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悪魔の象徴  作者: 小籠pow
第1章 入学試験編
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第5話 新たな出会い

 入学試験の日まで残り1週間となった。


 地獄のトレーニングの日々を辛うじて乗り切った僕は試験会場である王都ゼーレクスに向かう準備を始めた。


 この街から首都までは馬車で3日ほどかかるので何があっても遅れないよう、今日から向かうためだ。


 準備を終えた僕は玄関に向かった。


「忘れ物はない?」

「大丈夫だよ」

「着替えは持った? お金は?」

「大丈夫だって!」


 しつこく心配する母さんを宥めながら僕は靴を履いた。ちょうどその時、仕事の支度を終えた父さんが駆け寄ってきた。


「母さん、カインなら大丈夫だ。信じて待とう!」

「…そうね。お母さんもお父さんもカインのことを心から応援してるからね!」

「ありがとう。じゃあ、行ってきます!」

「「行ってらっしゃい!」」


 泣きそうになる2人に苦笑しながら家を後にし、馬車乗り場へと向かう


 馬車の乗り場に着くと、予定の馬車が既に停まっていた。行き先を告げて前払いでお金を渡すと僕は馬車に乗り込んだ。


 中は6人ほど座れる広さであり、既に1人——僕と同じくらいの年齢の女の子が座っていた。


 しばらく無言の時間が流れ、気まずさを感じながらも何か話すべきか考えていた。


「……」


 そんな時、彼女が小さな声で——


「こ、こんにちは」


 と挨拶してきた。そのため僕はにっこりと笑って返し、自然に会話を始めた。


「どこまで向かうんですか?」


「え、えーと...王都まで向かう予定です」


「ってことは僕と同じですね!」


「ほ、本当ですか!」


 会話を交わしていると、時間になったのか馬車がゆっくりと動き出した。


「もしかして入学試験を受けに行くんですか?」


「よく分かりましたね!ということはあなたも…」


「は、はい。私も入学試験を受けます」


「凄い奇遇ですね! あ、自己紹介がまだでしたね。僕はカインっていいます!」


「私はアリアっていいます。すみません、人と話すのがあまり得意じゃなくて…」


 悲しそうに俯くアリアさんを元気づけるように続ける。


「全然大丈夫ですよ! それよりも試験を受けるってことは同じ歳ですよね?」


「多分…そうですね」


「じゃあ、敬語は抜きにしよう!」


「わ、分かりました。あっ…」


「ふふっ。じゃあ、僕から敬語抜きでいかせてもらうね。アリアさんは慣れてきたらで大丈夫だよ!」


 そういうとアリアさんは「ありがとう…ございます」と小さく微笑んだ。


 こうしてアリアさんと話すことになったが、少しずつ会話も弾み、いろいろな話をするようになった。


 どうやら彼女は僕の街よりも田舎の村から来たようで、既にこの馬車には僕よりも2日ほど早く乗っているらしい。


 僕が乗ってから1日が経った頃にはアリアさんも次第に緊張が解け、自然に敬語をやめてくれた。


「じゃあカインくんも上位悪魔と契約してるんだね!」


「うん! 僕の悪魔はダンタリオンって名前で象徴(シンボル)は『変化(メタモルフ)』」


「私が契約してる悪魔はレヴィアタン。象徴(シンボル)は『激流(カタラクト)』で水を自在に操れるんだけど、全然大したことないよね…」


 僕も自己肯定感は低いほうだが、どうやらアリアさんの方はそれ以上に低いらしい。


 そんな雑談も続く中、突然馬車が激しく急停止した。


「びっくりした。アリアさん大丈夫?」


 アリアさんは驚いた表情だが無言で頷いた。アリアさんの無事を確認すると、僕は御者さんに声をかけようと馬車から降りた。


 外に出るとゴブリンの群れに囲まれていた。


「本来、この道には魔除けが施されて魔物が出ないようになっているのですが…どうやらその力が弱まっていたのかイレギュラーが発生したようです」


 御者さんは焦りながらも状況を説明してくれる。


「申し訳ありません! お客さんのどちらかで戦える方はいませんか? 私の悪魔は下位なので戦闘はからっきしなんですよね」


 ゴブリンは単体ならF級程度の魔物だが、群れると一気に戦闘力が上がりD級の脅威となる。下位悪魔の契約者では到底敵わないし、怯えているアリアさんに戦わせる訳にはいかない。


