくん!」


 と、まるで当然のように釘を刺してくる。アゼル先輩にも同じように笑みを向け手を振ると、そのままゆっくりと人混みに紛れていった。


 残された僕はあまりの出来事にいまだ思考が追いついておらず、ぽかんとした顔で立ち尽くしていた。


 すると、隣にいるアゼル先輩がふっと肩の力を抜いたように呟いた。


「俺とお前って意外と似てるのかもな」


「……えっ!?どこがですか?」


 思わず反応してしまうと、アゼル先輩は薄く笑って言った。


「やばい人に目をつけられるところとか」


「……あー」


 気づけば僕も思わず納得してしまっていた。


 確かにアゼル先輩もよくとんでもない人に振り回されている印象があるし、自分自身もそれに似たような目に遭っているような気がする。


 そんな会話がどこか面白くて二人でふっと笑ってしまった。


 笑い終わると、アゼル先輩はくるりと体を半回転させて言った。


「……俺もそろそろ行くわ」


「はい!ありがとうございました!」


 僕は急いで頭を下げた。


 すると、立ち去り際のアゼル先輩がこちらを振り返り、真面目な口調で言葉を投げかける。


「アルノー先生に言われた“人脈作り”ってやつ……順調に見えるけど、せっかくの機会なんだ。1回くらいは自分から話しかけてみれば?」


「……見てたんですか!?」


 まさか、先ほどまでの僕の動きを見られていたとは思わず顔が熱くなる。


 確かに今まで話せたのはどちらも向こうから話しかけてくれたからだ。


(でも、アゼル先輩の言う通りだ……せっかく与えられた機会なんだから待ってばかりじゃダメだ)


 心の中でギュッと拳を握りしめ、僕は小さく頷いた。


「……頑張ってみます!」


「陰ながら応援してるわ」


 そう言ってアゼル先輩は爽やかな笑みを残し、背を向けて歩き出した。


 その後ろ姿を見送った僕は深く息を吸い込み——改めて気合いを入れ直す。


(よし……!)


 恐怖も不安もある。でもそれ以上に今は前に進まなきゃという思いが強かった。


 僕は覚悟を決めて、歩みを進める。


 こうして僕は話せそうな相手に片っ端から声をかけてみることにしたのだった。


少しずつですが、多くの方々にお読みいただけるようになり大変嬉しい限りです。今更かよという話ではありますが、初めての作品であり拙いところもありますゆえご容赦願いたいです。リアクションやポイントは大変励みになりますのでお暇がある際にでもしていただければ幸いです。

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