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悪魔の象徴  作者: 小籠pow
第3章 学園編~学園対抗戦~
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第2話 魔紋五傑の集い ①

 四年生Sクラスの教室——元々はレイヴンの教室であるが今は魔紋五傑(まもんごけつ)の全員が集合していた。


 目的は一つ。間もなく開催される《学園対抗戦》についての会議だ。


 机を囲むように座る五人。レイヴンとヴィクターは眉間に皺を寄せ、ノエルは不敵な笑みを浮かべる。フェリスは慌てながらあたふたしており、アゼルはというと……机に突っ伏しかけながらあくびをしていた。


 それぞれがそれぞれのスタイルで会議に参加している。


 そんな空気の中、言葉を発したのはノエルだった。


「……改めて、去年の件はごめんなさい」


 彼女は隣に座るレイヴンを見ながら静かに頭を下げた。


 自分が出場できなかったことがシャイターンの敗北に繋がった——その自責の念は今も消えていない。合理性を重んじるノエルにとって、感情の問題で任務を果たせなかったことは自分への最も大きな裏切りでもあった。


 だが——


「お前のせいじゃない。……俺が勝っていれば済んだ話だ」


 レイヴンの低く落ち着いた声が教室に静かに響く。


 学園対抗戦の試合形式は大きく二つに分けられる。


 1つ目は勝ち抜き戦。先鋒、中堅、大将の3人チームで行い、勝者はそのまま次の相手と戦う形式だ。


 2つ目は攻城戦。こちらも3人チームで自陣の旗を守りつつ、相手の旗を奪うというものだ。


 昨年の勝ち抜き戦で“大将”を務めたのは当時三年生だったレイヴンだ。彼は誰よりもその敗北を重く受け止め、責任を感じていた。


 フェリスとヴィクターもまた、自分たちが当時の4年生に出場権を譲ったことが敗北の一因と考え、責任を感じていた。


 しかし、そんな空気を読まずに正論を放つ人物が一人いた。


「はぁ…ほんとにみんな難儀な性格してるっすね。どう考えても悪いのは去年4年生たちでしょ」


 アゼルがあくび混じりにそう言ってため息をついた。


 実際、アゼルの言う通りであり、ここにいる誰もが責任を感じる必要はないのだが——


「みんながみんな、貴方のように考えられる訳ではないのよ」


 ノエルは冷静にアゼルへと返答する。


「いつも合理的合理的言ってるくせに…」


 その言葉に冷たい視線をアゼルに向けるノエル。その目には図星を突かれた事による苛立ちの感情が映っていた。


 だが、アゼルはその視線をさらりと受け流しながら飄々と続けた。


「アルノー先生も言ってたけど、大事なのはこれからでしょ」


「……それはその通りだな。だからこうしてお前たちに集まってもらった」


 レイヴンがその言葉を拾い、場を仕切り直すように視線を全員に向けた。少し重たかった空気が彼の一言で少しだけ緩んだ。


「じゃあ、まずは最優先事項。——誰がどの種目に出るかを決めないと」


 ヴィクターが静かに切り出すと、全員の目が一気に真剣さを増す。


「俺は攻城戦に出たい。……障壁バリアは守るのが得意だから。1対1の勝ち抜き戦より3対3の攻防の方が俺には合ってる」


 ヴィクターの言う通り、勝ち抜き戦は1対1の形式で進むため個人の能力が問われる。それに対し、攻城戦は3対3で行われ、攻守に優れた人物を配置し、指揮官的な役割を担う者がいると有利とされていた。


 そのため、彼の提案に誰も異を唱えない。納得の判断だった。


「じゃあ、私も攻城戦に出るわ」


 ノエルが軽く微笑みながら続ける。


「個人戦でも問題ないけれど、攻城戦の方が私の分析(アナライズ)は活きるわね」


 分析アナライズという象徴を持つ彼女の戦術的判断にはやはり信頼が置ける。


 これもまた納得の判断であるため異論を唱えるものはいなかった。


 次に口を開いたのはレイヴンだった。


「俺は勝ち抜き戦に出よう。象徴(シンボル)的にも個人戦の方が向いている……そして何より去年の借りを返したくてな」


 その言葉には静かな闘志が込められていた。


 そして、彼は隣のアゼルに視線を向ける。


「アゼル、お前には——勝ち抜き戦の“大将”を任せたい」


「……は?俺がっすか?」


 アゼルが露骨に嫌そうな顔をするがレイヴンは深く頭を下げた。


「頼む」


 その姿を見たアゼルは一瞬驚いたような表情を見せたが、すぐにため息をついて肩をすくめる。


「はぁ...分かりましたよ」


「ありがとう……助かる」


 どこか面倒くさそうな態度ではあったが、レイヴンが嬉しそうに笑いかけるとアゼルはそっぽを向いてそれ以上何も言わなかった。


「てことは勝ち抜き戦にあと一人。攻城戦にもあと一人か……」


 ヴィクターがフェリスに視線を向ける。


「フェリス、どうする?」


「私はどっちでもいいよ〜!」


 フェリスはいつも通りの明るい調子で答えたが、その目にはしっかりとした覚悟があった。


 しばしの沈黙の後、ヴィクターが口を開く。


「多分、残りの一枠は一年生のSクラスから選出されるだろう。だったら、フェリスは攻城戦の方がいい」


「え、どうして?」


「連携を考えた時に経験と信頼のあるフェリスの方が一年生より安心できる。攻城戦はチームの一体感が重要だからな」


 ヴィクターの冷静な判断にノエルとレイヴンも頷いた。


「なるほどね!……それなら私は攻城戦で頑張っちゃうよ!」


 フェリスは元気いっぱいにそう言って拳を小さく握った。


 こうして、魔紋五傑の今年の布陣が決まったのだった。


少しずつですが、多くの方々にお読みいただけるようになり大変嬉しい限りです。今更かよという話ではありますが、初めての作品であり拙いところもありますゆえご容赦願いたいです。リアクションやポイントは大変励みになりますのでお暇がある際にでもしていただければ幸いです。

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