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悪魔の象徴  作者: 小籠pow
第2章 学園編~魔紋五傑攻略戦~
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第28話 エリオスvsノエル ①

 魔紋五傑攻略戦、1年生で三番目に動いたのはエリオスだった。


 エリオスは挑戦相手である二年生のノエルがいる教室へと足を運んだ。


 扉の前に立つと、軽くノックをしてから一言告げる。


「失礼する」


 そう言いながら扉を開けると——


「はぁ……ほんとに来たよ」


 と、呆れたような顔をしたアゼルが目に入った。その横には自信に満ちた表情のノエルもいる。


「遅かったわね」


 ノエルが口元に薄く微笑みを浮かべながら言った。


 その様子を見てエリオスはすぐに理解した。ノエルの《分析(アナライズ)》によって自分の動きは既に読まれていたのだ。


「……っち」


 エリオスは大きく舌打ちをする。


 エリオスとノエルの関係はそこまで深いものではない。同じ五大貴族の後継者として顔を合わせたことがある程度だ。話したことも数えるほどしかなく、実際にはリアムよりも関係値が薄い。


 ただ、エリオスがノエルに対して抱いている印象は尊敬の一言だった。


 ノエルは15歳という若さで両親を失い、一人娘であったがゆえにフォルステッド家の当主を継ぐことになった。


 しかしそんな逆境にも関わらず、彼女が当主になってからもフォルステッド家の評価は一切落ちることなく、むしろ優秀な家として名声を保ち続けている。


 自信家のエリオスだが、もし今の自分が同じ立場になったらどうなるかを見誤るほど自信過剰ではない。だからこそ、それを軽々とやってのけているノエルに対して尊敬の念を抱いてしまうのも無理はなかった。


 ただし、問題は今の状況だ。


 エリオスは覚悟を決めて挑戦を申し込みに来た。それを軽く流され「遅かったわね」とまで言われては癪であり、舌打ちをするなというほうが無理な話であった。


 ノエルはエリオスの感情を見透かすように淡々と続ける。


「ごめんなさいね……あなたがなかなか来ないものだからアゼルが私を疑い始めて困っていたのよ」


 その言葉にエリオスは内心「なるほどな」と納得した。


 確かに、本来ならもう少し早く来るつもりだった。


 しかし、エリオス自身も意外なほどに緊張してしまい校舎をあてもなくぶらついていたため、この時間になってしまったのだ。


 つまり、人の思いがけない行動はノエルの象徴(シンボル)である《分析(アナライズ)》には反映されないということだ。これは貴重な情報だった。


「では、今から俺が言うこともわかっているな?」


「ええ。『今すぐに挑戦を受けてもらおう』でしょう?」


 エリオスは自分がこれから言おうとしていた言葉をそのまま当てられ思わず小さく笑ってしまう。


 しかし、すぐに真顔に戻り頷いた。


「では、闘技場で待つ」


 そう言い残すとエリオスは教室を後にした。


「お前はほんとに性格が悪いな……」


 二人になった教室でアゼルがため息混じりに呟いた。


「その性格の悪い女に忠誠を誓っているのは誰だったかしら?」


 ノエルが皮肉交じりに言うと、アゼルは呆れ顔で首を横に振った。


「そーゆうとこだぞ」


 アゼルはまたも言いくるめられ、ため息を吐いた。


「まあ、行くか」


「そうね」


 二人はゆっくりと席を立ち、教室を後にした。



※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



 闘技場には既に多くの人が集まっていた。


 一年生Sクラスのメンバーはエリオスが呼んだわけではなかったが、エリオスの様子を察したリアムが機転を利かせ、皆を集めていた。


 一方、魔紋五傑のメンバーはアゼルとノエルが闘技場に向かう途中で声をかけたことによって集まったのだ。


 ノエルとエリオスは既に闘技場中央に立ち、準備を整えている。他のメンバーはそれぞれ観客席に座っていた。


「エリオスも急に挑戦を申し込んだらしいけど、ノエル先輩には全部読まれてたらしいよ」


 リアムがそう告げると、一年生組は驚きを隠せなかった。


「やっぱり厄介な象徴(シンボル)ね。お兄様もノエルのことはいつも褒めているもの」


 イリスが眉間にしわを寄せながら呟くと、リアムが苦笑を漏らした。


「確かに…五大貴族の若い世代の中だと彼女が圧倒的だもんね……」


 リアムが小さく笑うとイリスは慌てて言葉を付け足した。


「リアム、あなたのこともお兄様は褒めてるわよ!」


「はは、光栄だね」


 イリスの本気とも冗談とも取れる言葉にリアムは乾いた笑いで返した。


 一方、魔紋五傑(まもんごけつ)側の席ではレイヴンが静かにアゼルに問いかける。


「ノエルの調子はどうだ?」


「いつも通りでしたよ」


 アゼルは気だるそうに答える。


「五大貴族同士の対決だね!ノエルちゃん、頑張って!」


 フェリスが笑顔で声援を送るとノエルは小さく微笑んだ。


 今回の立ち会いの教師はロザリアだった。


 入学試験の筆記試験でカインに強烈な印象を与えた人物であり、養護教諭とは思えない独特な雰囲気を持つ女性だ。


 ロザリアがアーティファクトの準備を終え、ノエルとエリオスの前に立った。


「始まるみたいだよ!」


 カインのその言葉に、観客席の全員が闘技場中央に視線を集中させる。


「ルールを説明するぞ〜。試合形式は一対一。不死のアーティファクトによる退場か降参以外での試合終了は認めないからな」


 相変わらずの軽い口調だがエリオスもノエルも気にせず頷いた。


 ロザリアはそれを確認すると手を振り上げ——


「始め〜」


 と告げながらその手を振り下ろした。


 こうして魔紋五傑(まもんごけつ)攻略戦の第三戦——エリオス対ノエルの試合が始まった。

少しずつですが、多くの方々にお読みいただけるようになり大変嬉しい限りです。今更かよという話ではありますが、初めての作品であり拙いところもありますゆえご容赦願いたいです。リアクションやポイントは大変励みになりますのでお暇がある際にでもしていただければ幸いです。

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