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悪魔の象徴  作者: 小籠pow
第2章 学園編~魔紋五傑攻略戦~
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第29話 エリオスvsノエル ②

 開始の合図と同時に動いたのはエリオスだった。


 エリオスは静かに一呼吸つき、鋭い眼差しをノエルに向ける。


 そして迷いなく一歩踏み出すと、《加速(アクセル)》を解き放った。


(まずは小手調べだ)


 次の瞬間、彼の身体は空気を切り裂くほどの速度でノエルとの間合いを詰める。


「速い……!」


 観客席からも驚嘆の声が漏れた。


 視界が一気に歪むほどの速度で間合いを詰め、そのままノエルへ鋭い斬撃を叩き込んだ。


 だが——その刃はむなしく空を切った。


 ノエルは初めからそこに剣が振り下ろされることを知っていたかのように軽やかに身体をひねって回避していた。


 エリオスは小さく舌打ちしながらも、止まることなく次々と攻撃を繰り出す。


 幾重にも重ねられた斬撃の軌跡がノエルを襲う。


 しかし、彼女はまるで踊るように全ての攻撃を紙一重で躱していく。その表情には一切の焦りもなく、むしろ余裕すら感じさせた。


「…こうも完璧に避けられるとはな」


 エリオスは苛立ちを抑えながら距離をとって仕切り直す。


「戦いにくそうね」


 ノエルが静かに微笑んだ。その余裕に満ちた笑みにエリオスの表情が険しくなる。


「お前のことは尊敬していたが……今日でその評価は変わりそうだな」


 皮肉を込めたエリオスの言葉に対してもノエルは全く動じない。


「そう……でも、あなたの評価が変わろうと私には関係ないわ」


「……その余裕も今のうちだ!」


 再びエリオスは加速(アクセル)を発動し、更に速度を上げた。その速さに観客席の一年生たちが息を呑む。


「さらに速くなった!」


 だが、ノエルの余裕は揺るがない。華麗な舞踏のように彼女はことごとく攻撃を見切っていく。


「私の攻略法は事前に調べたのでしょう?」


「当然だ!」


 歯を食いしばり更に攻撃を激しくするエリオスを見つめ、ノエルは静かに言葉を紡ぐ。


「確かに速いわ。でも、その速度ではまだ私の分析(アナライズ)の許容範囲内よ」


 焦りを募らせるエリオスだが、その瞬間ふと先ほどの自分の行動を思い出した。


(……そう言えば人の思いがけない行動は『分析(アナライズ)』を上回ることがあるんだったか)


 彼は剣を握る手に力を込める。


「だったら——これならどうだ!」


 再びエリオスは《加速(アクセル)》を発動し、一直線に斬りかかる——しかし攻撃が届く瞬間、エリオスは自分自身でも予測しない動きを瞬時に取り入れた。


「……っ!」


 初めてノエルの瞳に驚愕が走った。分析(アナライズ)を超えた動きに一瞬対応が遅れ、袖が浅く裂ける。


 観客席がどよめく。


「へえ」


 魔紋五傑(まもんごけつ)側の席でアゼルが感心したように呟いた。


 ノエルは裂けた袖に触れ、小さく息をつく。


「なるほど、これは確かに予想外だわ……面白い」


 その言葉と共にノエルの表情が引き締まる。ここからは本気の戦いだと言わんばかりに。


「その不足の事態すらも分析(アナライズ)に組み込んでしまえばいい話ね。さあ、もう一度来なさい」


 エリオスは全力で《加速(アクセル)》を使い、同じ方法でノエルを翻弄しようと試みる。


 だが真剣になったノエルは冷静に動きを分析し、再び攻撃を完全に見切ってしまう。


「これで詰みね」


「...」


 焦るエリオスの心理さえ見透かしたノエルの静かな宣告にエリオスは心を決める。


(冷静になれ……分析されるならそれを上回る速度で叩き込むしかない!)


 心を落ち着けたエリオスは息を整え、集中を極限まで高める。


(……諸刃の剣になるかもしれんが、やるしかない!)


 そして彼は魔力を極限まで絞り出し、今まで使ったことのない領域の《加速(アクセル)》を発動した。


 今までとは違う異常な速度にノエルの瞳が大きく見開かれた。


「これは……!」


 あまりの速さにノエルの分析が追いつかず、彼女は必死に対処法を模索する。


「おおっ……!」


 観客席からも魔紋五傑(まもんごけつ)からも驚愕の声が上がった。まさにその瞬間、エリオスの剣がノエルの腕を掠める。


 しかし、それ以上は届かなかった。


 ギリギリのところでノエルは分析(アナライズ)を再構築し、身を翻して致命傷を回避した。


 その隙を突いて鋭くレイピアを突き出し、エリオスの首元に刃を添えた。


「……勝負ありよ」


 静寂が場を包む。ロザリアが手を挙げ、静かに宣言する。


「ノエルの勝ち〜」


 試合終了の宣言と共に観客席から大きな歓声と拍手が巻き起こる。


 エリオスは息を荒げ、膝をつく。


「……負けたか」


 そんな彼を見てノエルが穏やかに微笑む。


「いい勝負だったわ。あなたのこと少し見直したわよ」


 エリオスは苦笑いを浮かべる。


「嬉しくないな……」


 だがその表情に後悔はなく、むしろどこか誇らしげであった。


 しかし、立ち上がろとしたエリオスの体に痛みが走る。


 その時、養護教諭のロザリアが静かにエリオスの前に立った。


「お前、今の速度は共鳴率の限界を超えてるだろ?」


「....それしか勝てる方法がなかったのでな」


「はぁ…若気の至りは分からんでもないけど、養護教諭としては限界を超えた象徴(シンボル)の使用は絶対にやめて欲しいわ〜」


 緩い口調だがその目は真剣だった。


 エリオスは頷き「わかった」と静かに答えた。


 膝をついたエリオスにノエルが肩を貸して観客席に戻る。


 魔紋五傑(まもんごけつ)のメンバーはノエルの勝利を称えつつも、エリオスの実力と覚悟を認めていた。


 一年生たちもエリオスを称賛した。


 こうして魔紋五傑(まもんごけつ)攻略戦・第三戦、エリオス対ノエルの戦いは幕を閉じたのだった。

少しずつですが、多くの方々にお読みいただけるようになり大変嬉しい限りです。今更かよという話ではありますが、初めての作品であり拙いところもありますゆえご容赦願いたいです。リアクションやポイントは大変励みになりますのでお暇がある際にでもしていただければ幸いです。

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