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悪魔の象徴  作者: 小籠pow
第2章 学園編~魔紋五傑攻略戦~
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第26話 ミコトvsレイヴン ②

 闘技場の空気は張り詰めていて、僕たちは息を呑んで二人を見つめている。


 最初に動いたのはミコトさんだった。


 刀をすっと構えると、縮小(ミニマイズ)を使い一瞬でレイヴン先輩の懐に潜り込む。


「縮閃!」


 そのまま鋭い一閃が繰り出される。


 だが——


「……!」


 その速度に対してレイヴン先輩は驚く素振りも見せず冷静に攻撃を受け止める。


 何度か打ち合った後、ミコトさんはすぐに距離を取った。


「……象徴(シンボル)なしの剣技でも相当な腕前ですね」


「お前もな。カゲツキ家の一人娘というのも納得だ」


 互いを称え合う言葉のあと、再び戦闘が始まる。


 再びミコトさんは縮小(ミニマイズ)で距離を詰め、再度斬りかかる。


 しかし——


振動剣(ヴァイブレイド)


 レイヴン先輩がそう呟いた刹那、ミコトさんの刀がレイヴン先輩の剣に触れた瞬間、まるで紙のように真っ二つに折れた。


「えっ……!」


 思わず僕は声を漏らした。


 あれが情報共有の時に聞いていた、『振動(トレモール)を纏わせた剣』だ。まさか受けただけで相手の武器まで破壊するなんて思ってもみなかった。


 刀が折れたのを見たミコトさんは素早く縮小で距離を取る。慌てる様子はなく、ポケットから小さな刀を取り出した。


 みんなが見守る中、ミコトさんはその小刀をすぐに元の大きさに戻した。予めシンボルで小さくした武器を持ち込んでいたらしい。


(なるほど……予め小さくして持ち運んでたのか)


 その用意周到さに僕は思わず感心する。


「話には聞いてましたがやはり厄介な象徴(シンボル)ですね……」


「お互いにな」


 軽口を交わし、再び剣を交える。


 ——今度はレイヴン先輩が先に動いた。


 一気に走って距離を詰め、その鋭い剣撃をミコトさんに向ける。


 彼女は防ごうと刀を構えるが……またもや刀が斬られてしまう。


 そのままレイヴン先輩の剣がミコトさんを捉えようとする。


「危ないっ!」


 隣のアリアさんが思わず声をあげた。


 しかしミコトさんはギリギリのところで再び縮小(ミニマイズ)を発動し、距離を取ることに成功する。


「……良かった」


 アリアさんが胸をなでおろす。


「にしても厄介な象徴(シンボル)ね。いくら魔力で強化しても、あの切断力の前じゃ紙みたいなものだわ」


 イリスさんが顎に手を当てて冷静に分析する。


「遠距離攻撃なら有利に戦えるって話でしたけど、あの剣を攻略する方法ってないんですか?」


 僕が横のアゼルさんに尋ねると、彼は肩をすくめた。


「一番単純なのは“あの剣でも斬れないほど濃い魔力”を纏わせることだな。ただ……それには高い共鳴率が必要になってくる」


 僕たちは無言になる。今の1年生の共鳴率ではそれを実現するのは難しい。


 すると、隣ではアゼルさんが僕に魔紋五傑(まもんごけつ)の弱点を教えたことを他の3人に追及されていた。


「本当に非合理的なことが好きなのね、あなたは」


 ノエルさんはアゼルさんの首を掴み淡々とした口調で詰める。


 アゼルさんは苦悶の表情でこっちを恨めしそうに見てきたが——


(普段、僕に厳しい仕打ちしてるんだから仕返しだと思えば…)


 僕は知らんふりして視線を戦闘に戻す。


 ——その間もミコトさんは受けに回り縮小(ミニマイズ)で攻撃を回避する戦法を繰り返していた。


(うまくやってはいるけど、あのままじゃ……魔力切れが先か)


 僕の胸に不安がよぎる。他のみんなも同じ気持ちだろう。


 やがて、数回目の交錯のあとミコトさんが距離を取った。


 だが——レイヴン先輩は攻撃の手を緩めず一気に詰めてくる


「っ!」


 僕たちはまた縮小(ミニマイズ)で避けると思った——その瞬間。


霞ノ身(かすみのみ)!」


 ミコトさんは距離を取らず自らの体を小さくした。


(えっ!?)