 (僕がやるしかないか…)


 幸いゴブリンの対処法は試験勉強の一環として頭に叩き込んでいたし、この半年のトレーニングの成果を試す絶好の機会でもあった。


「僕が倒します!」「わ、わたしが倒します!」


「「え?」」


 ほぼ同時に僕たち双方が戦闘を申し出たため、互いに困惑した顔で見合った。


 だが、アリアさん自身も戦いたい気持ちがあるようなので協力することに決めた。


「アリアさん、ここは2人で協力しよう!」


「そうだね!」


 そうして役割分担を即座に決めることになった。


「今にも襲ってきそうだから手短に作戦を立てよう。僕は前衛、つまり近接戦闘が得意なんだけどアリアさんってサポート出来たりする?」


「わたしは遠距離攻撃が得意だからちょうどいいかも」


 即座に作戦が固まると、僕は様子見をしていたゴブリンたちの方へ駆け出した。


 腕につけているトレーニング用の鉄の重りを象徴(シンボル)によって瞬く間に剣の形に変化させ、その剣に魔力を込めて手前のゴブリンを斬りつけた。


(少し浅かったか……でも、このまま追い打ちをかければいける!)


 一撃では仕留めきれなかったが、先手を打たれて動揺しているゴブリンに次々と連続攻撃を加えた。


「グギャア!?」


 そして、僕が斬りつけたゴブリンは雄叫びをあげながら絶命した。


 1匹倒して安心したのも束の間、仲間を失った激昂したゴブリンたちは一斉に襲いかかってきた。


「大丈夫、わたしに任せて。ウォータープリズン!」


 アリアさんがそう叫ぶと、どこからともなく現れた水流がゴブリンたちを飲み込んで水の牢屋のようになる。だが、1匹だけ水流から逃れたゴブリンがいたので僕がその相手をすることになった。


 1対1ならゴブリンには負けない。相手も剣を使う個体だったため、鍔迫り合いとなった。


 何度か剣をぶつけ合うが、力と手数で上回っていた僕はゴブリンの隙を突いて首を一閃で落とした。


 自分の相手を倒し、アリアさんの様子を確認しようとした矢先——


「カインくん! 危ない!」


 アリアさんの水牢から脱出したゴブリンが僕の不意をついて攻撃してきた。


 (間に合え!)


 僕は剣を素早く盾の形に変化させて魔力を込めることで何とかゴブリンの攻撃を受け止めた。そして、すぐさま盾を剣に戻し、ゴブリンの首を切り落とした。


「危なかった~。アリアさん、ありがと! 」


「元はと言えば私がうっかり逃がしちゃったせいだし、本当にごめんなさい!」


 平謝りするアリアさんを宥めながら、他のゴブリンたちの様子を確認する。


「ほかのゴブリンはちゃんと溺死させたので大丈夫です!」


 アリアさんの言葉どおり、残りのゴブリンたちは水に閉じ込められて次々と溺死していた。


 アリアさんの能力の恐ろしさを目の当たりにし、もし自分がゴブリンの立場だったらと想像して僕は身震いした。


 その様子を見たアリアさんがまたもや平謝りし始めてしまったので僕はまた宥めるのだった。



 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



 種族:上位悪魔

 真名(まな):ダンタリオン

 象徴(シンボル)変化(メタモルフ)

 共鳴率:20%


少しずつですが、多くの方々にお読みいただけるようになり大変嬉しい限りです。今更かよという話ではありますが、初めての作品であり拙いところもありますゆえご容赦願いたいです。リアクションやポイントは大変励みになりますのでお暇がある際にでもしていただければ幸いです。

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