 体のサイズを小さくすることで攻撃を空振りさせたのだ。


 本来いた位置からいなくなったことでレイヴン先輩の剣は空を切る。


 驚きの表情を浮かべたレイヴン先輩に元のサイズに戻ったミコトさんが切り込む。


(いったか!?)


 皆の期待が高まった——


「グランドノイズ」


 しかし、ミコトさんの足元が突如として揺れる。


 地面に物凄い振動が走り、体勢を崩した彼女の一撃はレイヴン先輩の肌を浅く切るにとどまった。


「……っ!」


 すかさず、レイヴン先輩は前蹴りを放ちミコトさんを吹き飛ばす。


 直撃は防いだものの、大きく距離を取らされてしまう。


 再び睨み合う2人——


 そこで、ミコトさんがふっと笑い手を挙げた。


「降参よ」


「……!」


 僕たちは一斉に息を呑む。


 だが、ミコトさんはみんなの驚きを受け止めるように淡々と続けた。


「あの“霞ノ身(かすみのみ)”が最近覚えた奥の手だったの。あれで決めるつもりだったけど……見事に返されたわ」


 するとレイヴン先輩は静かに首を振る。


「いや、意表を突かれた。正直、俺も焦った」


 お互いを称え合う2人。


 そして——


「では挑戦者の降参により、この勝負は魔紋五傑の勝利とする。良い試合じゃった」


 ヘルマン先生の低い声が試合の終わりを告げた。


 2人が観客席へ戻ってくる。


 レイヴン先輩は他の魔紋五傑(まもんごけつ)に迎えられ、少し照れ臭そうに「応援、感謝するぞ」と笑っている。


 ミコトさんは苦笑いしながら「負けちゃったわ」と漏らすが僕たちは皆で全力で彼女を労った。


「大丈夫よ。私がミコトの分も勝つから!」


 イリスさんが力強く宣言する。


「他の2人もあたしの分まで頼んだわよ」


 その言葉にエリオスさんとヴォルドさんが無言で頷く。


 ——こうして魔紋五傑(まもんごけつ)攻略戦の第一戦は幕を閉じた。


 みんなが教室に戻ろうとしていたその時だった。


 ヴォルドさんが静かに、しかしはっきりと声を上げた。


「フェリス先輩!自分はあなたに挑戦を申し込みます!対戦の日は……明日でお願いします!」


「え、えぇぇぇぇっ!?」


 突然の指名にフェリス先輩が声を上げて驚く。


 僕たちもあまりの展開の速さに思わず口をあんぐり開けた。


「ヴォルドさん!?いつの間に決めたの!?」


「今の熱い試合を見て自分も早く戦いたいって思ったんです!」


 なんともヴォルドさんらしい直球の理由に僕たちは苦笑いするしかなかった。


「今日に今日で挑戦してくるやつよりはマシだろう」


 レイヴン先輩がミコトさんを横目に苦笑しながら言う。


「えへへ……」


 ミコトさんは舌を出してごまかしていた。


「お前なら大丈夫だ。先輩として受け止めてやれ」


 ヴィクター先輩のその言葉にフェリス先輩は一瞬だけ戸惑う表情を見せた後、ぐっと頷いた。


「分かったよ!ヴォルドくん、君の挑戦を受けるよ!」


「ありがとうございます!」


 ヴォルドさんは深々と頭を下げる。


 ——こうして、魔紋五傑(まもんごけつ)攻略戦の第二戦。


 《ヴォルドさんvs フェリス先輩》のカードが決まったのだった。


少しずつですが、多くの方々にお読みいただけるようになり大変嬉しい限りです。今更かよという話ではありますが、初めての作品であり拙いところもありますゆえご容赦願いたいです。リアクションやポイントは大変励みになりますのでお暇がある際にでもしていただければ幸いです。

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